KDDIは2026年1月22日、大阪府堺市で「大阪堺データセンター」の稼働を開始しました。シャープの液晶工場跡地を再利用し、早期にAI向けのデータセンターを立ち上げたことで注目されていますが、なぜ通信会社がAIのデータセンターに力を入れる動きが強まっているのでしょうか。→「ネットワーク進化論 - モバイルとブロードバンドでビジネス変革」の過去回はこちらを参照。

シャープ・堺工場の設備を活かして早期に立ち上げ

大阪府堺市にあるシャープの液晶パネル工場跡地を、データセンターに活用する動きが進んでいますが、一番乗りでサービスを開始したのがKDDIです。同社は2026年1月22日に「大阪堺データセンター」を稼働開始したことを発表しています。

  • ネットワーク進化論 - モバイルとブロードバンドでビジネス変革 第31回

    KDDIは2026年1月22日、シャープの堺工場跡地の一部で「大阪堺データセンター」の稼働を開始。シャープの液晶パネル工場だった時代のアセットをフル活用し、早期立ち上げを実現しているのが特徴だ

その最大の特徴となるのは、シャープの工場を転用したことにより、既存アセットを最大限に活用して取得から1年以内という短期間でデータセンターを立ち上げたこと。建屋はもちろんですが、サーバを冷やすのに必要な冷却設備や、電力会社から供給された電力をデータセンターで使用する電圧に変換する、変圧器などを流用しています。

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    設備を冷却するのに必要な冷却塔などの冷却設備は、シャープの工場時代のものを全面的に活用している

これらの設備は導入するのに数年の期間と多くのコストがかかるだけあって、既存設備を流用できることは、データセンターの早期立ち上げに大きなメリットとなっているようです。

これまでシャープが使っていた設備だけに耐用年数が気になる所ですが、2008年頃に導入されたもので、使われたのは15年程度とのこと。30年くらいは問題なく使用できるため、そのまま使うメリットの方が大きいとのことでした。

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    変圧器などの設備もシャープの工場時代のものを流用。これらを新規で用意するとなれば、数億円のコストと3年程度の年数が必要になるという

既存設備に電力を安定的に届ける電気室、そして非常に高い性能を持つ米NVIDIA製の「GB200 NVL72」などを用いたAIサーバを新たに追加することで、AIデータセンターとしての機能を実現しています。

通常、これだけの規模のデータセンターを構築するには3年ほどの時間がかかるそうですが、既存設備をフル活用して早期に立ち上げ、急速に拡大するAI需要に応えるのがKDDIの狙いとなるようです。

現在は稼働したばかりの初期段階で、まだサーバが置かれていないスペースも多くある状況ですが、それでもおよそ5年後にはフル稼働となる可能性があるとのこと。

それだけAI関連の需要は急速に高まっているだけに、それに応える上でも大規模なデータセンターを早期に立ち上げられたことは、KDDIの事業面でも大きなメリットとなるようです。

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    周辺設備は既存のアセットを活用する一方、AI関連の処理を担うサーバーには「NVIDIA GB200 NVL72」など、高性能な最新の機材を用いている

データセンターは通信と密接な関係にある

KDDIは「TELEHOUSE」というブランドで、国内外でデータセンターを展開しており、世界有数の規模を持つデータセンター事業者でもあります。しかし、なぜ通信会社であるKDDIが、データセンター事業に力を入れているのか?という点には疑問も残る所でしょう。

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    KDDIの2026年3月期第2四半期決算説明会より。同社は「TELEHOUSE」ブランドで国内外にデータセンターを提供している大手事業者でもあり、海外でもデータセンターの積極的な拡大を図っている(出所:KDDI)

そこにはデータセンターがインターネット、さらに言えばクラウドの成長とともに発展してきており、ネットワークと切り離せない関係にあることが影響しています。

クラウドの実態が世界各地にあるデータセンター、ひいてはその中にあるサーバであることは多くの人が知る所だと思いますが、それだけにネットワークを有する通信会社が、基幹のネットワークにより近い場所にデータセンターを設置できるなど、有利な立場にあると言えます。

しかもKDDIがデータセンター事業を開始したのは、前身の1つである国際電信電話(KDD)時代の1989年からと古く、ネットワークとクラウドの普及とともに事業を拡大させてきた経緯があります。

それゆえ、KDDIはデータセンターに関する多くの知見を持ち合わせており、その“目利き力”が今回のシャープ堺工場跡地の取得、そして既存設備を活用した早期のAIデータセンター立ち上げへとつながったと言えそうです。

NTT、ソフトバンクでも進むデータセンター事業の強化

ただ、データセンター事業に力を入れているのはKDDIだけではなく、国内通信各社もこの事業には非常に力を入れています。

実際、NTTグループも傘下のNTTデータを中心に世界各国にデータセンター事業を展開しており、最近ではNTTが注力する「IOWN」のオールフォトニクスネットワーク(APN)の低遅延を活かしてデータセンターの分散化を図るなどの取り組みを進めています。

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    NTT東日本の子会社であるNTT-MEは2026年1月30日、IOWN APNを活用しデータセンター間を低遅延で接続する「Japan Premium Direct Connect All-Photonics Connect powered by IOWN」の提供を開始。グループでデータセンターへのIOWN APN活用を進めている(出所:NTT-ME)

また、ソフトバンクも都市部に集中しているデータセンターを分散配置して、AIデータ処理の平準化を図るとともに、その基盤をサービスとして提供し、AIの利活用を進める「次世代社会インフラ」の事業に力を入れています。

その一環としてKDDIと同様にシャープの堺工場跡地を取得しており、より大規模にAIデータセンターの建設を進め、データセンター事業の強化を図るようです。

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    ソフトバンクの2023年3月期決算説明会資料より。同社が打ち出す「次世代社会インフラ」構想では、全国にAIのデータンセンターを分散配置してデータ処理を平準化する方針を掲げている(出所:ソフトバンク)

これだけ各社のデータセンター事業が注目されるようになったのは、AI技術の急速な発展が大きく影響していることに間違いありません。

特に国内に関して言うならば、国としての成長や安全保障などの観点から、各国が自社のインフラやデータを活用してAIの運用・開発をする「ソブリンAI」の重要性が高まっていることから、国内でデータセンター事業を展開する大手企業の存在が、一層注目されています。

それだけに通信各社は、AIが新たな社会インフラになると想定してデータセンター事業への投資を急拡大させており、それがシャープ堺工場跡地の取得が相次ぐ事態にもつながったと言えます。

各社が主力とする通信事業は、市場飽和などにより停滞が続いているだけに、各社は通信に代わる新しい事業の柱に育てるべく、今後もデータセンターへの積極的な取り組みを続けることになりそうです。