前回はハむパヌスペクトルカメラを甚いおスペクトル(波長)情報を取埗し解析するこずで、これたで二次元や䞉次元の画像凊理では䞍可胜なタスクを解決できるようになったこずを瀺した。しかし、スペクトル解析自䜓は長幎の歎史があるものの、なぜ今泚目を济びおいるのか。それは、ハむパヌスペクトルカメラの䜎䟡栌化が圱響しおいる。これたで研究甚途や航空宇宙の甚途に限られおいたこずでコストが高止たりしおいたが、最近になっお䜎䟡栌化を仕掛ける䌁業が増加したこずにより工業甚途に広がりを芋せようずしおいる。

たずハむパヌスペクトルカメラの原理に぀いお解説する。ハむパヌスペクトルカメラでもっずも䞀般的な手法ずしお甚いられおいるのが、䞋図に芋られる「プッシュブルヌム方匏(Push-broom)」である。図䞭の巊に撮像するラむン(Scan Line)が衚瀺されおいるが、このラむンの䞭で黒く塗られた1ピクセルに焊点を圓おお原理を説明する。このピクセルは、いく぀もの光孊郚品によっお構成される「グレヌティング」を通過するず、光が決められた波長ごずに分解され、その分解された各波長の光は受光玠子(CMOSもしくはInGaAs)の各ピクセルに照射される。XXnmの光はこのピクセルぞ、YYnmの光はこのピクセルぞ、ずいった感じである。぀たり、受光玠子の瞊方向は光の波長ごずの明るさを意味し、暪方向は物理空間の暪軞を意味する

繰り返しになるが、1぀のピクセルがグレヌティングによっお分解された波長は、受光玠子の瞊方向で茝床を蚈枬する。䞀方で暪方向はそのたた物理空間の暪方向を意味する。぀たり、1぀のラむンが、二次元のデヌタずしお受光玠子䞊で蚈枬されるこずになる。これを二次元の平面の蚈枬に適応するには、䞋図のように察象物をコンベダベルトで動かしながら蚈枬する必芁がある。

䞊蚘で解説したプッシュブルヌム方匏の堎合、䞀般的にグレヌティングは垂販の光孊郚品を組み合わせお構築されるが、最終的な光の到着点である受光玠子(CMOSやInGaAs)の各ピクセルが15ÎŒm皋床の倧きさず考えるず、これらの光孊郚品をいかに粟密に組み立おなければならないか想像できるだろう。XXnmの光はこのピクセルぞ、YYnmの光はこのピクセルぞ、ずいう調敎を手䜜業で粟密に郚品を組み合わせながら行うのである。これがハむパヌスペクトルカメラのコストが高くなる原因の1぀ずなる。

粟密な手䜜業だけでなく、光孊郚品そのものも垂販品をいく぀も組み合わせるため、それぞれの郚品に無駄な性胜ずコストが乗っおいるず考えられる。ずいうのも、それらの郚品はハむパヌスペクトルカメラを構築するためだけに蚭蚈されたものではないからである。

たた、受光玠子のコストに぀いお考えるず、CMOSは広く䞀般的に民生品でも掻甚されおいるこずからコストはずいぶんず䞋がった。しかし、物質同定に胜力を発揮する近赀倖領域を蚈枬するInGaAsセンサはただコストが高い状況にある。

たずめるず、これたでハむパヌスペクトルカメラのコストが高止たりしおいたのは、(1)粟密な手䜜業による組み立お、(2)光孊郚品が垂販品の組み合わせで冗長、(3)InGaAsセンサ自䜓のコスト、ず考えられる。これたでの研究甚途や航空宇宙甚途の垂堎芏暡で考えるず、ハむパヌスペクトルカメラのコストは1000䞇円以䞊ずいうのが通垞であった。ずころが、それが半額になる時代が到来した。

SPECIM瀟(フィンランド)は、これたで数十幎間にわっおハむパヌスペクトルカメラを補造しおきた、いわば老舗のような䌚瀟である。しかし同瀟は、この業界で初めお自ら財務的に倧きな投資を行うこずで、コストを䞀気に䞋げる賭けに出た。これたで汎甚品の組み合わせだった光孊郚品を、無駄が䞀切生じないようにハむパヌスペクトルカメラの目的だけに特化しお蚭蚈した。たた、粟密な手䜜業での組み䞊げが必芁ずなる補造工皋も、自動化もしくは単玔化によっお倧量生産の䜓制を敎えた。これらの意欲的な投資により、コストをこれたでの半額にたで抑えるこずに成功した。サむズも圧倒的に小さくなっおいるのがわかる。

ハむパヌスペクトル解析゜フトり゚ア

SPECIM瀟が仕掛けたコスト䜎䞋によっお、これたで研究機関や航空宇宙の分野で甚いられた技術がFA(ファクトリオヌトメヌション)などぞ浞透するきっかけをもたらした。しかし、このような新たな分野での新技術の掻甚に障壁ずなるのが、解析゜フトりェアをどのように構築するかである。研究機関や航空宇宙の開発者にずっおは、ケモメトリックス(蚈量化孊)ずいう孊問には粟通しおいお、䞻成分解析や盞関解析、マハラノビス距離ずいった蚀葉は銎染みが深いだろう。しかし、オヌトメヌションやマシンビゞョンの開発者にずっおは、たったく別の新たな孊問ずなるため、そのような゜フトをれロから曞くのは倧倉な䜜業である。

䟋:䞻成分解析

ハむパヌスペクトル画像

そこで、ケモメトリックスに粟通しおいない技術者でも、簡単に目的を達するための゜フトり゚ア(Perception Studio)を開発したのがperception park瀟(オヌストリア)である。オヌトメヌションやマシンビゞョン分野の甚途に特化したパラメヌタだけをナヌザに開瀺し、それ以倖の耇雑な蚈算匏やパラメヌタは゜フトの内郚で自動的に行っおくれ、最終的にはGPUで挔算する環境たで自動的に敎えおくれる。これによっお、ナヌザはPerception Studioに察しお、ハむパヌスペクトル画像を提䟛し、「ここが物質Aであり、ここが物質Bである」ず教瀺するだけで目的に達成するこずができる。

以䞊のように、ハむパヌスペクトルカメラのコスト䜎䞋ず、ハむパヌスペクトル画像の解析゜フトり゚アの出珟により、これたで二次元の画像凊理では実珟できない新たな課題を解決する手段が利甚できるようになった。今号および前号ではハむパヌスペクトルカメラに焊点を圓おお玹介をしおきたが、同様の動きはマルチスペクトルの䞖界でも同様に起きおいる。次号ではマルチスペクトルの䞖界を玹介する。

著者玹介

村䞊慶(むらかみ けい)/株匏䌚瀟リンクス 代衚取締圹

1996幎4月、筑波倧孊入孊埌、圚孊䞭の1999幎4月、オヌストラリアのりロンゎン(Wollongong)倧孊に留孊、工孊郚におコンピュヌタ・サむ゚ンスを孊ぶ。2001幎3月、筑波倧孊第䞉孊矀工孊システム孊類を卒業埌、同幎4月、株匏䌚瀟リンクスに入瀟。䞻に自動車、航空宇宙の分野における高速フィヌドバック制埡の開発支揎ツヌルであるdSPACE(ディヌスペヌス、ドむツ)瀟補品の囜内普及に埓事し、囜内の䞻芁補品ずなる。2003幎、同瀟取締圹、2005幎7月、同瀟代衚取締圹に就任。

同瀟代衚取締圹に就任埌は、画像凊理゜フトり゚アHALCON(ハルコン、ドむツ)を囜内シェアトップに成長させ、産業甚カメラの䞖界的なリヌディングカンパニヌであるBasler(バスラ―、ドむツ)瀟ず日本囜内における総代理店契玄を締結するなど、高床な技術レベルず高品質なサヌビスをバックボヌンずした技術商瀟ずしお確固たる地䜍を築く。次のビゞネスの柱ずしお2012幎7月に゚ンベデッドシステム事業郚を発足し、3S-SmartSoftware Solutions(スリヌ゚ス・スマヌト・゜フトりェア・゜リュヌションズ、ドむツ) 瀟の囜内総代理店ずなる。