2022年9月13日、凸版印刷は、古文書をスマートフォンアプリで撮影するだけで解読することができる技術を開発した、というプレスリリースを発表した。そのサービスが、「AI-OCR古文書サービス ふみのは」だ。
では、なぜ凸版印刷は、古文書をスマホで解読できるサービスを開発したのだろうか。今回は、そんな話題について紹介したいと思う。
凸版印刷の「AI-OCR古文書サービス ふみのは」とは?
凸版印刷は2021年、古文書解読支援システム「ふみのはゼミ」というサービスをリリースしている。これは、パソコンやタブレット上での使用に限った法人向けサービスとして開発されたものであるが、今回発表されたのは、スマートフォン上での利用を可能にしたものだ。
ただパソコンやタブレットからスマートフォンへと利用シーンを拡大しただけではない。木版を用いて印刷されたくずし字資料に対応したAI-OCRに加え、新開発の手書きの古文書に対応したAI-OCRを搭載し、幅広い資料の解読を支援することが可能なのだ。
新サービスで活用されているすごい点は、幅広い種類のくずし文字に対応しているということ。くずし文字の解読には、おまかせの「フルオートモード」と詳細を解読できる「1文字モード」がある。フルオートモードでは、画像の中にある文字領域を自動で検出し、つなげて書かれた文字の区切り位置も含めてAIがくずし字を解読する。さらに詳細に解読したいときには、1文字モードを使用することで、AIが提示する候補文字が表示されるのだ。
では、なぜ、凸版印刷は、スマートフォンを活用した古文書解読サービスを開発したのだろうか。それは、資料館などでの古文書の解読や調査における業務効率化へのニーズや、一般の利用者からの「手元にある古文書の概要を知りたい」、「くずし字を読めるようになりたい」といったニーズへの対応だという。
実際のスマホアプリ利用シーンは動画でも紹介されている。紙の上に書かれた古文書をスマートフォン上で撮影。すると古文書のそれぞれの文字列に四角が表示され、順番に解読されていくというもの。最終的には古文書のそれぞれの文字の隣に解読文が表示されるのだ。
いかがだったろうか。このアプリは、古文書の専門家はもちろんのこと、専門家以外も利用できるところが大きい。
一般の人は、古文書を読む機会も触れる機会もないといっても過言ではない。少なくとも筆者の周辺では、古文書を取り扱っている専門家以外で古文書を読める人物は存在しない。しかし、このアプリを活用することができれば、一般の人でも興味をもって、古文書を読んでみようと読書感覚で手に取る方も増えるかもしれない。
多言語を翻訳するスマートフォンアプリはすでに存在する。それらはいわば、地理的な理由により発生した制約を解消してくれるAIだ。この「AI-OCR古文書サービス ふみのは」で使われているAIは、過去という時間的な理由により発生した制約を解消してくれる。もしかしたら未来では、読めない文字は無くなるかもしれない、そんな期待感を与えてくれる素晴らしいサービスだ。