本連載では日本ヒューレット・パッカード(HPE)のさまざまな社員の「こぼれ話」を綴ります。→過去の回はこちらを参照。
埋もれてしまった遺跡の発見に貢献した「LiDAR」
東京国立博物館で特別展「古代メキシコ -マヤ、アステカ、テオティワカン」が実施されていたこともあり、テレビ番組でマヤ文明が取り上げられることが最近多くなっています。その中で見たのが、日本人を中心にした考古学チームが空からの測量でマヤ文明最大最古の遺跡など、400個のマヤ遺跡を見つけたというものです。
活用したのは航空LiDAR(ライダー)と呼ばれる技術でした。マヤ文明の遺跡はかなり前に放棄されて忘れ去られているものが多数あり、草木に覆われて全体像が見えないため発見されていないものが多くありました。これを空からLiDARを使って正確に土地の形状を測量することで発見できたというわけです。
LiDAR(Light Detection And Ranging)については、自動運転のための技術として聞いた人が多いかもしれません。Light(レーザーパルス)を使って対象物の距離、位置、形状を検知する技術です。
レーザー光の一部は草木を通過して地表から反射されるので、地表面の形状を正確に簡単に測量することが可能です。この特性を生かしてマヤ文明の遺跡を大量に発見できました。考古学でも最新のテクノロジーが活用されています。
LiDARと似たようなものに、雨雲の観測や航空機の位置検知に使われているレーダーがあり昔から使われていますが、英語でRaDAR (Radio Detection And Ranging)と表記し、Radio(電波)を使って同じく距離・位置・形状を検知する技術です。
電波を使うので非常に広い範囲をカバーすることができますが、解像度がレーザー光を使うLiDARに比べると劣っています。このため、自動運転のために車の周囲の状況を識別する技術としてはLiDARが使われています。
周囲の自動車や歩行者などを識別することで安全な運転を可能にする技術です。LiDARは最近ではiPhone Proモデルにも搭載されているので、知らないうちに使っている人もいることと思います。iPhoneでは距離を測れることで顔認証の精度を高めることなどに使われているようです。
そんなLiDARですが、最近では監視装置としても活用されるようになってきています。監視装置には通常カメラが使われていてAIと連動するようになってきており、不審な動きをした人物や、登録されていない顔の人物を認識して警告を出すことができます。
しかし、カメラでは対象物までの距離が正確にわからない、暗いと対象を識別できない、対象の移動を追跡しにくいなどの問題があります。これをLiDARにより解決できるのです。LiDARは対象物までの距離を正確に測定できます。レーザー光を発射しますので、暗くても大丈夫です。対象の移動を追跡することもできます。
LiDARを使った監視システムで実現できること
では、LiDARを使った監視システムで具体的にできることは何でしょうか?レーザー光を使うので、カメラでは難しい暗闇でも多少悪天候でも対象を認識できるというのがわかりやすい利点です。さらに、正確に位置を把握できることを利用して特定の区域への立ち入りを検知することができます。
システム上に仮想的な立ち入り禁止区域を設定して、そこに何者かが侵入したことを検知する機能です。鉄道の駅で危険な立ち入りを検知したり、工場で危険な装置に近づきすぎたら警告を出たしたりすることができます。対象の移動を追跡できるため、塀を乗り越えて敷地に侵入しようとしている人物の検知や、複数のLiDARにまたがった範囲の移動を追跡することも可能です。
このような特徴を活かして、発電所の警備や、飛行場などでも使われています。精度の高いLiDARを複数配置することで、発電所や飛行場など重要な場所への警備を強化するのです。広い場所をカバーするためには何台ものLiDARからの信号をまとめて監視することが必要です。
そのためには高い処理能力が要求されるので、LiDARからのデータを処理するのにサーバーが使われているのです。
何台ものLiDARからのデータを処理し、仮想的な立ち入り禁止領域の監視をし、認識した対象をわかりやすく建物のグラフィック画像と合わせて表示するには、高い処理能力が必要で、それを提供できるのがサーバーです。サーバーは世の中の安全を守るための一端を担う存在でもあるのです。
日本ヒューレット・パッカードの社員によるブログをぜひ一度ご覧ください。製品やソリューションの紹介だけではなく、自身の働き方や日々のボヤきなど、オモシロ記事が満載です。