2019年前半は、はやぶさ2の活躍史上初のブラックホールの撮影成功インターステラテクノロジズ社の初の国産民間ロケットが宇宙空間に到達など、国内だけでも宇宙ネタ満載でしたねー。では、後半(7月~12月)にどんな宇宙ネタ・ニュースがまっているのか!? 恒例企画の「宇宙どうでしょう?」で、シロウトでも楽しめるものを中心にご紹介いたしますねー。

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7月~8月

この時期一晩中木星が明るいです。夜に南のともかく明るい星=木星、で間違い無いです。で、木星が目立つので周辺の星も木星を頼りに調べられます。その中には、土星もあるんですよー。東京、大阪、福岡のような大都会ですと、明るい星しか見えないので逆にわかりやすい。国立天文台の星図を見ながら、チェックしてみてくださいませ。

7月3日:南米から南太平洋で皆既日食

日本時間の早朝に起こります。日本では日食になりませんが(残念!)、南米の天文台がネット中継を予定しています。中継は朝4時15分〜9時ですが、この中継サイトでは5時40分前後の2分間が皆既日食ですので、そのあたりを狙うのが良いかと思います。

なお、次の皆既日食は2020年12月でやはり南米。2021年12月に南極!。2023年4月にインドネシア。2024年4月に北米で起こり、日本では2035年9月まで待たねばなりません。

7月17日早朝:月食(沖縄や九州で見られる)

沖縄・九州・四国などで部分月食が見られます。沈みかけの満月が「わずかに」欠けながら沈んでいきます。東京では見られません。神戸でもアウト。岡山…うーんわからんだろうなぁって感じです。国内では沖縄がベスト。日食の半月後、あるいは半月前には月食がセットで起こることが多いのですがこれですな。世界的にはヨーロッパからアフリカが観察適地です。ヨーロッパの人たちがSNSで発信したりしそうですな。次の月食は2021年5月で当分先です。

注意! 今年は秋!! JAXA相模原キャンパス公開

はやぶさ探査機の「ふるさと」JAXA相模原キャンパスの特別公開は通常7月末ですが。今年は秋なのだそうです。現時点では詳細未定。Twitter JAXA相模原キャンパス特別公開のアカウントをチェックするのが良いかと。

8月7日に伝統的七夕(珍しい!)

七夕といえば7月7日ですね。この日になっているのは陰陽思想で、奇数のゾロ目がめでたいという考えから来ているのそうですよ。ただ、日本の大部分は梅雨で、織姫&彦星が見える可能性はわずか1〜2割でございます。

もともと、だいたい8月になる旧暦の7月7日で考えていたので、ズレちゃったのですな。この旧暦での7月7日の七夕を、旧暦という言葉を認めていない(公式の暦を作る立場の)国立天文台では「伝統的七夕」と言っています。で、その伝統的七夕の日は、年によってバラバラと変わる(例えば2018年は8月17日で、2020年は8月25日)。仙台などでは簡易的に1ヶ月遅れの8月7日にやると決めちゃってます。ただ、今年は2008年以来久々に8月7日が伝統的七夕なのですな。巡り合わせといえばそれまでですが、素数を見つけた様に、ちょっと「おぉ」であります。

ちなみに旧暦の日付は、そのまま月の形にほぼ対応しています。旧暦3日の月は、三日月。15日なら15夜のだいたい満月。7日は満月と新月の中間なので、ほぼ半月になります。七夕の月は天の川を渡す船の様な形の半月なんですな(旧暦の場合)。

8月12日~13日ごろ:ペルセウス座流星群の極大

流れ星が多く見えます。ただ、今年は旧暦と新暦がほぼ一致しているので13夜くらいの明るい月が見えています。月が眩しくて観察には不向きではありますが、月が建物や木に隠れる様に工夫しながら見ると、やはり流れ星の数はたくさん見えるはずです。

参考:どこでもサイエンス 第2回 8月12日と13日の夜はペルセウス座流星群を観察しよう

8月24日:野辺山の特別公開

8月24日には、45mという特大のパラボラアンテナがあり、JR最高地点の駅近くの国立天文台の野辺山(長野)の特別公開があります。ふだんでもある程度見学できるんですけど、やはり特別公開日はいろんなところが見られて、研究者も子供でもわかるようにアトラクションを考えたり、直接お話しできたりして楽しめますよ。

そのほか、ロケット打ち上げなど

SpaceFlight Nowを見ると、もう毎週の様にロケット打ち上げがありますな。主なものを拾って見ます。

7月5日はロシアの気象衛星MeteorM2-2の打ち上げが予定されています。

同じく20日は有人宇宙船ソユーズが国際宇宙ステーション(ISS)に向かいます。翌日には米国SpaceX社が無人の貨物船ドラゴンをやはりISSに向かわせます。大型の宇宙船2機がISSと邂逅することになりますね。さらに31日にもロシアのプログレス貨物船が向かう予定です。これらはいずれも予定が遅れていますので、またリスケになるかもしれませんな。

関連して8月17日頃に米ボーイング社の有人宇宙船スターライナーのISSへの無人テストフライトも予定されています。何回も延期されてきていますが。うまくいくでしょうか。

一方、8月1日頃には、英米のVirgin Orbit(ヴァージンオービット)社がジャンボジェットを改造した飛行機(Cosmic Girl)にロケットをぶら下げ、空中発射する方法で小型の衛星の打ち上げにチャレンジします。一昨年くらいからテストを重ねてきて、いよいよ本番ですね。先日、ANA(全日空)とのパートナーシップを結んだことも発表されています。サイエンス的には宇宙機を使った様々な研究や実験がますます身近になる感じですね。

9~10月

9月13日が中秋の明月。お月見です。もともとは収穫祭的な意味があった様ですな。みなさんはお月見しますか? 

9月の星空は「これ」という出来事はあまりありませんが、秋口は天の川がよく見える時期ですし、秋が深まると空が澄んで星が見やすい時期になります。

ぼんやりと眺めるのもいいですよ。その時、双眼鏡で眺めると、結構都会でも星が見えるのでオススメでございます。

10月初旬はノーベル賞発表で、世間がざわつきますね。今年はどうでしょうね。

10月20日から、夕暮れ時の水星が見頃 10月31日に金星と接近

水星は並の1等星より2倍は明るい星なのですが、太陽に近いところを回るために、日の入り直後か日の出直前にしか見られません。つまりは明るい時間の、しかも太陽に近い方向なんで見つけにくいんですな。

そんな水星が、見やすくなるのがこの時期。ずっと明るい金星がガイド役になります。ほぼ同じ方向に一番明るいのが金星、ぐっと落ちて水星という感じになります。10月31日は金星と水星が特に近づきますのでチェックです。忘れなければどこでもサイエンスでガイドします。

続きまして宇宙探査ネタですよ

9月に日本のH2Bロケットが、ISSに無人貨物船HTVを向かわせます。日本最大のロケットH2Bの打ち上げは迫力でしょうな。おなじみの種子島からの打ち上げになります。

一方米SpaceX社はいよいよ有人での宇宙船クルー・ドラゴンの打ち上げを行う予定です。NASAの宇宙飛行士Doug Hurley and Bob Behnkenの2人が搭乗し、打ち上げ→着水というテストをします。

なお11月の予定ですが、米ロッキード社のスターライナーが、こちらは有人でISSに行くテストを行います。他9月にはロシアのソユーズは通常のISSへの有人飛行です。さらに10月には米ノースロップ・グラマンの無人貨物機Cygnusも向かいます。

国際宇宙ステーションがらみでいろいろ賑やかですねー。

11月~12月

11月15日ごろ 最初の発見された変光星のミラ(くじら座にある)が最も明るくなります。

ミラは330日の周期で、明るさが1000倍も変わる星です。こういう星の明るさが変わるものを変光星といって、今から400年前に最初に発見されました。ミラの場合、明るい時は、東京などの空でもかろうじて見える2〜3等級。暗い時は満天の星が望める太平洋の真ん中でも見られない10等級です。

これは星全体が膨らんだり縮んだりしているためですが、太陽も50億年後にはミラの様になると考えられています。つまり将来の太陽の姿なんですなー。1000倍も明るさが変わったらたまったものではないので、その頃は地球は生命が存在できない星になることを予見しているとも言えます。50億年後ですけど。

11月24日に金星と木星が、12月11日に金星と土星が接近

いずれも見ものです。肉眼では土星の環は見えませんが、金星、木星ともにとても明るい星ですし、土星もそこそこよく見えるのです。そして、この11月末〜12月頭は、夕方の空に、金星、木星、土星が並ぶ光景が見られるのですよ。

12月14日・15日:ふたご座流星群の極大

 夏のペルセウス座流星群と並んで、多くの流れ星が見られます。1時間に20個とか30個とかですね。 一晩中観察に適しています。

12月26日に部分日食

午後2時すぎ〜夕方の出来事です

あれ? しばらく日食はなかったのでは? はい「皆既日食」はないのですが、今回はインドネシアで見られる金環日食に伴う部分日食なんですな。皆既日食は、太陽が完全に月に隠されますが、金環日食は、月が地球からちょっと遠目のときに起こり、そのために太陽の中に新月の黒い月がはまり込む様に見えるのです。

ただ、日本では月が太陽の前をかすめる様になります。月は結構近くにあるので、地球のどこから見るかで、太陽の欠け方が変わるのですなー。

日食の起こる時間も、各地で異なります。東京では2時28分。札幌では3時27分スタートなど。観察の仕方なども含め、またこの連載でもご紹介しますねー。

年末の宇宙探査では、中国がやりますよ。

中国の長征5ロケットを使い、嫦娥(Chang'e)5号が月に向かい、着陸。月のサンプルを最大2kg地球に持ち帰る予定です。成功すれば、これは1970年代のロシア(当時はソ連)のルナや、米国のアポロ以来、半世紀近くぶりの月資料の持ち帰りになりますね。ちなみに中国は、将来、月面有人着陸および長期滞在を目指しているとアナウンスしています。ちなみに現在は嫦娥4号が月の裏側の着陸に成功し、無人探査車の玉兔2号が様々な探査を行なっています。

ということで、下半期も楽しんでまいりましょー!

著者プロフィール

東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。