日本ではあまり知られていないかもしれないが、インドはSNS大国である。今回はそんなインド(と中国)のSNS事情をお伝えしよう。

インドや中国の道路事情

中国・大連のメインストリートは中山路である。筆者がいつも泊まるホテルもこの道沿いにある。道の反対側は路面電車「202系統」の停留所だ。深夜を除けば、いつもごった返している。横断歩道橋はあるが、ホテルからは300メートルも先だ。面倒だから筆者はこの道をさっさと渡る。慣れたものである。

だが、一緒に渡ろうとした中国人の当社社員はなかなか渡れない。車の切れ目を見つけようとしているが、片側3車線のこの道に車の切れ目などない。

「怖くないの?」と聞かれるが、筆者は「チェンナイで鍛えていれば簡単だよ」と答える。

コツは簡単だ。

中国の車は(バスを除いて)車線に沿って前に走る。だから片側3車線といっても、1台ずつ、計6台(5車線のところは10台)の車を順番に注意して渡ればよいのだ(初めて中国に行く人は厳禁)。

チェンナイのメインストリート アンナサライではそうはいかない。3車線のところには5台の車が突っ込んでくる。車は斜めに走る。その間にバイクが入ってくる。運転手同士はアイコンタクトを上手く交わす。そこに歩行者が入るのは至難の業である。

そんなチェンナイで道を渡ることができるようになれば、大連は簡単というわけだ。しかし、筆者でもデリーでは無理だ。怖い。せいぜいチェンナイやバンガロールが筆者の限界である。

デリーでは交通違反取締りでSNS「Facebook」が大活躍

前置きが長くなってしまったが、今回はそんな道路事情を背景としたデリーの話題である。

CNNの報道によると、デリーの交通警察はこのほど、交通違反取締りにSNS「Facebook」を使い始めた。

警察側は当初、道路の損壊や標識、照明の不備などに関する苦情が集まると見ていたが、交通違反の通報が相次いだ。1台のバイクに大人3人と子ども3人が乗っている画像、駐車違反、ヘルメット不着用といった違反行為の通報が、写真や動画付きで寄せられている。5月に専用ページを開設して以来、その数はすでに3,000件を超えたらしい。

画像に写ったナンバープレートなど、Facebookの情報のみを根拠に摘発された違反は約700件に上っている。Facebook経由の通報に対応する専任スタッフも配置されたという。さすがにFacebookの国 インドである。

ちなみに下の写真はチェンナイの道沿いに貼られた保険会社の宣伝のポスターである。そのうちにこのポスターもFacebookで通報されて取締りを受ける運命のようだ。

チェンナイにある"リラックス"をうたった保険会社の看板。これも取締りの対象に……

インドではビジネス関係者のほとんどがFacebookを利用

SNSを世界的に見ると、FacebookとMySpaceが両雄だ。最近、FacebookがついにMySpaceを追い抜き、 利用者が5億人を超えた。急成長中のTwitterはまだ2億人弱といったところらしい。

日本でSNSといえばmixiが最も有名だ。しかし一部調査機関の情報によれば、今年になって訪問者数ではTwitterがmixiを追い抜いたようだ。単純に訪問者数だけを比較してもあまり意味がないような気もするが、急激な伸び方である。

鳩山前首相のTwitterも有名だったが、ビジネスで最も活用されているのはソフトバンクの孫社長だと思う。小気味良い発言でソフトバンクユーザも増えただろう。歌手の浜崎あゆみさんによる孫社長への直訴とか原口総務相との論戦も面白かった。

面白いことに、SNSに対する日本と世界の考え方は大きく違う。

FacebookやTwitterは実名を基本としている。"ソーシャルネットワーク"としての考えである。これに対してミクシィなどの日本のSNSはニックネームを基本とし、実名はあまり使われないし、推奨もされていない。筆者は全て実名で使用している。その方が発言に責任が持てると思ってそうしている。これはあくまでも筆者の考えである。

インドではどうか。インドではこれまでグーグルの「Orkut」が最も使われていた。しかし今年になってFacebookがトップになった。シン首相自らが使用していることでも有名だ。

筆者の周囲のビジネス関係者は、ほとんど全員と言ってよいほどFacebookを使用している。ただし、その使われ方は日本と大きく違う。彼らはあくまでもSNSを「ネットワークを広げるための道具」と考えている。「誰と誰が友達になった」との話は毎日のように聞くが、日本のようにミニブログを毎日書くようなことはしない。

中国では……

中国ではFacebookもTwitterも遮断されている。だから使えない。国内では「QQ」と呼ばれるサイトが最も規模が大きいと聞く。しかし筆者はこれを見たことがないのでよくわからない。多分、掲示板のようなものであろう。

中国では、若者が掲示板をよく使っているようだ。中にはmixiを使っている人もいる。しかし、大連のビジネス上の友人たちの間で「SNSを使っている」という話は聞かない。筆者は気になったので、何で使わないのかを聞いてみた。

「SNSを使わなくても、毎日、毎日、新しい知り合いができる。ご飯を一緒に食べて友人になる。だから、これ以上SNSでネットワークを増やす必要はない」とのことである。なるほど、これが中国人気質か。

将来性には疑問も

FacebookやTwitterは、さらに利用者数を伸ばすのか。この点では筆者は疑問を感じている。中国政府だけでなくインド政府も情報統制に動き出した。他の国々もインドに続こうとしている。この点は次回に書くことにしよう。

なお、筆者はFacebook、Twitter、MySpace、mixiを活用している。ユーザー名はすべて「Zhutian0312」。mixi日記を除き、すべてTwitterから投稿しているので、興味があればチェックしていただきたい。

<お詫びと訂正>
前回の本コラム「『BJTビジネス日本語能力テスト』の再開を願う」に間違いがありました。筆者の大連ジェトロ事務所訪問も、漢検がチェンナイを訪問しようと予定していたのも「2年前」と書きましたが、ともに「昨年」の間違いです。この場をお借りしてお詫びいたします(※編集部注: 記事は修正済みです)。

著者紹介

竹田孝治 (Koji Takeda)

エターナル・テクノロジーズ(ET)社社長。日本システムウエア(NSW)にてソフトウェア開発業務に従事。1996年にインドオフショア開発と日本で初となる自社社員に対するインド研修を立ち上げる。2004年、ET社設立。グローバル人材育成のためのインド研修をメイン事業とする。2006年、インドに子会社を設立。日本、インド、中国の技術者を結び付けることを目指す。独自コラム「[(続)インド・中国IT見聞録]」も掲載中。