CDPを活用するための3STEP

CDPを活用するために必要なことは次の3Stepで行う。

1.データ収集と結合
2.データ活用
3.パーソナライズ

  • CDP活用の3STEP

今回はSTEP2のデータ活用について解説する。

CDPのデータを活用しなければただの「箱」

CDPに社内のデータを格納するだけではデータを活用しているとは言えず、ただの箱に過ぎない。各データを紐づけてデータの分析を行い、連携することで初めてアクションが可能となる。

CDPのデータ活用方法は主に3つある。

1.ディシジョニング
2.テスト
3.パーソナライズ

今回はディシジョニングとテストについて解説を行う。

ディシジョニングと製品選定のポイント

ディシジョニングとは、日本語でいえば意思決定のことである。CDPの膨大なデータを分類し、AIなどで解析を行い、ネクストアクションを決めることだ。

ディシジョニングはDMなどを送信するマーケティングだけでなく、さまざまな分野に応用が可能で、例えば新規企画や分析の意思決定にも利用することが可能だ。

ディシジョニングを行う方法はCDPの製品によって異なるが、製品の選定ポイントの一つは業界標準のDMN(Decision Model and Notation)に対応しているかどうかだ。

DMNは業務的意思決定を説明してモデル化するために、OMG (Object Management Group) が確立している規格だ。DMNはビジネスプロセスを開発してモデル化するBPMN (Business Process Model and Notation) と類似しており、SAP Signavioなどでも利用可能だ。詳細についてはOMG のサイトやBusiness Analysis Body of KnowledgeR (BABOKR Guide)を参照していただければと思う。

DMN は XMLで記述され、一度作ったDMNモデルは別なDMN 準拠の製品に移行可能である。ベンダーロックインを回避でき、また、複数のビジネスアナリスト間での共通言語としてモデルの共有を行うことも可能だ。

DMNを使ったディシジョニングの方法

DMN仕様は適合レベルが3つあり、少なくても最低限の適合レベル1では次の3つをサポートする必要がある。

1.意思決定要件ダイアグラム (DRD)
2.デシジョンロジック
3.デシジョンテーブル

DRDはフローチャートのようなダイアログを使った図になる。詳細な説明は割愛するが、デシジョン、ビジネスナレッジモデル、ナレッジソース、入力データといった要素とそれらを繋げるコネクターで構成される。例として意思決定の自動化では次のようなダイアログを作成する。

デシジョンロジックとデシジョンテーブルは実際には同時に使われ、ロジックの一つにデシジョンテーブルを使うといったことが多い。ルールを行ごとに書き、インプットとアウトプットを列に並べ、式と結果を要素(Excelでいうところのセル)に書く。

このようにディシジョニングにDMNを用いるとグラフィカルに作業を行うことができる。製品によってはこれらを直接記載することが可能となっており、WordやExcel上で図表を作成してからコードに変換する作業などは必要ない。

ビジネスアナリストがプログラミング言語で記載することなく、ローコードで作業できるのがDMNを使うメリットの一つであろう。

ディシジョニングでは、AIや機械学習の結果をロジックに組み込む場合もある。各種リソースを駆使して、リアルタイムかつ正確に一貫性のある意思決定を行うことが重要だ。

テストと最適化

ディシジョニングが正しいかどうかを確かめるためにテストが必要だ。よほど単純なことでなければ、モデリングの際に様々なパラメーターが必要となり、最適なパラメーターを調整するにはテストをするほか無い。

とある組織でうまくいった方法をそのまま別な組織で適用できるような、万能なモデルは存在しない。ディシジョニングが期待する成果となるか、何度もトライアンドエラーを繰り返すことで最適化を行う。

CDPを導入するお客様の多くは、スモールスタートで徐々にステップアップしていく方法を選ばれることが多い。

CDPでは、ウェブサイト上で簡単なA/Bテストを数時間で開始することが可能だ。バックログのアイテムをコンバージョンが上がるかどうか、手間のかからないクライアントサイドで一時的に試す。効果が確認できればサーバーサイドに移行し永続化を行い、次のバックログに仕掛かる。逆に効果が無かったり下がった場合、また別な施策を試す。この繰り返しでウェブサイトを改善していく。

  • 繰り返し実施するテストのイメージ

この一連のプロセスを支えるのに必要なCDPの機能は次の3つだ。

1.コードなしの設定でテストの実行が可能
2.ライブモニタリング
3.スマートアナリティクス

1.コードなしの設定でテストの実行が可能

A/Bテストは短期間に繰り返し実行するため、いちいちベンダーに依頼していては手間もコストもかかる。ビジネスユーザーがコードの記述なしにテストの設定や実行できる操作性が重要だ。

2.ライブモニタリング

稼働開始の瞬間からテストに関するフィードバックが即座にされること。 例えば、今日設定した結果が夜間バッチにて明日の朝にわかるというようなシステムでは、繰り返し小さく実行するアジリティが失われてしまう。

3.スマートアナリティクス

定義した目標や指標に対するテストのパフォーマンスの把握が可能であること。これは当然のことながら、実行しているテストが成功か失敗かがわからなければならい。

まとめ

CDPではIT部門がデータを引き出すのを待つのではなく、専門家ではないビジネスユーザーが豊富なセグメンテーションにアクセスし、それらの顧客洞察を各自のワークフローに反映させることができる。

ビジネスをより早く低コストで最大限の結果を出すことができる、投資対効果が高いシステムだといえるだろう。

近年のノーコードやローコードソリューションが推し進めるシチズンデベロッパー(市民デベロッパー)が活躍し、各部門のユーザーが能動的にCDPを活用する時代もそう遠くはないだろう。

著者:山本 誠樹 サイトコア セールスグループパートナーテクニカルイネーブルメントマネージャー

通信系システムや会員管理サービスの設計・開発から保守まで、システムエンジニアとして様々なプロジェクトに約20年従事。近年はクラウドにフォーカスしたコンサルティングを小売・流通・電力系など業種を問わず行う。
2013年から2021年まで8年間、Microsoft MVP for Microsoft Azureを受賞。2021年7月より現職。