幼いころ、たんぽぽの種に息を吹きかけて飛ばして遊んだことを思い出す。
そのようなたんぽぽの種のように風に舞うことができるデバイスをワシントン大学が開発している。
では、なぜ、このようなたんぽぽの種のようなデバイスを開発しているのだろうか、今回はそんな話題について触れたいと思う。
たんぽぽの種のように風に舞うデバイスとは?
ワシントン大学が開発している、たんぽぽの種のように風に舞うデバイス。このデバイスの名前はまだないようだ。まず、どのようなデバイスなのか紹介したい。
気になるのは重さだろう。このデバイスの重さは30mgととても軽い。しかし、視点を変えると、たんぽぽの種は1mg。これよりも30倍重い。この重さにまで切り詰めるために、ワシントン大学では、さまざま工夫をしたという。
このデバイスの構造だが、たんぽぽの種に似せている。たんぽぽの種には、ふわふわの毛のようなもので落下速度を抑えることができているのだが、実際のたんぽぽの種のふわふわの毛の部分を2次元投影した構造を採用することで、落下速度を抑えることができたのだという。スライスしたレモンのようにも見える。
そして、このデバイスの中央部には、電子回路が搭載されている。この電子回路は温度、湿度、圧力、光が測定できるセンサが搭載されている。
この回路は、軽量で柔軟なものを採用している。この電子回路を駆動させるための電力は、バッテリーも検討したというが、軽量化の面で難点となってしまうため、ソーラーパネルにしたという。
このデバイスが地表面に向けて落下していく際には、必ずソーラーパネルの面が空を向くように工夫もされている。常に電力を確保できるようにするためだ。
このデバイスは、送信された信号を反射して情報を送信する方法である後方散乱を使用して、センサデータをワイヤレスで送り返すことができる。
そして、センサを搭載したデバイスによって、計測した温度、湿度、圧力、光のデータを、日没まで送信する。日没後に、電源がオフとなった場合でも、翌朝、日の光によって電源がオンとなれば、データ収集が再開されるのだ。
そして、このデバイス自体が土に還るという環境に配慮された設計で作られている。それがバッテリーを採用しなかった理由の1つでもある。
では、ワシントン大学は、なぜこのデバイスを開発しているのだろうか。
それは、農場や森林などの広大な土地で温度、湿度などの環境条件を把握、監視するために活用することを検討しているようだ。
広大な土地で従来のセンサを用いると、整備期間、整備コストに課題があるためなのだ。
すでに、ワシントン大学の研究チームは、1台のドローンで数千という数のこのデバイスを20mの高さから落としたところ、風に乗って約100mほど飛んで行ったことが確認できたという。
いかがだっただろうか。
たんぽぽの種は、風で1km先まで飛ぶことができると言われている。おそらくワシントン大学の研究チームもたんぽぽの種と同程度の飛距離を目指しているのではないだろうか。 そして、目指しているのは距離だけではないだろう。農場や森林以外でも活用できそうなデバイスだ。