2050年までにCO2の実質排出量をゼロとする目標である「2050年カーボンニュートラル宣言」。
これに伴い、政府はグリーン成長戦略などを打ち出し、国内でもCO2吸収装置の開発やカーボンリサイクルの研究開発が盛んだが、それは世界でも同様だ。
そんな中、アメリカのHypergiantは藻を使ってCO2を吸収する「EOS Bioreactor」という装置を発表した。
今回は、このEOS Bioreactorはどのような装置なのかについて紹介したい。
EOS Bioreactorとは?
Hypergiantは、AI技術を得意とした企業だ。エネルギー、航空宇宙、ヘルスケア、公共事業など、幅広い分野で事業を展開している。企業ロゴにはロケットを使用している。
彼らは、プロダクトの1つとしてEos BioreactorというCO2吸収装置を開発し販売している。
Eos Bioreactorは、近未来感を感じるデザインで、サイズは縦91cm×横91cm×高さ213cmと家庭の冷蔵庫よりも少し大きめといったサイズ感だ。
同装置は、藻を使ってCO2を吸収する。
ご存知のとおり藻類は、成長過程において、CO2、光、水が必要だ。藻類はCO2を吸収、消費し、その過程でバイオマスを生成する。
バイオマスとは、動植物から生み出された有機性の資源のことだ。
このバイオマスを処理して、燃料、油、栄養豊富な高タンパク質の食料源、肥料、プラスチック、化粧品などを作り出すこともできるというのだ。
Eos Bioreactor にはAIが搭載され、光、温度、pH、などを管理して藻類の成長を最適化するという。
EOS Bioreactorのメリット
EOS Bioreactorrのメリットはまず、藻類を使ってCO2を吸収できる点だ。しかも木の400倍の効率だという。小型である点も魅力だ。
この事業により、EOS Bioreactorを購入した企業もしくはCO2削減を依頼した企業は当然、自社が排出するCO2を削減できる。また、Hypergiantは、カーボンクレジット事業も展開可能だろう。
そして、もう1つ。バイオマスから、燃料、油、栄養豊富な高タンパク質の食料源、肥料、プラスチック、化粧品などを作り出す、これも注目すべき事業だ。
先日、別の記事でユーグレナのバイオ燃料を紹介したが、ユーグレナは、他にも未利用資源と微細藻類による飼料を餌にしたサーモンも開発している。広義には、この事業も類似した事業と分類できるだろう。
他にも、ロレアルでは、LanzaTech、Totalとともに、CO2を回収し、独自の“生物学的プロセス”でエタノールを生成。そして、こちらも独自の技術を用いてエタノールをエチレンに変換し、化石由来と同じ技術的特性を持つポリエチレンを製造している。このポリエチレンから、シャンプー容器を製造しているのだ。
このように、グリーン成長戦略にもあるとおり、カーボンリサイクル事業はとても重要視されているのだ。
いかがだっただろうか。このようにCO2を藻類で吸収し、バイオマスを生成。バイオマスから最終プロダクトを製造する。この市場は、技術的な障壁は高いだろうが、今後ますます盛んになっていくことだろう。