2022年11月30日、カリフォルニア工科大学は、金属を従来よりも1桁小さい解像度で3Dプリントする技術を開発したと報じた。では、この開発した技術はどのようなものだろうか。そして、どのようなメリットがあるのだろうか。今回は、こんな話題について紹介したいと思う。

  • 従来より1桁小さい解像度の金属3Dプリント技術を開発したカリフォルニア工科大学。彼らは一体どのような手法を編み出したのだろうか

    従来より1桁小さい解像度の金属3Dプリント技術を開発したカリフォルニア工科大学。彼らは一体どのような手法を編み出したのだろうか(出典:カリフォルニア工科大学)

従来よりも1桁小さい解像度で金属を3Dプリント!?

従来の金属3Dプリンタでは、レーザを金属粉末に照射することで溶融し、特定の形状に成形する手法が一般的だ。この手法では、約100μmの解像度で構造を作成することができる。ちなみに100μmは、おおよそ紙2枚の厚さに相当する。

しかしこの手法には課題もある。それは、銅などの熱伝導率が高い金属であると、レーザ照射で金属を溶融する際に熱が拡散してしまい、金属粉末が周辺に溶けることで3Dプリントの解像度が低下してしまうというものだ。

そこで研究チームは、水に溶けない柔軟な高分子鎖からなる素材の「ハイドロゲル」を活用する方法を考案。コンタクトレンズなどにも使用されるハイドロゲルは、低出力の紫外線を用いると高分子鎖の架橋を誘発して硬化させることができ、これを何回も繰り返すことで、思い通りの微細な形状を形成することができるという。

その後、金属塩を溶かした水に硬化させたハイドロゲルを浸すと、金属イオンがハイドロゲルに浸透していく。金属の種類にも依存するが、一般的にハイドロゲル部分の焼失温度よりも金属の融点の方が高いため、70℃~1100℃の炉で先ほどのハイドロゲル部分を焼失させることで、金属部分が残る。そして、ハイドロゲルが焼失するにつれて構造全体が収縮し、さらに小さな金属構造体になるとのことだ。そのサイズは約40μm、つまり人間の頭髪幅の半分未満だという。

  • 微細構造を3Dプリントした銅の拡大画像

    微細構造を3Dプリントした銅の拡大画像(出典:カリフォルニア工科大学)

では、この新しい手法はどのようなメリットをもたらすのだろうか。その一例に、マイクロ電子機械システム(MEMS)用の小型コンポーネントが挙げられるだろう。つまり、車両・宇宙用途・熱交換器・生物医学デバイス用の精密コンポーネントの製造だ。新技術によって、これらの分野でさらなる微小構造を持ち信頼性の高い製品を製造できる可能性が開けるのだ。

なお、その研究成果は2022年10月20日に科学雑誌「Nature」にオンライン掲載されている。

いかがだっただろうか。これまでにこの新手法を活用することで、銅・ニッケル・銀を含めたさまざまな金属合金で、微小構造の3Dプリントに成功しているという。未来をさらにダウンサイジングする魅力的な技術だ。