2022年9月7日、東京大学らの研究グループは、太陽系から100光年先のハビタブルゾーン(主星からの距離が惑星表層に液体の水を保持しうる条件を満たした領域)内にスーパーアースを2つ発見、というプレスリリースを発表した。この発表は、地球外生命体に関する知見に大きな一歩を与える素晴らしい研究成果だと考えられる。今回は、そんな話題について紹介したいと思う。

ハビタブルゾーンにスーパーアースを2つ発見

東京大学の成田憲保教授、渡辺紀治特任研究員、福井暁彦特任助教、自然科学研究機構アストロバイオロジーセンターの平野照幸助教らの国際研究チームは、太陽系から約100光年の距離のハビタブルゾーン内にある赤色矮星「LP890-9」を公転する2つのスーパーアースを発見したと発表した。

  • 太陽系の100光年先に発見されたスーパーアース

    太陽系の100光年先に発見されたスーパーアース(出典:東京大学)

少し用語を補足しておきたい。スーパーアースとは、惑星の半径が地球の1~1.5倍程度で地球よりやや大きい惑星のことをいう。理論上、この半径の惑星は、水素大気を持つ小さなガス惑星ではなく、岩石を主体とした惑星と考えられる。

また、表面温度がおよそ3500度以下の恒星を赤色矮星と呼ぶ。実は宇宙に存在する恒星の8割近くは赤色矮星だといい、表面温度が6000度くらいの太陽よりも温度が低く小さいことから、太陽の場合よりもハビタブルゾーンが短周期の領域となる。

そして、ハビタブルゾーンとは、habitable(生きることが可能)であるzone(地帯)という意味で、学術分野によって厳密な定義がさまざまあるようだ。シンプルに説明すると、太陽のような恒星からの距離が近いと暑くて水が蒸発してしまう一方で、距離が遠い場合には寒くて水が凍ってしまうので、生命体が生命を維持することができない。そのため生命体が存在するには、恒星と惑星が"適切な距離"にある必要があり、それを満たす範囲がハビタブルゾーンだといえる。

今回、スーパーアースの発見に活用されたのは、NASAのトランジット惑星探索衛星TESS(Transiting Exoplanet Survey Satellite)と、ベルギー・リエージュ大学の研究者らによるSPECULOOSプロジェクト、東京大学とアストロバイオロジーセンターの研究者が開発した多色同時撮像カメラMuSCAT3と近赤外視線速度測定装置IRDなどの機器や装置だ。これらの観測装置の連携によって素晴らしい発見に繋がったのだ。

  • 多色同時撮像カメラMuSCAT3

    多色同時撮像カメラMuSCAT3(出典:東京大学)

今回発見された2つのスーパーアース、LP890-9bと同cのうち後者については、生命を育んでいるかどうかは現時点ではわかっていないものの、主星の前を通過(トランジット)する軌道を持つトランジット惑星であるため、将来の追観測によって大気組成や雲の有無など大気の性質を詳しく調べることができるという。大気の性質は、地表に液体の水が安定的に存在出来るかどうかに大きく影響する。

いかがだったろうか。たとえ将来の観測でこの惑星には生命が存在しそうにないとわかっても、ハビタブルゾーンにある惑星が、どのような大気を持つのかという大気組成や雲の有無などを研究することは、私たちの住む地球が宇宙の中でどんな存在なのかを位置付ける上で重要なものとなるという。その点において、今回の発見は将来のさらなる研究へとつながる重要な研究対象をもたらしたと言うことができるのだ。