色鮮やかな花火。中でも明るい赤を作り出すのは「ストロンチウム」でございます。そして、この元素ほど華やかで危険視もされるものはなかなかありません。今日は花火の赤の元、ストロンチウムのお話です。

花火の季節でございます。手持ち花火から、大玉打ち上げまで、まだまだ感染症は気になりますが、今年は楽しむ機会がまあまあ復活しているようでございます。楽しいよね花火。全国の花火大会の情報は、こちらなど、まとめサイトが参考になりますなー。

で、花火といえば、輝く光、音、形、そして華やかな色ですな。光と音は激しく燃える火薬のおかげですな。ウィキペディア先生によると、花火のはじまりは火薬の発明国である中国の狼煙だそうですが、ヨーロッパで14世紀ころから発達しはじめ、ほどなく日本にも渡り、農家などが趣味で作ったりもしました。

火薬の原料は炭、硫黄、硝石ですが、肥料にもなる物質であり、硝石は農家で糞尿から作られたりもしていました。そして江戸時代には独自の発達をし、江戸時代後半には「玉屋と鍵屋」が打ち上げ花火の技術の優劣を競うようになります。なお、初期の花火は光、音、そしてしかけによる形だったわけです。

  • 花火

では、色は? というと18~19世紀のヨーロッパの化学の発達で様々な化合物の安定供給で、炎色反応を利用した色づけができるようになってからです。日本では明治以降はカラフルな花火が増えていきます。和火に対して洋火といういいかたもあったんだとか。というか江戸時代の花火はそんなにカラフルじゃなかったのね。へー。 炎色反応は、化学の華ですので、いろんなサイトで紹介がありますな。名古屋市科学館では常設展示で楽しめるようです。日本化学会ではおうちで実験が紹介されています。高知の科学館(新しいとこすね)では動画で実験ショーを紹介しています。えーっと3分目くらいからがおもしろいです。

さて、この炎色反応で、様々な色の花火が作れるわけですが、東邦大学のバーチャルラボには、炎色反応の動画と解説が組み合わせたものがございますな

この炎色反応の実験は教材屋さんがキットを作っており、家庭でも実験できますが、火を使うのでそこは十分注意し、取説などをよーくよんでやってくださいましね。火事になったりやけどをする危険がありますからね。また煙などで呼吸器系に影響する可能性もございますので、そこは、ちゃんとしてくださいまし。なお、より管理しやすい炎色反応を使ったろうそくなども科学実験で使われますし、市販されているものも一部あるようです。

ただ、なんといっても、一番お手軽なのは、コンビニやおもちゃ屋で花火を買ってくることですな。ただあくまで火薬なので、飛行機とかで運べないものということはお忘れなく(外国で花火をやろうとして、ろうそくともどもセキュリティで取り上げられた人です)。

さて、科学館などでの炎色反応のデモ実験では、特に華やかなのは緑や青をつくる銅と、赤をつくるストロンチウムの炎色反応が、人気があるようです。特に赤くて明るいストロンチウムは声があがるのをよく見かけました。

ところで、銅はともかく、ストロンチウムって、と思いますね。あんまりなじみがない物質です。すいへーりーべと元素の周期表をとなえても、ストロンチウムはでてきません。どこにあるかというと、周期表の上から5段目! ルビジウムの隣です。38番元素です。私が覚えているのは、SiPSで、硫黄まで、おい3段目16番じゃないか。全然届いていませんな。周期表の縦だと左から2つ目2族の、覚えなあかんところですな。覚え方を調べると……まー、すぐにエロに走るので、リンクもつけないですよ。夏休みでお子様が見ているかもしれませんからなー。

同じ赤の炎色反応(ただし深~い赤で見栄えはイマイチ)なリチウムなら3番目ですが、38番て、おい、知らんぞな感じです。まー2番のヘリウムだって発見されたのは19世紀ですから数字が小さければ、というわけでもないのですが。だいたい元素番号が大きいほどざっくりレアな物質になっていくので、ストロンチウム、なじみがないのは間違いありません。

で調べてみると、ストロンチウムの発見は、1787年、英国スコットランドのストロチアン(ストロンシャン:Strontian)村で発見された、ストロチアン石(ストロンチアン石)からでそうで、名前もそこにちなむのだそうです。ちなみにストロンチアン(シャン)は、スコットランドの西側にあり、まあなんというか田舎です。自然と古城などを楽しむのどかなところなようですな。北に20kmほどには、ハリー・ポッターのホグワーツ急行の通り道になっているグレンフィナン陸橋がありますが、そのあたりからはクルマで移動という感じでございます。行ってみたいなと思ったので思わず調べてしまった。

さて、ストロンチウムですが医師のクラウフォードらが発見し、19世紀になって大科学者ファラデーの師匠で、新元素ハンターでもあったハンフリー・デービーがストロンチウムと名づけています。自然界では反応した化合物が鉱物にとりこまれ、わりと豊富にあり、1kgあたりの単価も安く、もっぱら炎色反応での利用や、反応性が高いことでの利用がなされているようですな。

  • 天青石

    ストロンチウムを主成分とする鉱石はいろいろあります。写真はそのうちの1つ天青石(SrSO4)

ただ、ストロンチウムは別のところでも名前を耳にすることがあります。放射性同位体のストロンチウム90で、ウランの核分裂ででてきます。半減期が28.8年と長く、カルシウムと似ているので人体にも蓄積しやすいというやっかいな物質です。体内被曝の元になりますな。ストロンチウムで検索するとこのあたりが登場することも多いようです。

一方で放射性同位体のストロンチウム89は半減期が50.52日と短く、短時間だけ強い放射線を出すので、骨の放射線治療にも使われるようです。

さらに、骨に吸収されやすいので、安定同位体の比率(地域によってちがう)を使って、古代の人骨の来歴などを調べるのにもつかわれているのだとか。へーえええでございます。

なお花火に使われるストロンチウムは、放射線を出さない、フツーのストロンチウムですので、ご安心くださいまで。

ということでストロンチウム。なかなかおもしろい元素でございます。花火の鮮やかで強い赤を見たら、「おー、あれはXXXXX」と下手にウンチクは語らず「きれいだねー」と言っておき、花火のあとに、チラッと話にだすのがいいんでないかいと思うわけです。