ChatGPT for Excelが提供する6つの関数

本稿執筆時点で、ChatGPT for Excelは次の6つの関数を提供している。

  • AI.ASK("質問")
  • AI.LIST("質問")
  • AI.FILL(サンプルデータ範囲,推測してほしいデータ範囲)
  • AI.EXTRACT("元データ","抽出してほしいデータの指定")
  • AI.FORMAT(元データ,"求めるフォーマットの指定")
  • AI.TRANSLATE("元テキスト","翻訳先の言語の指定")

ChatGPT for Excelがリリースされた時は、AI.ASK()、AI.LIST()、AI.FILL()の3つの関数が提供されていた。この3つは前回に取り上げたので、今回はその後に追加されたAI.EXTRACT()、AI.FORMAT()、AI.TRANSLATE()を紹介しよう。→連載「ExcelでChatGPTを使う - ChatGPT for Excel活用術」のこれまでの回はこちらを参照

AI.EXTRACT() - 指定したデータを抽出する関数

AI.EXTRACT()は2つの引数を取る。1つ目の引数は元のデータで、2つ目の引数には1つ目の引数からどのデータを抽出するかを指定する。

例えば、次のようにAI.EXTRACT()を使ってみる。

  • AI.EXTRACT()のサンプル

    AI.EXTRACT()のサンプル

元のデータは「漢字0123456789あいうえおアイウエオ」で、抽出するデータとして「数字」を指定している。そして、次のスクリーンショットのように「0123456789」が表示されている。AI.EXTRACT()の想定通りの動きだ。

  • AI.EXTRACT()のサンプル - 数字の抽出

    AI.EXTRACT()のサンプル - 数字の抽出

前回にも述べたが、こうしたChatGPTを使う関数は必ずしも適切に動作するわけではないことを知っておく必要がある。例えば、抽出するデータに「ひらがな」を指定すると、AI.EXTRACT()の回答は次のようになる。

  • AI.EXTRACT()のサンプル - ひらがなの抽出

    AI.EXTRACT()のサンプル - ひらがなの抽出

ひらがなを指定したが、カタカナも抽出している。今度は対象としてカタカナを指定してみる。

  • AI.EXTRACT()のサンプル - カタカナの抽出

    AI.EXTRACT()のサンプル - カタカナの抽出

今度はカタカナが抽出されている。こんな感じで、誤った動作もすることを理解しておく必要がある。

AI.FORMAT() - 指定したデータを抽出する関数

AI.FORMAT()も引数を2つ取る関数だ。1つ目に対象となるデータを与え、2つ目のそのデータをどのような形式で表示するかを指定する。

次のサンプルの場合、「12.5」というデータを与え、フォーマットとして「四捨五入」を指定している。

  • AI.FORMAT() - 数字の四捨五入サンプル

    AI.FORMAT() - 数字の四捨五入サンプル

  • AI.FORMAT() - 数字の四捨五入サンプル

    AI.FORMAT() - 数字の四捨五入サンプル

結果は、次のようになる。

  • AI.FORMAT() - 数字の四捨五入サンプル

    AI.FORMAT() - 数字の四捨五入サンプル

文章で結果は十三になるといった答えが返ってきている。四捨五入はそもそもExcelが関数を提供しているので、ChatGPT for Excelで使うとすれば、標準では提供されていないような指定を行うのが本来的な使い方になる。

AI.TRANSLATE() - 指定した文章を翻訳する関数

ChatGPTは翻訳能力が優れており、指示を行うとかなり自然な翻訳を行ってくれる。この機能をExcelから使えるようにした関数がAI.TRALSLATE()だ。

AI.TRANSLATE()関数は引数を2つ取る。翻訳したい文章と、どの言語へ翻訳するかの指定だ。使い方は次のようになる。「平素より誠にお世話になっております。」を「English」に翻訳するように指示をしてみる。

  • AI.TRANSLATE() - 日本語から英語への翻訳サンプル

    AI.TRANSLATE() - 日本語から英語への翻訳サンプル

  • AI.TRANSLATE() - 日本語から英語への翻訳サンプル

    AI.TRANSLATE() - 日本語から英語への翻訳サンプル

結果は次のようになる。

  • AI.TRANSLATE() - 日本語から英語への翻訳サンプル

    AI.TRANSLATE() - 日本語から英語への翻訳サンプル

ChatGPTはさまざまな言語に対応している。翻訳は得意な分野であり、ChatGPT for Excelからの活用も期待される。

アプリケーションを変える大規模言語モデル技術

ChatGPT for Excelは、ChatGPTの機能をMicrosoft Excelから使うとしたらどんな関数が考えられるかといった実験的な側面が強い。したがって、ChatGPT for Excelを業務に利用するかと聞かれたら、現時点では未知数というのが適切な回答ではないかと思う。

しかしながら、ChatGPT for ExcelはChatGPTといった大規模言語モデル(LLM: Large Language Model)をベースとした新しいサービスを経験したりトレーニングしたりするためのよい練習台であるのは間違いのないところだ。まずは使ってみて、感覚を得ることが大切だ。そうした経験の中から実用的な使い方が見えてくる。

ChatGPTを提供するOpenAIはMicrosoftから資金提供を受けている。よって、MicrosoftはChatGPTで使われている技術にアクセスできる、または、協力してその技術を活用できる状況にあると考えるのが自然だ。実際、MicrosoftはOpenAI関連の技術をMicrosoft 365やVisual Studioといったプロダクトおよびサービスに取り込む動きを続けている。Microsoftのサービスでこうした機能がデフォルトで提供されるようになっていくことが予測される。

そのため、ChatGPT for Excelで便利な使い方はそのうちMicrosoft Excel自体が提供するようになる可能性がある。現状は、こうした未来がやってくる可能性が高いことを認識するとともに、それに向けて体験を重ねて活用方法の模索をしておくという段階にあると思う。