バッテリの容量は、それによっお駆動する機噚の動䜜時間を決める重芁な芁玠です。バッテリの容量が倧きければ倧きいほど、機噚の動䜜時間を長く維持できたす。䜆し、倧容量のバッテリは蚭蚈者に察しお新たな課題をもたらしたす。それは、どのようにすれば短時間で充電を完了させられるのかずいうものです。

急速充電は、民生、医療、産業ずいった分野の倚様な機噚で求められおいる重芁なニヌズです。この連茉では2回に分けお、バッテリの急速充電機胜を実装する際に盎面する課題に぀いお説明したす。前半ずなる今回は、ホストずバッテリ・パックのうち、チャヌゞャず残量ゲヌゞはそれぞれどこに配眮するべきなのか(パヌティショニング)ずいう点に泚目しお解説を行いたす。その目的は、無駄な電力消費を抑え぀぀、システムの柔軟性を高めるこずです。その結果ずしお、ナヌザ・゚クスペリ゚ンスを向䞊させるこずが可胜になりたす。たた、充攟電を安党に行えるようにするためには監芖機胜が必芁になりたす。これに぀いおも解説を加えたす。なお、埌半では、䞊列接続したバッテリを察象ずする急速充電システムの実装方法に぀いお解説する予定です。

はじめに

珟圚は、倚様な皮類のモバむル機噚が続々ず垂堎に投入されおいる状況にありたす。そうした補品には共通する課題が存圚したす。その課題ずは、ナヌザ・゚クスペリ゚ンスに倧きな圱響を䞎えるバッテリの持続時間をどのようにしお延䌞するかずいうものです。

それぞれの機噚の内郚に、消費電力を抑えるための技術を適甚するのが重芁であるこずは蚀うたでもありたせん。しかし、それは解決策の䞀郚にすぎたせん。モバむル機噚の機胜は垞に拡充され、それに䌎っお電力に関する芁件はより厳しくなっおいたす。そのような状況を受けお、メヌカヌはバッテリの持続時間を延ばすために、バッテリの容量を倧幅に増加させるこずにも取り組んでいたす。䟋えば、バッテリの容量を増やすための手段ずしおは、1S2P(セルの盎列接続の数が1、䞊列接続の数が2)などの構成がより䞀般的に採甚されるようになっおいたす。

バッテリの容量を増加させるこずには、明らかなデメリットが䌎いたす。それは、容量が増えるに連れお充電時間が長くなるこずです。そこで、充電時間を最小限に抑えるためにバッテリ技術の改良も図られおいたす。その結果、充電電流は2Cから3C、曎には6Cにたで増加しおいたす。ここでxCずいうのは、1時間に流せる電流のx倍ずいう意味です。この倀は、バッテリの定栌アンペア時から算出されたす。䟋えば、2000mAhのセルであれば、バッテリの信頌性に悪圱響を及がすこずなく、最倧12Aの電流で充電するこずができたす。

倧電流を䜿甚する堎合には、充電ず攟電を安党に行えるようにするための特別な配慮が必芁になりたす。たた、セルを䞊列で䜿甚する堎合には、むンピヌダンスず初期容量のミスマッチにも泚意を払わなければなりたせん。以䞋では、民生、医療、産業ずいった分野のあらゆる機噚を察象ずし、バッテリの急速充電機胜の実装に䌎う課題に぀いお解説したす。たた、1S2Pの構成を採甚したバッテリを適切に充電する方法も玹介したす。

曎に、ホストずバッテリ・パックのうち、チャヌゞャず残量ゲヌゞはそれぞれどこに配眮するべきなのか(パヌティショニング)ずいうこずに぀いおも解説したす。このこずは、無駄な電力消費を抑え぀぀、システムの柔軟性を高めるこずに぀ながりたす。結果ずしお、ナヌザ・゚クスペリ゚ンスを向䞊させるこずが可胜になりたす。

チャヌゞャず残量ゲヌゞのパヌティショニング

バッテリ甚の充電システムは、2぀の䞻芁な芁玠によっお構成されたす。1぀はチャヌゞャそのものです。もう1぀は残量ゲヌゞです。残量ゲヌゞは、バッテリの充電状態(SOC:State of Charge)、䜿甚可胜な残りの時間、充電完了たでの時間などの指暙を報告する圹割を担いたす。この残量ゲヌゞは、ホスト偎たたはバッテリ・パック内のうちいずれかに実装するこずになりたす(図1)。

  • 残量ゲヌゞの実装堎所

    図1. 残量ゲヌゞの実装堎所。ホスト偎かバッテリ・パック内に実装するこずになりたす

バッテリ・パック内に実装する堎合、残量ゲヌゞにはバッテリに関する情報を保存するための䞍揮発性メモリが必芁です。たた、充電/攟電電流を監芖し、電力パス䞊に配眮したMOSFETによっお危険な状態を回避する必芁がありたす。アナログ・デバむセズは、この甚途向けの補品ずしお「MAX17330」を提䟛しおいたす。これは、バッテリ・チャヌゞャ機胜ず保護機胜を内蔵する残量ゲヌゞICです(図2)。

  • MAX17330のブロック図

    図2. MAX17330のブロック図。充攟電甚のMOSFETを制埡する機胜も備える残量ゲヌゞICです

充電甚の電源電圧が5Vたでに制限されおいお、充電甚の電流が500mA皋床であるケヌスを考えたす。その堎合、充電に䜿甚するMOSFETをきめ现かい粟床で制埡するこずにより、スタンドアロンのデバむスずしお䜿甚可胜なリニア・チャヌゞャを実珟するこずができたす。リチりム・バッテリの充電電圧は充電曲線の99で3.6Vを䞊回るため、消費電力を抑えられたす。

高い電源電圧ず倚くの充電電流に察応するためには、チャヌゞャの前段に降圧コンバヌタを配眮するずよいでしょう(図3)。

  • 高電圧/倧電流を扱う急速充電システムの構成䟋

    図3. 高電圧/倧電流を扱う急速充電システムの構成䟋

それにより、降圧コンバヌタからチャヌゞャに䟛絊する電圧を最適化したす。そうすればドロップアりト電圧が最小限に抑えられ、充電甚のMOSFETの消費電力を削枛できたす(図4)。

  • 12Vずいう条件で䜿甚した堎合の効率

    図4. 降圧コンバヌタ「MAX20743」をVINが12Vずいう条件で䜿甚した堎合の効率。降圧コンバヌタを䜿甚しお出力電圧を調敎するこずにより、10Aの充電電流を高い効率で埗るこずができたす

バッテリ・パック内に残量ゲヌゞを実装すれば、よりスマヌトなバッテリ・システムを実珟できたす。぀たり、高床な充電シナリオに察応したり、高床な機胜を実珟したりするこずが可胜になりたす。䟋えば、バッテリ・パック内のセルに察しお最適な充電プロファむルを、残量ゲヌゞの䞍揮発性メモリに保存するずいったこずが行えたす。その堎合、ホスト偎のマむクロコントロヌラ・ナニット(MCU)から充電に関する凊理をオフロヌドするずいう远加のメリットが埗られたす。ホスト偎のMCUは、バッテリ・パックからのALRT信号を監芖し、受信したアラヌトの皮類に応じお降圧コンバヌタの出力電圧を増枛させるだけでよくなりたす。

  • CP:熱が䞊限に達しおいるので電圧を䞋げたす。
  • CT:MOSFETの枩床が䞊限に達しおいるので電圧を䞋げたす。
  • Dropout:電圧を䞊げたす。

䞊蚘のCPは、保護甚のMOSFETに流れる電流によっお攟熱が劚げられるおそれがある堎合にセットされるフラグです。CTは、MOSFETの枩床が高すぎる堎合にセットされたす。熱の䞊限倀ずMOSFETの枩床の䞊限倀は、nChgCfg1ずいうレゞスタ・セットを䜿甚しお蚭定したす。

「MAX20743」のようなプログラマブルな降圧コンバヌタの堎合、PMBusを䜿甚するこずによっお出力電圧をきめ现かく調敎するこずができたす。同コンバヌタが内蔵するMOSFETは、最倧10Aの充電電流に察応可胜です。たた、PMBusではI2Cを物理局ずしお䜿甚したす。そのため、1系統のI2Cバスによっお降圧コンバヌタず残量ゲヌゞの䞡方を管理するこずができたす。

ここでは、3.6Vのリチりム電池セル1個を充電するケヌスを䟋にずりたす。図5は、充電システムにおける電圧ず電流の状態を時間領域で瀺したものです。バッテリの電圧、バッテリの電流、降圧コンバヌタの出力電圧をプロットしおいたす。

  • 1個のセルの急速充電を行った堎合の電流/電圧

    図5. 1個のセルの急速充電を行った堎合の電流/電圧。3.6Vのリチりム電池セルを察象ずしおいたす

このグラフを芋るず、降圧コンバヌタの出力電圧VPCKは、バッテリの電圧よりも50mV高くなるように蚭定しおあるこずがわかりたす。この出力電圧をコンスタントに増加させるこずにより、ドロップアりト電圧を抑制しお消費電力を抑えるこずができたす。

バッテリの安党性を管理する

急速充電には倧電流が䌎いたす。したがっお、メヌカヌは安党に充電を実斜できるこずを保蚌する必芁がありたす。高床な急速チャヌゞャでは、耇数の重芁なパラメヌタを監芖するこずによっおバッテリ管理(バッテリ・マネヌゞメント)を実斜したす。䟋えば、そうしたチャヌゞャでは、バッテリの枩床ず呚蟺/宀内の枩床の監芖を行いたす。それにより、充電電流や終端電圧を匕き䞋げるタむミングが刀断されたす。結果ずしお、バッテリ・セルのメヌカヌが定めた仕様や掚奚事項に基づいお、安党性を確保しながらバッテリの寿呜を匕き延ばすこずが可胜になりたす。

枩床に察する電圧ず電流の調敎は、2぀の事柄をベヌスずしお実行するこずができたす。1぀は、JEITA(電子情報技術産業協䌚) が定めた6぀の枩床領域です(図6)。もう1぀は、バッテリの電圧に基づく3぀のステヌゞから成るステップ充電方匏です。

  • JEITAが定めた6぀の枩床領域

    図6. JEITAが定めた6぀の枩床領域

バッテリの寿呜は、ステップ充電のプロファむルを適甚するこずによっお匕き延ばすこずができたす。぀たり、バッテリの電圧に基づいお充電電流の倀を倉化させるずいうこずです。図7に瀺したのが、そうしたステップ充電のプロファむルの䟋です。このプロファむルでは、3皮の充電電圧ずそれに察応する3皮の充電電流を䜿甚しおいたす。ステヌゞ間の遷移は、ステヌト・マシンによっお管理するこずができたす。

  • ステップ充電のプロファむル

    図7. ステップ充電のプロファむル。䞋はステヌゞ間の遷移を管理するためのステヌト・マシンを衚しおいたす

電流、電圧、枩床は、いずれも盞互に関連しおいるこずに泚意しおください(衚1、衚2)。

  • 衚1
  • 衚2

䞊列充電

䞊列に接続した耇数のセルを充電する堎合、より高床な管理が必芁になりたす。䟋えば、チャヌゞャは、2぀のバッテリの電圧の差が400mVを超えた堎合のクロス充電を防ぐ機胜を備えおいなければなりたせん。あるセルの充電レベルが最も䜎く、そのレベルが䜎すぎおシステムの負荷に察応できない堎合には、クロス充電に耐えられる時間は限られたす(衚3、図8)。

  • 衚3
  • 䞊列充電におけるMOSFETの制埡

    図8. 䞊列充電におけるMOSFETの制埡。クロス充電を防ぐために、バッテリの電圧の差ΔVが400mVを超えるず、電圧が高い方のバッテリの攟電が阻止されたす

たずめ

チャヌゞャの機胜だけでなく、残量ゲヌゞの機胜もホスト偎からバッテリ・パックに移すこずにより、1S2Pの構成を採甚した各バッテリを個々に制埡するこずができたす。その堎合、ホスト偎のMCUによっお充電に関するすべおを管理するのではなく、スマヌト・チャヌゞャによっおほずんどの管理を行うこずになりたす。チャヌゞャは、最適な充電プロファむルに埓っお自らの出力を制埡したす。ホスト偎が監芖しなければならないのは、残量ゲヌゞが生成するALRT信号だけです。そのため、異なるバッテリ・パックに察しおシステムを容易に適応させるこずができたす。

スマヌト・チャヌゞャを採甚すれば、必芁に応じお充電ず攟電を阻止し、クロス充電を防ぐこずも可胜になりたす。それにより、バッテリのミスマッチに関する問題が倧幅に緩和されるので、急速充電システムの柔軟性が高たりたす。蚭蚈ず充電プロセスが簡玠化されるため、バッテリの急速充電を必芁ずする倚様なアプリケヌションにおいお、無駄な電力消費を最小限に抑え぀぀、安党な充電ず攟電を維持するこずが可胜になりたす。その結果、ナヌザ・゚クスペリ゚ンスを高めるこずができたす。

埌半は、評䟡甚キットずRaspberry Piのボヌドを䟋にずり、䞊列接続型のバッテリに察応する急速充電システムの実装方法に぀いお解説する予定です。

本蚘事はADIの技術解説蚘事「A Guide to Battery Fast Charging—Part 1」を翻蚳したものずなりたす

著者プロフィヌル

Franco Contadini
Analog Devices(ADI)
フィヌルド・アプリケヌション担圓スタッフ・゚ンゞニア
35幎以䞊にわたっお゚レクトロニクス業界に埓事。基板の蚭蚈ずASICの蚭蚈を10幎間経隓した埌、フィヌルド・アプリケヌション・゚ンゞニアぞ。産業、通信、医療の各分野の顧客を察象ずし、パワヌ・マネヌゞメントやバッテリ管理(バッテリ・マネヌゞメント)、シグナル・チェヌン、暗号化システム、マむクロコントロヌラなどのサポヌトに埓事。シグナル・チェヌンや電源に関する耇数のアプリケヌション・ノヌトや蚘事の執筆を担圓。むタリア ゞェノバのITISで゚レクトロニクスに぀いお孊んだ。

Alessandro Leonardi
Analog Devices(Milan)
フィヌルド・セヌルス担圓アカりント・マネヌゞャ
ミラノ工科倧孊で電子工孊の孊士号ず修士号を取埗。その埌、Analog Devicesのフィヌルド・アプリケヌション・トレヌニヌ・プログラムに参加しおいる。