モータースポーツファンのかたも多いことだろう。レーシングカーの性能、ドライバーのテクニック、そして当日の天候やアクシデントなどさまざまなコンディションによる適切な判断なども要求されるカーレース。
そんなカーレースが、ドライバー不在の自動運転で競う時代に突入している。そのレースは、インディアナポリスモータースピードウェイで行われた「Indy Autonomous Challenge(IAC)」。今回は、そんな話題について紹介したいと思う。
ドライバー不在の自動運転カーレースとは?
2021年10月23日、インディアナポリスモータースピードウェイにて自動運転車によるカーレース、IACが開催された。このカーレースには、世界から21大学による9つのチームが参加したという。
ハワイ大学、カリフォルニア大学サンディエゴ校のチームやMITのチーム、イタリアのモデナ大学など欧米のチームが多いなか、アジアからはインドや韓国の参加が見られた。残念ながら日本勢はいないようだ。ちなみに優勝したのは、ミュンヘン工科大学。
IACで使用する自動運転の車種は決まっているという。それは、イタリアのパルマに拠点を置く自動車メーカー、Dallara Automobili S.p.A.(ダラーラ アウトモビリ S.p.A.:Dallara)の「AV-21」。ちなみに、Dallaraは、自動車メーカーであると同時にカーレースのコントラクターでもある。
モータースポーツに疎いかたは、わたしを含めて初めて聞く企業かもしれないが、実はすごい企業。F1の車体製造や耐久レースの車体製造も担当してきた企業なのだ。
そして、このDallara AV-21を自動運転化するために尽力したのがCU-ICAR(Clemson University International Center for Automotive Research:クレムソン大学国際自動車研究センター)のDeep Orange。
Deep Orange は、Clemson大学の自動車工学を専攻する学生が、将来、自動車メーカーやサプライヤーでの仕事に邁進できるようにするための教育的な位置付けもあるフレームワークだ。そして、今回の大会のために発足したのはDeep Orange12と呼ばれるプロジェクトだという。
彼らが準備した共通の技術に基づき、参加した大学は、このレースにおいて自動運転を可能にするAIシステムなどの開発をしたという。
このレースの難しさは、なんといっても走行中に瞬時に判断するためのAIなどソフトウェアの開発。車載のカメラ、LiDARセンサー、GPS受信機、レーダーセンサーから取得したすべての情報を瞬時に分析しなければならない。他のレーシングカーの場所を予測しながら、ステアリングやブレーキの制御を決定する。レーシングカーの最高速度は、時速300kmにも達するので、高い技術力が求められる。
この技術力を競うレースといっても過言ではない。
いかがだっただろうか。今回は、IACというドライバー不在の自動運転カーレースについて紹介した。
記事を執筆する前は、ヒトであるドライバーが不在であると面白みにかけるのではないかと正直感じていた。理由は、カーレースなどのモータースポーツは、ヒーロー性、タレント性、カリスマ性を持つドライバーの存在が必要不可欠ではないかと考えていたためだ。
しかし、このIACを知るにつれて、Dallara、CU-ICAR、そして各参加大学の先進技術に対する挑戦する姿などに魅了されるようになった。チームは不明だが、Dallara AV-21が走行する動画を見ても自動運転とは思えないスピード感で通り過ぎるのも圧巻。レース場ではBoston Dynamicsのロボット「Spot」が公式Flag Waverになっている姿を見ても、何か心打たれるものがある。
将来は、小型・高性能のセンサーが開発されそれらを活用したセンシング技術、分析技術、リアルタイムに近い計算を実施する量子コンピューティング、エッジコンピュータ、AIなどが使用され、高度化し、すごい自動運転車レースへと発展していくのだろうか。
AIベースの車体が駆け引きをするスピード感あふれるシーンも見てみたい。自動でピットインを判断するシーンもしかりだ。
話は少しずれるが、チェス、将棋、オセロなどでもAIvs世界チャンピオンという大会も開かれているが、将来、AIvs世界No.1ドライバーという大会も開かれるかもしれないと妄想してしまった。みなさんはどのようなことを想像されるだろうか。