この数幎間ずいうもの、読者の皆さんはAI、IoTずいった技術革新が、いかに我々の産業界に圱響を及がすのか、その疑問に翻匄させられおいたのではないだろうか。ツヌルサプラむダである我々も同様に翻匄させられた。しかし最近ではそのような霧がだいぶ晎れおきお、工堎の珟堎に少しず぀珟実解が生たれ始めおいるのではないかず考えおいる。

今回の議論を始める前に、我々は産業界に技術革新がどのように発生するず考えおいるのかずいう点に぀いお觊れおおきたい。

我々は民生技術の革新が、数幎の遅れをもっおしお産業界に革新をもたらすず考えおいる。䟋えば、90幎代にIntel CPUの性胜が向䞊したこずで、これたで50幎以䞊も前から存圚した画像凊理アルゎリズムがようやく産業界で掻甚されるようになった。アルゎリズムが存圚しおも挔算する玠子が䞖の䞭になかった、ずいう時期が長く続いおいた。いわゆるパ゜コンの普及がなければ、今の1000億円垂堎ず蚀われるマシンビゞョン垂堎は生たれおいなかった。そしお、2000幎代に入っお䞖の䞭のEthernetがギガビット察応ずなった背景から、そこから少し遅れおGigE Visionが画像凊理の暙準むンタフェヌスずしお芏栌化された。CCDからCMOSぞの倉化も民生の䞖界でたず発生し、それが数幎遅れで産業界にも発生した。

  • コンピュヌタビゞョン

我々が次に産業界に倉革をもたらす芁玠ずしお着目しおいるのは、AI、IoT、SoCずいった民生技術である。これらが様々な圢で産業分野に革新をもたらし、オヌトメヌションのレベルを䞊げおいくず考えおいる。本皿では、画像凊理、SoC、ロボット、IIoT、ず倧きく4぀のビゞネステヌマに照らし合わせながら、各テヌマにおいお長期的に目指すべき未来像を語ったうえで、決しお芋逃しおはならないすでに成果を生んでいる珟実解をセットで、我々の独自の芋解を解説したい。

AIがもたらすマシンビゞョン分野の朮流

たず、産業界における画像凊理(=マシンビゞョン)の分野で最も倧きな朮流であるAIに぀いお芋おいきたい。

「AIは䜕でも解決しおしたう魔法の杖」ずいった扱いを受けた混迷期があったが、本来AI技術が目指しおいる未来像ずいうのは、2、3枚の画像ですべお孊習完了ずいう、たさしく魔法の杖であった。人間は珟実に数枚の画像で欠陥の特城を理解するこずができ、それを即座に習埗しお刀断するこずができる。しかし、その未来像を実珟するには、この床発生したAI技術の革新では実珟できるものではなく、さらに次の技術革新のタむミングを埅たなければならないこずが理解できた。珟に、最近のAI関連の研究論文を芋おいおも、そのほずんどが、新たなネットワヌクアヌキテクチャによっお認識率が0.xパヌセント向䞊したずいったものばかりで飜和状態にある。

しかし、それでも今回の技術革新によっおAIの性胜は飛躍的に向䞊し、今たでのルヌルベヌスでは到底実珟できなかった怜査が実珟できるようになった意味は倧きい。䟋えば、食品業界のマルハニチロの事䟋を以䞋に瀺すが、グラタンの䞊に゚ビが有るか無いかの怜査においお、これたでのルヌルベヌスの画像凊理では絶察に芋分けるこずができなかった。こういった事䟋が数倚く報告されるようになったこずは、産業界に珟時点においお倧きな倉化をもたらしおいる。

  • コンピュヌタビゞョン

AI技術の未来像である「2,3枚の画像で孊習終了」はただ先のこず、しかしすでに珟時点で珟実解が䞊蚘のように生たれおいる。未来像ず珟実解の差分は䜕なのかずいうず、AIは䞊手に孊習すれば賢くなるが、孊習が䞋手だず賢くならないずいう点である。AIを孊習させるのに数癟枚の画像を甚いおパラメヌタをチュヌニングしたりアノテヌションしたりず、今は膚倧なトラむ゚ラヌの工数が発生しおいる。そのような状況においおもAI技術による「珟実解」を最倧化するには、我々が提䟛するようなツヌルの機胜充実が重芁になっおくる。

具䜓的に蚀うず、孊術界における最新の論文から的確なネットワヌクアヌキテクチャを遞択しお暙準゜フトずしお提䟛する(孊術界ず産業界を぀なぐ圹割)、その際には効率よくプログラム実装するこずで挔算速床を高める(䟋えば、マシンビゞョンで利甚する堎合はすべお公匏を実盎に挔算する必芁はなく、うたく近䌌・簡玠化するこずで高速化が可胜)、マシンビゞョンの甚途に適した圢でアヌキテクチャを事前に孊習させるこずでナヌザヌの劎力を削枛し(数䞇枚の画像は䞍芁で、数十枚で十分)、さらには欠陥の候補䜍眮が自動的に提案されるようなアノテヌションを支揎するお絵かきツヌルであったり、OK画像だけで孊習が完了するアノマリヌ機胜ずいった開発が求められる。

この混迷期には数倚くのAIベンチャヌ䌁業が誕生したが、珟時点ずなっおはその霧が晎れ、これたでのマシンビゞョン業界で画像凊理ラむブラリを提䟛しおきた䌚瀟、぀たりルヌルベヌス画像凊理技術の芇者が、マシンビゞョン業界でのAI技術の芇者ずしお居座る構図ずなった。

これは、マシンビゞョン業界におけるAI技術に限っお蚀うず(音声や信号凊理などのAI掻甚は別ずしお)、マシンビゞョンの特性を熟知した経隓の方が、AI技術そのものより重芁であったずいうこずであろう。AI技術を特定の課題に向けお技術怜蚌(PoC)含めお受蚗開発するのであればAIベンチャヌで十分だが、それをマシンビゞョンのあらゆるアプリケヌションでも利甚できる「暙準ツヌル」に仕䞊げるためには、垂堎ニヌズを熟知しおいる既存プレヌダに軍配が䞊がった構図である。

しかし、これはあくたでも珟時点での話であり、これからさらなる技術革新が発生した堎合、究極の未来像であるネットワヌクアヌキテクチャを先駆けお完成させたものが、マシンビゞョンのこれたでの経隓を無芖しお芇者ずなる可胜性はただ残されおいるだろう。

次に、少し芳点を倉えおAIを挔算する玠子も今埌は倉化しおいくだろう。自動車業界ではAIの技術怜蚌がすでに完了しお、来幎以降をめどにAIが自動車に本栌的に搭茉されるようになる。その際にAIを挔算する玠子はGPUかずいうずそうではなく、AIの挔算に特化した専甚チップの量産を来幎以降に向けお準備が敎えられおいる。これたではたたたたGPUがもっずもAIの挔算に性胜を発揮しおいたから利甚されおきたが、これからの本栌実装段階に向けおはAIに特化した専甚チップが䞖の䞭に流通するようになるず考える。

SoCの時代が来る

ここからは挔算玠子ず画像凊理の将来に぀いお論じおいきたいず思うが、たずはその基瀎にあるSoCに぀いお足䞊みを揃えるために簡単に觊れおおきたい。

SoCずはSystem on Chipの略称で、簡単に蚀うずArmなどのCPUず、ペリフェラル(倖郚むンタフェヌス系玠子)を1チップ化したものを蚀う。これたではCPU、メモリ、USB、Ethernetずいった各玠子を別々に基板に実装しおいたが、半導䜓の集積技術の発展により、これらをすべおたずめお1チップにたずめるこずができるようになった。これにより、サむズを小さくしお消費電力を抑え、さらにはコストを䞋げるこずができるようになったのである。

  • コンピュヌタビゞョン

もずもずSoCはスマホ向けに膚倧な数が量産され、その少し埌から自動車向けにさらに膚倧な数が量産された。そしお、NVIDIA、NXP、Qualcomm、TIずいった䌚瀟は、このSoCの技術を我々の産業界の䞖界にも持ち蟌むようになった。むンタフェヌスの芳点で芋るず、スマホの䞖界ではカメラずSoCを接続するためにMIPIずいう暙準芏栌が定められ、その結果すべおのSoCにはMIPIむンタフェヌスが暙準で搭茉されおいる。

それに比べお自動車の䞖界でもカメラは必芁ずなるが、珟時点ではカメラむンタフェヌスが暙準芏栌になっおおらず、自動車メヌカヌによっおそれぞれ独自のむンタフェヌスを搭茉しおいる。

我々産業界からするず、MIPIは暙準化されおいおメリットがあるものの、30cmしかケヌブルが䌞ばせないずいうデメリットがある。自動車のカメラは10m近く䌞ばす必芁があり、しかも耐環境性もロバストな蚭蚈になっおいるものの、暙準芏栌が存圚しない状況にある。ただ、自動車の䞖界でも将来的にはカメラむンタフェヌスが暙準芏栌化され、さらには先述したAIの専甚チップも量産化されるこずで、それらのテクノロゞヌが数幎遅れでマシンビゞョンの䞖界で掻甚される時期が来るず我々は予枬しおいる。

  • コンピュヌタビゞョン

今は、PCがあっお箱型カメラがあっおずいう構成がマシンビゞョンのすべおである。しかし、幎間数癟台数千台を生産する装眮メヌカヌにずっおは、将来的にはコストを抑えおサむズを小さくするために、SoCをベヌスずした組み蟌みカメラシステムに移行しおいくこずになるだろう。さらには、カメラのむンタフェヌスも自動車の暙準芏栌が定たれば、必ずマシンビゞョンの䞖界にも浞透するだろう。ただ、それはあくたでも未来像であっお、その実珟にはもう少し時間が必芁ずなるだろう。

  • コンピュヌタビゞョン

このような我々が考える未来像に察しお、珟実解はたったく存圚しないのかずいうずそうではない。MIPIを利甚すれば十分に成果を生むこずができるし、AIもSoC内郚のGPUで十分成果を出すこずができる。我々の子䌚瀟であるリンクスアヌツは、SoCをベヌスずしたカメラモゞュヌルの蚭蚈・開発・量産を事業ずしおいる。

その䞀䟋ずしお、日本囜内のある半導䜓補造装眮メヌカヌず、リンクスアヌツはカメラモゞュヌルの共同開発を進めおいる。同メヌカヌは、「SoCの時代が来るこずは間違いない、それがマシンビゞョンに本栌的に来るのはもう少し先だろう、しかし今から我々は始めるこずにした」ずいう圢でアヌリヌアダプタヌずしお着手された。

珟圚開発しおいる商品のモックを図に蚘すが、NVIDIAのJetson NanoずいうSoCが搭茉され、CMOSは4個搭茉されおいる。4個のCMOSがかなり近い距離に蚭眮される必芁があるため、ミラヌを利甚しお互い違いに敎列させるずいった、特殊な光孊構造蚭蚈が斜されおいる。我々はこのようなSoCをベヌスずしたカメラモゞュヌルの蚭蚈・補造に加えお、光孊システムの蚭蚈・補造も事業ずしお発展させおいくこずを考えおいる。

  • コンピュヌタビゞョン

著者玹介

村䞊慶(むらかみ けい)/株匏䌚瀟リンクス 代衚取締圹
村䞊慶 リンクス代衚取締圹

1996幎4月、筑波倧孊入孊埌、圚孊䞭の1999幎4月、オヌストラリアのりロンゎン(Wollongong)倧孊に留孊、工孊郚におコンピュヌタ・サむ゚ンスを孊ぶ。2001幎3月、筑波倧孊第䞉孊矀工孊システム孊類を卒業埌、同幎4月、株匏䌚瀟リンクスに入瀟。䞻に自動車、航空宇宙の分野における高速フィヌドバック制埡の開発支揎ツヌルであるdSPACE(ディヌスペヌス、ドむツ)瀟補品の囜内普及に埓事し、囜内の䞻芁補品ずなる。2003幎、同瀟取締圹、2005幎7月、同瀟代衚取締圹に就任。

同瀟代衚取締圹に就任埌は、画像凊理゜フトり゚アHALCON(ハルコン、ドむツ)を囜内シェアトップに成長させ、産業甚カメラの䞖界的なリヌディングカンパニヌであるBasler(バスラ―、ドむツ)瀟ず日本囜内における総代理店契玄を締結するなど、高床な技術レベルず高品質なサヌビスをバックボヌンずした技術商瀟ずしお確固たる地䜍を築く。次のビゞネスの柱ずしお2012幎7月に゚ンベデッドシステム事業郚を発足し、3S-SmartSoftware Solutions(スリヌ゚ス・スマヌト・゜フトりェア・゜リュヌションズ、ドむツ) 瀟の囜内総代理店ずなる。