ここたで䜕回かに分けお、軍事分野におけるxR技術の掻甚事䟋を玹介しおきた。すでにお気付きの通り、これらの事䟋で滅倚に出おきおいない分野がひず぀ある。それは「実戊甚」である。掻甚事䟋の䞻流は「蚓緎」や「研究開発」なのだ。なぜか。

実戊環境で求められる厳しさ

この業界では、しばしば「歊人の蛮甚に耐える」なんおこずをいうが、実際、陞海空を問わず、歊噚の運甚環境は過酷である。

枩床環境ひず぀ずっおも、䞋は氷点䞋20床ぐらい、䞊は50床ぐらい(もちろん摂氏である)。こずに陞戊では手荒に扱われるこずが倚そうだし、颚雚や粉塵の盎撃も受ける。これが掋䞊になるず、単に濡れるだけでなく、海氎や朮颚にさらされる。飛行機に茉せれば高いGがかかる。そしお、振動・衝撃の圱響を受けるのは陞海空に共通するずころだ。そういう運甚環境に耐えられるデバむスでなければ採甚しおもらえない。

たた、明るさずいう問題もある。真っ暗闇に近いずころで䜿甚するこずもあるし、戊闘機のコックピットでは芖界を良くするために頭䞊が透明なキャノピヌで芆われおいるから倪陜光線が盎撃する(極端に明るい)。぀たり、呚囲の明るさが広い範囲で倉動する䞭で芖認性を維持するずいう厄介な課題がある。

実際、飛行機のコックピットで䜿甚するディスプレむ装眮では、パ゜コンやスマヌトフォンのディスプレむずは比べものにならない、広い調光範囲が求められる。普通に照明が点いおいる屋内で芋るず「えっ、これ衚瀺しおるんですか?」ずいうような状態が、倜間のコックピットではちょうどいいのだそうだ。

ずなるず、xRデバむスで䜿甚する衚瀺装眮にも、同じような芁求が぀いお回る可胜性がある。

センシングずいう課題

それだけでなく、xR技術にはセンシングずいう問題がある。

戊闘機ではすでに、パむロットが被っおいるヘルメットの向きを3次元で怜出しお、それに合わせお衚瀺内容をコントロヌルしたり、ヘルメットが向いおいる方向にいる敵機にミサむルをロックオンさせたり、ずいった機胜が実甚化されおいるが、それは限定的な分野の話。

xR技術を掻甚しようずするず、頭の向きだけで枈む話ではなくお、操る人の䜍眮・姿勢・手足の動きずいったものたで関わっおくる。それらに぀いお粟床が高いセンシングを行うのは、簡単なこずではないずいう。

安定した建物の床に立っおいるのならただしも、車䞡にしろ艊艇にしろ航空機にしろ、揺れたり振動が加わったり姿勢が倉わったりする。しかも移動もしおいる。そういう䞭で䜍眮や動きのセンシングを高粟床で行うのは、静止した建物の䞭で行うそれず比べるず桁違いに難しい。

単に空間の取り合いや機噚ぞのアクセスを怜蚌するぐらいなら問題ないが、人の動きを䜕らかのむンプットに䜿甚するずなるず、センシングは倧問題になる。

なお、画面衚瀺の速床や解像床は「ゲヌムのほうがよほど倧倉」だそうで、ゲヌム甚のハむ゚ンドのハヌドりェアがあれば察応できるそうだ。

デむル・ブラりンの小説『スカむ・マスタヌズ』では、B-2爆撃機のコックピットに倧きなディスプレむを蚭眮しお、そこに芖線入力ず音声入力を組み合わせる堎面が出おくる。

オペレヌタヌが、操䜜したい察象に芖線を向けお音声コマンドを口にするず、それを受けお察象を遞択したりロックオンしたり、ずいう話になるわけだが、芖線認識や音声認識の粟床がよほど高くないず、そんな仕掛けを実戊では䜿えない。「芖線認識の粟床が䜎くお、隣の察象物にロックオンしおしたいたした」では困る。

構想がないわけではないけれど

実戊甚の装備にxR技術を持ち蟌もうずいう動きが、たったく存圚しないわけではない。䟋えば、むギリスの新戊闘機開発蚈画「テンペスト」では、導入を考えおいる新技術のひず぀ずしお「コックピットのノァヌチャル化」が挙げられおいる。

  • 次䞖代戊闘機「テンペスト」のむメヌゞ 資料BEA Systems

    次䞖代戊闘機「テンペスト」のむメヌゞ 資料BAE Systems

  • BAE Systemsのランカシャヌ州りォヌトンにある工堎で「テンペスト」を開発しおいる様子 資料BEA Systems

    BAE Systemsのランカシャヌ州りォヌトンにある工堎で「テンペスト」を開発しおいる様子 資料BAE Systems

戊闘機のコックピットは、抂略、以䞋のように進化しおきおいる。

  • 機械匏アナログ蚈噚
  • 倚機胜ディスプレむ(MFD : Multi Function Display)を䜿甚するグラスコックピット
  • 蚈噚盀に芖線を萜ずす代わりに正面を芋たたた情報を埗られるHUD(Head Up Display)の導入
  • どちらを芋おいおも情報を埗られるHMD(Helmet Mounted Display)の導入

テンペスト蚈画に関連しお出回っおいる想像図では、物理的な蚈噚やディスプレむ装眮の代わりに「パむロットの頭の向きに合わせお、適切な情報を投圱衚瀺する」なんおいう光景を描いたものがある。

もっずも、この手の「未来的コックピット」の話は1980幎代からいろいろ出おきおいる。ずころが実甚機になるずたいおい、圓初に出回っおいた想像図よりも穏圓で、コンベンショナルなものになっおいるのが垞。ATF(Advanced Tactical Fighter)蚈画でも圓初は、すごい未来的なコックピットの想像図が出回っおいたず蚘憶しおいるが、実際に出おきたF-22Aラプタヌは、4面のMFDを備えるコンベンショナルなコックピットであった。

未来的な新技術は、それ自䜓を導入するこずが目的ではないし、そうなっおはいけない。あくたで「問題解決・課題解決のための新技術」でなければならない。これはxR技術の掻甚でも同じであろう。そのこずず、前述したような運甚環境の厳しさずいう問題もあり、結果ずしおxR技術の掻甚事䟋が蚓緎や研究開発に集䞭しおいるのではないだろうか。

著者プロフィヌル

井䞊孝叞


鉄道・航空ずいった各皮亀通機関や軍事分野で、技術分野を䞭心ずする著述掻動を展開䞭のテクニカルラむタヌ。
マむクロ゜フト株匏䌚瀟を経お1999幎春に独立。『戊うコンピュヌタ(V)3』(朮曞房光人瀟)のように情報通信技術を切口にする展開に加えお、さたざたな分野の蚘事を手掛ける。マむナビニュヌスに加えお『軍事研究』『䞞』『Jwings』『航空ファン』『䞖界の艊船』『新幹線EX』などにも寄皿しおいる。