2022年11月25日、ヤマレコは、遭難者の位置情報をすぐに照会できる遭難者情報照会システム「SAGASU」を長野県警に提供する協定を結んだというプレスリリースを発表した。では、このSAGASUとはどのようなものだろうか。また、どのようなメリットがあるのだろうか。この今回は、こんな話題について紹介したいと思う。

遭難者情報照会システム「SAGASU」の仕組みとは?

遭難者情報照会システムのSAGASUは、捜索者が遭難者の携帯電話番号などを入力することで、遭難者の現在の位置情報と行動履歴を確認できるというもの。遭難者がヤマレコのアプリを使っていた場合は、遭難者の電話番号などをシステムに入力するだけで、その位置情報や行動履歴、計画書を確認し、隊員にスムーズに情報を伝えることができるのだ。登山者の位置情報が見つかった場合、SAGASUで発行された認証コードを隊員に伝えれば、隊員一人ひとりがそれぞれのスマホ画面で位置を確認できる。さらには、遭難者の計画書や過去の山行記録も確認できるので、遭難者の装備の状況や登山レベルも推測の可能だという。

  • ヤマレコと長野県警による連携協定調印式の様子

    ヤマレコと長野県警による連携協定調印式の様子(出典:ヤマレコ)

では、なぜヤマレコはこのような遭難者情報照会システムを開発し、県警へと提供したのだろうか。まず、従来の捜索活動の流れは次のようになっている。以下の図をご覧いただきたい。まず、家族から警察に対して捜索願が出される。それを受けて警察は、ヤマレコの「遭難した登山者の情報提供依頼」から、遭難者の位置情報などの提供を依頼し、その情報に基づき、警察が隊員に伝達。その後救助活動に向かうというものだ。

  • 従来の遭難者捜索活動の流れ

    従来の遭難者捜索活動の流れ(出典:ヤマレコ)

遭難はいつどこで発生するかわからない事態で、人命に関わるので一刻も早く正確な初動を起こすことが重要だ。しかしこれまでの流れでは、地図アプリ企業の業務時間外や休日などの関係で対応が遅れたり、最悪対応ができないケースだってありうる。

また警察側は、遭難かどうかわからない案件や連続する情報提供依頼に対し、心理的ハードルが発生する可能性もあるという。さらに、もし情報が見つかった場合には緊急を要するため電話で位置情報や計画書などの確認方法を説明するが、口頭で伝えるためメモするのに時間がかかったり、伝達にミスが発生する可能性も否定できないのだ。

電話番号などを入力するだけで位置情報が紹介できるヤマレコのSAGASUは、従来の捜索活動の課題を解決した素晴らしいシステムだと感じる。このシステムのアクセス権限を長野県警へ提供することで、今後さらなる迅速な対応が生まれることだろう。ヤマレコは、さらに他の県警にも展開を進めていくという。課題解決型のソリューションの素晴らしい事例だと感じる。

  • SAGASUでの遭難者情報照会画面

    SAGASUでの遭難者情報照会画面(出典:ヤマレコ)