不足するデータ関連人材を踏まえたチーム作り

データサイエンスに関わる人材の不足は、データドリブン組織への移行を目指す企業にとって悩みの種となっています。2023年版State of the CIO(CIOの現状)の調査によると、データサイエンス/アナリティクスに関わる人材は、CIOが雇用しようと努めているテクノロジー関連の人材の上位3位に入っています。一方で、CIOの22%が、採用で確保することが困難な人材3つの1つに挙げています。

人材不足は今後も続く見込みが高く、データチームへの投資を最適化することがITリーダーには求められています。そこで多くの人が投げかける重要な問いは、人材不足のなか、どのようにして自社に最も適したチームを構築するのかということです。

その答えとして、Cloudera米国本社でChief Data & Analytics Officerを務めるシェイデ・クリスチャン(Shayde Christian)は、「組織としてより高いレベルにおけるニーズによって導き出されるべき」と語っています。

例えば、分散型のアプローチは、状況への即応性を必要とする企業が、部門横断的なコラボレーションへの依存を最小限に抑えたい場合に最適です。一方、スケーリングのための効率性を必要とする企業では、中央集権的なチームがデータガバナンス、プラットフォームエンジニアリング、アーキテクチャ、データエンジニアリングといった機能をまとめ、社内の各領域に提供する方がよいかもしれません。

中央集権型は、規制の厳しい業界で、特に選ばれる傾向にあります。そして、ハブ(中心)&スポーク(拠点)型の人員配置モデルは、分散型と中央集権型、その両方のアプローチを融合したものです。ガバナンスを一元化する一方で、個々の部門のニーズや能力に合わせながら組織全体にベストプラクティスを広めることを可能にします。

クリスチャンは、以下のようにも語っています。「データ関連の人材不足への対応策として、社内のデータリテラシーの向上に努めるとともに、データ関連の業務用語集やデータカタログを準備と利用促進に努めるとよいでしょう。これにより、データの専門家ではないが、テクノロジーに明るいビジネスユーザーが自らのニーズをセルフサービスで満たせる環境(市民開発者)を整えることができます。この場合、データサイエンスの領域における組織としての役割は、データ資産そのものを標準化および統合することよりも、データ解釈のための共通の認識や枠組みを構築することにあります」

データ資産の標準化や統合はたしかに重要ですが、人材が不足する中、これだけではデータドリブンな組織文化をどうやって推進していくのかという課題に対処しきれないのです。

ただ、どのような組織やチーム体制を選択するにせよ、最も大切なことは、組織全体がデータの価値と、業務上のスマートな意思決定におけるデータの重要性とを理解し尊重する文化を築くことです。社員一人一人が、「データがどこにあるのか」「データの入手先はどこか」など、表面的な情報だけを社内で共有するのではなく、データが持つ意味やデータの価値など、ほかの社員が必要とするであろう情報を理解しながら共有できる組織作りが求められます。

外部の支援を仰ぐ

データ利活用において、外部のパートナーは、人材面のニーズについても戦術面のニーズについても有益な協力者となり得ますが、支援を求める際は焦点を絞って依頼することをお勧めします。

成果物がしっかりと定義されているマネージドサービスを契約することは、サードパーティが結果に責任を負ってくれるため、自社でスタッフを新規に採用するより望ましい場合があります。ただし、必要なスキルに対する契約だけを行うのがよいでしょう。

例えば、データサイエンスプロジェクトの約80%を成すデータ準備作業は、自社業務を知っている社内スタッフの方が迅速かつ安価に行える可能性があります。

どのような提携の形を取るにせよ、サードパーティの契約にはプロフェッショナルサービスの専門家から、自社の従業員がナレッジやノウハウを学べるようにしてください。クリスチャンも「マネージドサービスの契約には、必ず社内の人材育成につながるようにしてください。そうでなければ、窓を開けっ放しでエアコンをかけているようなものです」と語っています。

著者プロフィール

大澤 毅(おおさわ たけし) Cloudera株式会社 社長執行役員


IT業界を中心に大手独立系メーカー、大手SIer、外資系 IT企業のマネジメントや数々の新規事業の立ち上げに携わり、20年以上の豊富な経験と実績を持つ。Cloudera入社以前は、SAPジャパン株式会社 SAP Fieldglass事業本部長として、製品のローカル化、事業開発、マーケティング、営業、パートナー戦略、コンサルティング、サポートなど数多くのマネジメントを担当。2020年10月にCloudera株式会社の社長執行役員に就任。