近年、日本で男女ともに筋トレブームが到来し、メイドインジャパンで美味しく、たんぱく質含有量も多いプロテインが発売されはじめている。
そんなプロテインだが、空気からプロテインを作ることができる、そんな、夢のような技術が存在する。
それはAir Proteinというスタートアップが開発。もともとは、アメリカ航空宇宙局(NASA)が宇宙飛行士のための技術として発案したもののようだ。今回は、この宇宙由来のAir Proteinについて紹介したいと思う。
Air Proteinとは?
Air Proteinとは、米国カリフォルニアを拠点とするスタートアップ。微生物を活用して空気もしくはCO2からプロテインや油脂などを作ることができる企業だ。 Air Proteinは、Kiverdiという企業の子会社でもある。ちなみに、Kiverdiは、「Carbon Transformation」を事業の主軸にした企業。
Air ProteinのCEOは、Lisa Dyson氏。親会社のKiverdiのCEOでもある。Lisa Dyson氏は、MITで物理学のPh.D.を取得、ボストンコンサルティンググループでコンサルティングの経験もある。ビジネス誌のInc.Magazineで2019年女性創設者トップ100 に選出、サステナビリティとテクノロジーを持つ起業家などが表彰される「2019 Verge Vanguard Award」に選出されるなど輝かしい経歴を持つすごくかっこいい女性だ。
Air Proteinは、もともと火星移住のためだった!?
空気からタンパク質をつくるというAir Proteinの発想は、もともとはNASAの発案だという。
まだ人類は、火星などの遠い惑星へは足を踏み入れていないが、未来において、遠い惑星への宇宙船という閉鎖空間や惑星上での数ヶ月や年単位となるような宇宙での生活を可能にするためには、栄養素を宇宙空間内で作り出す必要がある。
そこで、Air Proteinは、ある微生物に注目した。その微生物は、驚くべきパワーがあることを発見したのだ。その微生物は「水素酸化細菌」だ。
“Closed Loop Carbon Cycle”というコンセプトがある。宇宙飛行士が呼吸し吐くCO2を水素酸化菌が吸収し、吸収したものから必須アミノ酸を作ることができる。その必須アミノ酸から動物由来に似たプロテインを製造し、それをまた宇宙飛行士が食する。これが“Closed Loop Carbon Cycle”だ。
この空気由来のプロテインには、人間に必要な9つの必須アミノ酸すべてを含み、大豆と比べて2倍の量のアミノ酸が含まれているという。
そして、ビタミンとミネラルも豊富。製造工程において、農薬、除草剤、ホルモン、抗生物質などは一切不使用で、すべての自然なプロセスで製造されているのだ。
そして、Air Proteinは、CO2からプロテインを作れるだけではない。実は、油脂を作ることにも成功している。例えば、柑橘油に似た油脂。これらは、調味料や芳香剤、洗剤、そして飛行機の燃料にも使えるという。また、パーム油に似た油脂を作ることにも成功している。これによりさまざまな工業製品の原料になることが期待できるという。
Lisa Dyson博士は、上記のような興味深い話をTEDにおいてしている。是非ご覧いただきたい。
いかがだっただろうか。Air Proteinを知れば知るほどすごい企業であることがわかった。“Closed Loop Carbon Cycle”という閉じたループが鍵であり、人類はすごいテクノロジーを手に入れようとしている、そんな気持ちにさせられた。