今回は、サイエンス聖地巡礼というテーマでお話します。いや、かってに考えたのですが。「西国科学散歩」、「東国科学散歩」という本もあるくらいですので、ジャンル化してもいいかも。サイエンス好きが、出張とか旅行のついでに行くネタ、話すネタになるかもー。ということでご紹介いたしますねー。

「聖地巡礼」が流行っております。元々は、宗教の信徒がメッカ、エルサレム、ローマなどに行くお話だと思いますし、日本なら「お伊勢参り」とかになりますかね。旅行を伴うお参りでございます。昨今は推しているジャンル、アニメだのアイドルだのゆかりの地に行く意味で、カジュアルに使われております。観光資源として注目されているとのお話もありますな。

ということで、今回カジュアルな意味でサイエンス聖地巡礼を提案いたします。ええ、観光資源になって冊子とか資料館とかできたら楽しいな、だったら仕事こないかなみたいな野望? も持ちつつ、では参りましょうか。Googleマップのリンクもつけます。

なお、私有地や大学の管理地では入れられないところもありますし、住宅地で騒ぐと迷惑なので、とりあえず知っとくくらいにしといてくださいませ。

東京・国分寺市のペンシルロケット射場

ペンシルロケットは、日本の近代ロケットのスタートといわれる実験です。1955年に、日本ロケットの父ともいわれる東大の糸川英夫氏らのグループが開発したもので、太さ2cm未満、長さは23cm(後に30cm、43cm)という超小型の固体燃料ロケットでした。100機以上が作られ、発射実験を重ねて多数のデータがとられたそうです。

このペンシルロケットの発射試験は、観測しやすいように水平方向に行われた(打ち上げられない)ので、細長い土地が必要でした。選ばれたのが、新中央工業の試射場で、現在は国分寺駅から東の中央線沿いの現在は早稲田実業学校高等部のグラウンドがある場所でした。ジャーナリストの寺門さんが詳細な場所を調査し、報告されています。

  • ペンシルロケットの模型

    ペンシルロケットの模型

シカゴ大学の世界初の原子炉、シカゴ・パイル-1

1942年に初めて連続核分裂に成功した原子炉が、シカゴ大学のフットボール場の座席の下に作られた「シカゴ・パイル-1(CP-1)」です。もちろん初期の実験で放射能についての配慮が不足しており、近隣の川は長期にわたって放射能汚染されています。逸話としては日本の風船爆弾がここに届き、制御のための電源からの電線を切って、原子炉が緊急停止したってな話があります。現地には記念碑があり、ワタクシ仕事がらみでシカゴ大学に行った時に、横を通ったことがございます。

パリのフーコー振り子実験場所

地球の自転を1851年に証明したフーコー振り子。以前、この連載でも紹介したことがございますな。実験をしたレオン・フーコーはアマチュアの科学者で、最初はパリの自宅の地下室で実験しています。その後、パリ天文台で公開実験をし、科学好きで、アマチュアのフーコーを気に入ったナポレオン三世によりパンテオンで実験がされました。1855年にはパリの万国博覧会(万博会場は、セーヌ川の向こうのシャンゼリゼ)にあわせて再度パンテオンで実験され話題になっています。

  • フーコー振り子

    フランス・パリのパンテオンのフーコー振り子

英国・ウールスソープで万有引力を着想したニュートン

科学者の名前で、最も有名なのは、ガリレオ、ニュートン、アインシュタインですね。このうち、万有引力の法則を発見したニュートン(光学や微積分でも有名)は、ケンブリッジ大学の学生だった1665年にパンデミックになったペストから逃れるため、ウールスソープの生家に避難しました。その避難期間に万有引力の法則を「自宅の庭のリンゴが落ちるのを見て」着想したといわれます。コロナ禍の初期にちょっと有名になった逸話ですね。細かいことをいうと諸説ありですが、まあニュートンの生家は聖地で間違いないと思います。リンゴの木もあり、保全もされ見学できますし、隣にはニュートンの業績について子供でも楽しめる科学館「サイエンス・ディスカバリー・センター」があるそうです。

ドイツ・ベルンの相対性理論を生んだ場所、アインシュタインハウス

1905年はアインシュタインの奇跡の年といわれていまして、特殊相対性理論、光量子仮説、ブラウン運動の理論を発表しています。当時はスイスの特許局の役人をしていて、仕事は(アインシュタインにとって簡単すぎたので)午前中で終わらせ、午後は仕事のデスクで物理について研究をしていたってな話がありますね。そして当時のスイス・ベルンのアパートの部屋はアインシュタインハウスという名前で公開されているそうです。

なお、アインシュタインは南ドイツのウルムで生まれたのですが、最後はユダヤ人であるためドイツから逃げ、アメリカに渡ることになります。各地でアインシュタインの足跡があり、聖地もそれだけだくさんあります。ウルムにもアインシュタインを記念した場所がたくさんあるそうです。

ガリレオが教鞭をとったイタリア・パドヴァ大学{#ID6}

ニュートンとアインシュタインを出して、ガリレオを出さないわけにはいきませんよね。ガリレオはイタリア出身で「ピサの斜塔で落体実験した」という話がありますが、ちょっと違うかもーという説が大きいみたい。ガリレオはピサで誕生しピサ大学で学び、振り子の等時性を着想したといわれており、退学したもののピサ大学の教師にもなったので、ここもまあ聖地でありますな。

ただ、それよりもガリレオが活躍したのはパドヴァ大学の教師になってからです。落体の法則を確立して運動法則を作り、望遠鏡によって世界で最も早く天体観測をして、月のクレーターや金星の満ち欠け、木星の衛星、天の川が星の集まりであることを発見するなど成果を上げています。

そのパドヴァ大学はベネチアの近くにあり、イタリアで2番目に古い大学とされ、ダンテも教師をしています。ちなみにパドヴァには当たり前のようにホテルガリレオとかがあって、フロントは宇宙っぽい内装だったりします。日本ではあんまりそういうの見ないですよね。

しかし大学のホームページ、イタリア語と英語にくわえ、中国語のページがあります。イタリアはマルコポーロの時代、中国とはシルクロードのむこうとコッチだったわけですが、いまでも中国との関係が深いことがうかがわれますなー。

というわけでペンシルロケット以外は有名どころでおさめましたが、このシリーズ、評判よければ時々やりますね。そして、機会があれば実際に訪問レポートなどできればと思っております。ま、国内になりましょうが。