本連載では、『プログラミング言語恐怖症』の筆者が、サイボウズが提供するノーコード開発ツール「kintone(キントーン)」を使って気ままに業務アプリを作り、それを紹介している。
前回は、編集部向けに特化した「問い合わせ管理アプリ」を作った。kintoneが用意しているアプリのひな形「サンプルアプリ」を使って、今まで以上に効率的にアプリを作ることができた。
kintoneアプリをサイボウズ Officeと連携させてみる
今回も編集部の実務で使えるアプリを作ってみよう。作りたいのは「取材管理アプリ」。編集部メンバーの取材予定を管理・共有できるアプリだ。現在は某カレンダーアプリで共有しているだけの取材予定を、より詳細に分かりやすく管理・共有することが主な目的だ。そしてこのアプリを、「サイボウズ Office」のスケジュール機能と連携させることが今回のゴールとなる。
サイボウズ Officeは、サイボウズが提供する中小企業向けのグループウェア。「誰でもかんたんに使える」がコンセプトで、スケジュール管理やメッセージ機能、掲示板、ファイル共有、ワークフロー、ToDoリストなど、日本のビジネスにおける使い勝手が追求されたさまざまな機能を提供している。1997年の発売以降、ユーザーのニーズに合わせてアップデートを続け、2024年12月時点での累計導入は8万1000社を突破した。
そんなサイボウズ Officeとkintoneの連携機能が2025年1月に発表された。これにより、kintoneアプリに登録された情報とサイボウズ Officeに登録した予定をひも付けられるようになった。
取材予定をkintone上で登録し、それをサイボウズ Officeのスケジュールにも反映させる――これは便利そうだ。きっと、編集部のメンバーも「早川くん、たまにはやるじゃん」と褒めてくれるはずだ。承認欲求を満たしたい……。
普段は「ひらめき」とは無縁の筆者だが、今回のように4年に1度の頻度で名案が思いつくことがある。野村総合研究所が運営している「未来年表」によると、4年後の2029年4月13日に小惑星「2004MN4」が300分の1の確率で地球に衝突するらしい。どうすれば、その確率を下げることができるのか。4年後もただのサラリーマンである可能性は極めて高いが、もしもの時のために「ひらめき」を温存させておこうと思う。
だれも求めていない余談はここまで。早速kintoneでアプリを作って、サイボウズ Officeと連携させてみよう。
「取材管理アプリ」をスケジュール連携、具体的な手順
kintoneでアプリを作成する具体的な流れはこれまでにも説明してきたので、今回は割愛する。気になる方は第1回~第3回をぜひ読んでみてほしい。
今回の取材管理アプリに関しては、kintoneの操作に少しずつ慣れてきたこともあってか5分程度でサクッと作ることができた。「ノーコード」と「慣れ」ってすごい……。取材の案件名と担当者名、取材日時、企業名、取材形式、掲載予定日、案内状・企画書の項目を、文字列や日時、ラジオボタン、添付ファイルなどのフィールドを使って配置した。
このアプリをサイボウズ Officeのスケジュールと連携させることで、初めて便利なアプリといえるだろう。では、具体的な手順を紹介していこう。
まずは、kintone側の設定から。まずは「サイボウズ Office スケジュール連携」というプラグインのインストールが必要だ。kintoneのホーム画面右上の歯車マークから「kintoneシステム設定」を開く。
次にプラグインをクリックすると、プラグインの一覧が表示される。先述したプラグインも表示されるので、インストールすればプラグインを利用できるようにする。
開発した取材管理アプリでの設定も必要だ。アプリを開き画面右上の歯車マークから「フォーム」の設定を行う。ここに先述した項目に加えて、プラグインを適用するための「スペース」フィールドを追加する。
スペースでは「要素ID」を設定する必要があり、これがこのスペースの「名前」のようなものとなる。要素IDは後ほどの設定でも必要なので、覚えておく必要がある。今回は「office」と登録した。
フォームを保存した後、設定タブを開く。「カスタマイズ/サービス連携」欄にある「プラグイン」をクリックすると、プラグインを追加したり変更したりできる画面に移る。そして「追加する」をクリックし、先述したサイボウズ Office スケジュール連携を選択する。
状態が有効になっていることを確認し、歯車マークの設定を開く。そして、先ほど設定したスペースフィールドの要素IDを入力し、保存をクリック。最後にアプリの設定に戻り、更新することでアプリ側の設定もOK。
「これで完了だ!」と言いたいところだが、連携先のサイボウズ Office側での設定も必要だ。サイボウズ Officeにログインし、画面右上の歯車マークから「サイボウズ Officeシステム設定」を開き、「スケジュールと施設予約」をクリックする。
次に「kintone連携」を選択すると設定画面に移る。kintoneの連携を「無効」から「有効」に変更し、「追加する」をクリックする。
そして、連携先のkintoneアプリ名を入力して、予定から参照する値をkintoneアプリのフィールド名で指定する。今回の場合、アプリ名は「取材管理」、フィールド名は一目で分かるように「案件名」を選んだ。最後に「追加する」をクリックすれば、設定がすべて完了だ。なお、サイボウズ Officeとkintoneの連携は最大3件まで可能だ。
活用の可能性が広がる「kintone×サイボウズ Office」
早速、kintoneアプリにレコードを登録してみた。登録したレコードを開き先ほど追加したスペースのフィールドで「予定を登録」をクリックすると、サイボウズ Officeのスケジュール登録画面に移る。
日時や予定名など今回のkintoneアプリと重複する入力項目があるが(改善の余地あり)、それらを記入して登録すれば、サイボウズ Officeのスケジュールとして登録され、関連情報としてkintoneのレコードもひも付けられた。
「時間を大幅に削減できる」というよりも、一連の流れで取材予定の共有とそのスケジュール登録ができることに便利さを感じた。
サイボウズによると、両サービスを併用する企業が増えているといい(2024年11月末現在で2700社超)、「kintoneで管理しているお客様への訪問予定をサイボウズ Officeのスケジュールに反映したい」といった要望の声が多く寄せられていたという。中小企業でのDXをさらに後押しできると考え、連携を開始したとのこと。
今回は、kintoneアプリからスケジュールを登録する機能を紹介した。そのほかの利用シーンとしては、kintoneの休暇申請アプリのワークフローで承認された休暇申請の詳細画面から、関連付けたスケジュールを登録するといったこともできそうだ。
また、サイボウズ Officeのスケジュールからkinotoneアプリを表示することももちろん可能だ。今回のアプリの場合であれば、スケジュールに登録された取材予定から、kintoneアプリを表示することで、より詳細な情報を確認することができる。
そのほかの利用シーンとしては、サイボウズ Officeの訪問予定からkintoneの顧客管理アプリから情報を確認するといったことも可能だろう。このように、サイボウズ Officeとkintoneを連携することで、日々の業務をより効率的に行うことができる。
普段からkintoneを使う筆者。今回初めてサイボウズ Officeを使ってみたが、コンセプト通り「誰でもかんたんに使える」グループウェアだと実感した。何より見た目が“ゆるい”のが個人的には好きで、よくある“システムシステム”しているシステムとは違い、とても分かりやすい。
今回もかなり満足がいくアプリが作れた気がする。4年に1度しか訪れない貴重な「ひらめき」を無駄にしなくて済んだだろう。まだ編集部メンバーに作ったアプリを見せていないが、みんなが拍手をしながら、驚きと微笑みが混ざった表情を自分に向けているシーンが思い浮かぶぜ……。