量子科学技術研究開発機構(QST)とマイクロ波化学は2022年7月16日、化学処理とマイクロ波加熱によってリチウム実鉱石の溶解に成功したと発表した。

この方法は、リチウム鉱石の精製において、飛躍的にコスト面や省エネ面を向上させることができる技術だという。では、このマイクロ波加熱によってリチウム実鉱石を溶解する技術とはどのようなものなのか、どのようなメリットがあるのか、今回はそんな話題について触れたいと思う。

QSTらが開発したリチウム鉱石をマイクロ波で溶解する技術とは?

日本においてレアメタルなどの希少金属は海外からの輸入に頼っているのが実態だ。このレアメタルは、さまざまな産業に必要不可欠なものである。またコロナ禍、世界の紛争、自然災害などの世界情勢によりレアメタルの取引価格は高騰、安定しないなどの影響を受けてしまう。

そして、今回の主題に挙がっているリチウムは、核融合発電においても必要不可欠なものだ。

このように、用途が多岐にわたるリチウムなどのレアメタルの安定供給は日本国内で喫緊の課題なのだ。

では、今回発表されたマイクロ波加熱によってリチウム実鉱石を溶解する技術とはどのようなものだろうか。

それは、塩基試薬による常圧下での300℃のマイクロ波加熱処理と常圧・室温下での酸溶解によって全溶解するというものだ。これまで用いていた数グラム程度の鉱石を取り扱う装置から、100グラム程度の鉱石を扱える装置にスケールアップし、効率よくマイクロ波が照射できるようにさらに工夫した装置を用いたという。

  • QST六カ所研究所で用いられたマイクロ波加熱装置

    QST六カ所研究所で用いられたマイクロ波加熱装置(出典:量子科学技術研究開発機構)

そして、この手法は大きなメリットがあるという。

それは、従来リチウム鉱石の1つであるスポジュミンを精鉱する際、1000℃以上の焼処理の後、濃硫酸による250℃以上の焙焼処理が必要だった。しかし今回開発した技術であれば従来の技術と比較して、1000℃以上での反応を300℃という非常に低い温度に下げることができるのだ。これにより、CAPEX(設備投資費など)は70%程度、OPEX(運用費など)は80%程度、CO2排出量は90%以上削減できる見通しを得ることができたという。

  • 従来技術と今回開発したマイクロ波溶解技術での比較

    従来技術と今回開発したマイクロ波溶解技術での比較(出典:量子科学技術研究開発機構)

いかがだっただろうか。今回開発したこのマイクロ波加熱によるリチウム溶解技術は、他の鉱石についても応用可能だという。金属精製工程で多く発生する高温処理の高いエネルギー消費やCO2排出の問題を解決できる手法であると期待できるのだ。