ヒトの体の構成要素のひとつである筋繊維。この筋繊維に似せた人工の筋繊維をコンセプトにMIT Media Labらのグループは、OmniFiberというファイバーを開発した。
このOmniFiberはとても複雑で多様な動きをすることができる。この動きを見ていると、さまざまな分野へ応用されるのだろうと想像が膨らむのだ。では、このOmniFiberとはどのようなものなのか、どのように利用されるのか、今回はそのような話題について紹介したいと思う。
OmniFiberとは?
OmniFiberとは、MIT Media Labが主導となって開発されたファイバー。直径は、0.65~1.9mmと細い。普通の糸くらいだろうか。このOmniFiberの内部は、シリコンチューブやセンサーなどで構成され、シリコンチューブ内の作動流体の圧力制御などにより、複雑な動きを実現することが可能となる。
その複雑な動きとは、下記の図をご覧いただきたい。収縮(Contractible)、拡張(Extensible)、曲げ(Bending)、コイル(Coiling)、表面の凹凸(Textured)を表現できるのだ。
この収縮、拡張、曲げなどの動きは、FlowIOという小型の空圧プラットフォームをOmniFiberに接続することで、作動流体に圧力をかけることで制御できる。
FlowIOの詳細には触れないが、FlowIOによる制御によって、この収縮、拡張などの動きを応用した、引く、圧縮、振動、ストレッチなどの動きも可能となる。ちなみに本稿のタイトル画像にも使用したが、OmniFiberを6本程度使うことで2kgの重りも持ち上げることができるほどの力を有している。
OmniFiberの利活用シーンとは?
では、OmniFiberはどのようなシーンで利用されるのだろうか。
例えば、人工筋肉的な使用イメージとして、ピアノ演奏が挙げられている。グローブに取り付けられたOmniFiberが曲げなどの動きを経て、ピアノの鍵盤を弾くのをアシストするイメージだ。ピアノ演奏から連想して、サックス、フルートなどの演奏もアシストしてくれるだろう。
また、OmniFiberは衣服に簡単に埋め込むことができる。そのため、引っ張る、絞る、突く、振動する、皮膚を伸ばすなど、さまざまな肌や体の触覚を作り出すための実行可能な素材となる。例えば、こんな事例が掲載されている。お腹あたりに着用することで、歌唱中の呼吸ガイダンスとして利用するというのだ。
いかがだっただろうか。他にもさまざまな動きや利活用シーンが紹介されていた。
例えば、OmniFiberの伸縮の動きを応用して細い管のなかをくねくねと進んでいる動画もあった。この動きは、医療用としての利活用も想像できる。
また、OmniFiberを埋め込んだ素材が、大きく広がっていくシーンもあった。このような折りたたみ展開構造は、太陽電池パネル、ソーラーセイル、大型構造物などの宇宙での利活用を想像させる。
もちろん、宇宙品質としての課題はあるだろうが、このようにOmniFiberのポテンシャルを活かすさまざまな利活用シーンに期待が膨らむ。