星の中には、爆発するものがあります。小規模な爆発は太陽でも起こっており、強い爆発だと地球に届く“爆風”が、激しいオーロラを引き起こすこともあります。が、そんなものではない、星全体の明るさがケタ違いにあがるのが、新星であり超新星です。新星は明るさが1万~10万倍に、超新星は数10万倍~数千万倍にもなり、銀河全体に匹敵する明るさになることすらあります。今回は、爆発しそうな星について語ります。

“爆発”。目の前で起こるとヤバイのですが、安全圏からながめるのは楽しいですな。それを芸術まで赤めたのが打ち上げ花火です。まあ、SF映画などでも爆発を楽しんでいる私たちがいます。また、最近では安全面から控えめになっておりますが、学校の授業でも赤爆といった爆発実験は生徒の心をつかむのにつかわれていました。今でも、爆鳴や水素爆発などのデモンストレーションは色々事故を起こさない工夫されながら行われています。

また、爆発によるエネルギー放出を巧み使っているのがガソリンやディーゼルエンジンですな。これはこの連載の第204回で紹介しています。今読み返してみると、なかなか浅くてよい記事でございます。才能あったな私(過去形)。

は! 星の爆発の話でした。星、恒星は太陽に代表されるように非常に巨大で、莫大なエネルギーをはなっています。太陽に接近するとその熱さで、宇宙探査機などは蒸発してしまいますし、直径数キロという巨大な天体である彗星はしばしば太陽熱で崩壊する様子が観測されます。星の代表格である太陽が出しているエネルギーは、3×1026Wなのですが、ケタが多すぎて、なんというか検討もつきませんな。

とりあえず、地球は太陽から1億5000万kmも離れているのですが、太陽によって昼間は非常に明るいですな。太陽の明るさは、メガランプマガジンさんによると日向で照度10万ルクス。直接日差しが入らない部屋の北側で1000ルクスくらい。JISの照明基準では、学校の教室で300ルクス、オフィスで750ルクスだそうです。

光源から10倍遠ざかると明るさは10の2乗で、100分の1になりますので、地球より太陽から10倍遠い土星でも日向なら1000ルクスで、オフィス内より明るいくらいなんですな。

ちなみに冥王星は40倍遠いので、1600分の1。それでも60ルクスくらい。家の居間程度の明るさで、寒さはともかく十分明るいくらいです。そうなのか(計算してはじめて知った)。

そんな太陽ですが、10パーセク(32.6光年)離れた距離だと4等級の星です。25光年の織姫星(こと座のベガ)の明るさは0等級で、5等級の差=明るさ100倍ですので、織姫さんは太陽より100倍明るい星ということになります。太陽のかわりに織姫星をもってきたら、土星でも地球と同じ明るさで暮らしができますな。太陽が100個あるようなもんですからねー。

おおっと、大幅に話が脱線しています。戻さなければ。

で、爆発でございます。新星では恒星が爆発によってそれまでの明るさの1~10万倍に、超新星ではそれまでの数十万倍から数千万倍になるという話でした。で、問題は「それまでの明るさ」が問題になります。

新星は、白色矮星といわれる、星の燃えかすに、近隣の恒星から燃料が投下され(本当に投下される)、表面で爆発が起こる現象です。

白色矮星は、星の燃えかすだけに暗く。地球から最も近くにある白色矮星シリウスBで、8等級、10パーセクにおいた明るさ(断りなしにいっていますが、絶対等級といって恒星の明るさ比較に使う)で11等級です。太陽とは7等級差ですので明るさは太陽の1000分の1ですな。一方で、白色矮星に燃料を投下する星はたいてい太陽よりも明るい準矮星や輝巨星です。こちらは100倍とか1000倍とか明るいものです。新星の場合は、暗い方を基準にするようですが、明るいほうに暗い方の白色矮星の爆発の明るさが加わると、1000倍程度明るいといったところのようですな、えー、これは何を基準にか、はっきりしない状況で書いているので、まちがっていたらごめんなさいです。

新星は、恒星からの燃料投下が一定だと、周期的に爆発を起こすことがあり、その周期が十分にみじかければ(人類の観測歴史以内のスパンなら)予想ができます。

その中でも、かんむり座T星は80年ごとの周期らしく(過去に2回しか観測ないけど)、新星になれば都会でもなんとか見える2等級になりそうだということで業界では話題になっています。って、これはこの連載の第281回で紹介したのでした。

もちろん、人類史では前回がわからない新星が発生することもあります。共生星といわれる白色矮星+燃料投下する恒星のペアは可能性があるのですが、白色矮星が暗すぎて、何が共生星なのか、新星にならないとわからないというのが実態でございます。人類史になくても、周囲に爆発の痕跡があれば発見できそうですが、そういう例があるのかな。ちょっと聞いたことがないけど、どうなんでしょう。

さて、一方で超新星でございます。これは、恒星の表面が爆発するのではなく、恒星全体がふっとんでしまうできごとで、ケタ違いの爆発になるわけです。

超新星には2つ(まあ3つかな)の原因があって、ひとつは新星の拡大版です。白色矮星は投下される燃料が一定程度を越えると、表面だけですまず、燃料の重みで恒星全体がふっとんでしまうことがわかっています。これをIa型超新星といっています。全体がふっとぶ重さは、太陽質量の1.4倍と決まっているので、このリミットに達すると必ず超新星になります。結果としてIa型の超新星の明るさは決まっていまして、これを使って(超新星が発生した)銀河までの距離の精密な測定ができるのでございます。

もう1つのタイプは、Ia型の変形で、白色矮星同士が衝突合体をして、重さが太陽の1.4倍をこえることで起こります。2015年のネイチャーには、そうした事例が3つ観測できたという論文が載っています。

さらにもう1つのタイプは、太陽の8倍以上の重さを持つ、巨大な星が、燃料が燃え尽きることで恒星を支えなくなり、一気に崩壊して爆発するものです。II型、Ib型、Ic型の超新星がこれにあたります。

典型的な例としては、オリオン座のベテルギウスや、さそり座のアンタレスなどの赤色超巨星があり、また、青色の超巨星が崩壊することもあります。

恒星の寿命は質量の2~3乗分の1くらいで短くなり、仮に3乗をとると、太陽の8倍重いと一生は太陽の500分の1の長さになります。太陽の寿命は100億年なので、8倍重い星は、2000万年程度。12倍重いと2000分の1の長さなので、500万年で一生が終わってしまいます。

ベテルギウスの重さは太陽の15倍以上なので、3乗なら3000分の1で300万年。2乗なら200分の1で5000万年です。さらに、恒星は、原始星→主系列星→準矮星→水平分枝星→超巨星→超新星と進化し、超新星は最終段階で、寿命全体の100分の1以下の短さです。つまり、ベテルギウスは、うえの大雑把な計算でも数万年~数十万年以内に爆発することがわかっています。宇宙の長さからいってもこれは明日といっていいレベルでございますな。

ベテルギウスやアンタレスは距離500光年と、織姫星の20倍も遠くにあるのですが1等星です。これが超新星になると、少なくとも数十万倍以上は明るくなるわけで、仮に100万倍とすると15等級明るくなります。-14等で、これは満月よりも明るくなり、昼間でも見られます。

遠くなのと、爆発の軸の関係で地球に影響はないとされており、高見の見物ができそうですが、いや、いつかはわかりません。

なお、10等級の恒星が超新星爆発をしても、-5等級とかになり、金星なみになる感じです。

この連載の第263回でご紹介したSIMBADで調べると10等級以上の超巨星は100個以上はあり、3万年以内のものがそれだけあると300年に1個は超新星爆発が見られそうな感じです。人類が最後に肉眼で超新星を見たのは1987年ですが、これはとなりの銀河、大マゼラン雲でのできごと。4等級にしかなりませんでした。我々の天の川銀河だと1604年に-3等級になったSN1604が最後で400年見えていません。

そろそろ一発ドカンと爆発見物したいものでございます。