CDPを活用するための3STEP

CDPを活用するために必要なことは次の3Stepで行う。

1.データ収集と結合
2.データ活用
3.パーソナライズ

  • CDP活用の3STEP

今回はSTEP3のパーソナライズについて解説する。

パーソナライズはなぜ必要か?

結論から言うと、カスタマーエクスペリエンスの向上だ。

マッキンゼーのレポートによると、2020年に米国人の約4分の3が買い物習慣を変え、40%が購入ブランドも変えていたことが明らかになった。そのスピードは2019年の2倍に上る。実際に、消費者の25%が「これまでよりもブランドを切り替える頻度が増えた」と回答しており、彼らの期待に見合う体験を求めている。

だが、企業にとっては大きな課題だ。2018年の調査によると、企業の80%が「優れたカスタマーエクスペリエンスを提供している」と回答したが、それに同意した消費者はわずか8%だった

このようにほとんどの企業がカスタマーエクスペリエンスの重要性を理解しているものの、実現できていない企業は、消費者の切り替え対象となる現実が如実に示された結果だ。

消費者に嫌われないパーソナライズとは

消費者がブランドを切り替える頻度が増えた理由として、かつてないほど消費者の目は厳しくなっており、一度不愉快な体験をすると3人に1人の顧客がブランドを利用しなくなり、複数回にわたり不愉快な体験をした場合には利用を中止する割合が92%に達した

例えば、あなたがとあるECサイトで「しょうゆ」を買った後、サイトを見るたびに永遠と「しょうゆ」がリコメンドされるのはうんざりするだろう。

実は消費者は、自分の購入履歴や閲覧履歴に関する豊富なデータを企業が持っていることを理解しており、企業がそのデータを活用してさまざまなチャネルやコンテンツでパーソナライズされた体験を提供してくれることを期待している。セールスフォース・ドットコムの「State of the Connected Customer」第5版によると、顧客の52%は常にパーソナライズされたオファーを期待しており、この割合は2019年の49%から上昇している。

プライバシーに関する懸念はあるものの、消費者の61%が「お気に入りのブランドからパーソナライズされたコンテンツ提供をしてほしい」と回答しており、56%が「より関連性の高いコンテンツ提供をしてくれるなら閲覧履歴をブランド企業と共有しても構わない」と回答している。その一方で、47%が「ほとんどの企業が自分の個人情報を自分に役立つように活用できていない」と回答している。

「ビジネスを勝ち抜くためには、一人の人間として消費者と向き合うことが極めて重要」と消費者の84%が回答しているという調査結果も出ている。

消費者は、人間としてではなく数字として扱われることに納得しない。言い換えれば、顧客は知ってもらうことを期待しているのである。彼ら一人一人に真摯に向き合ったパーソナライズが必要だと筆者は考える。

パーソナライズのポイント

デジタルエンゲージメントを高めるには、パーソナライゼーションが不可欠だ。デジタルプレゼンスにつながるあらゆる体験を、顧客や見込み客のそれぞれに合わせてカスタマイズしてく。パーソナライズのポイントは3つだ。

1.「データの断絶」の解消
2.オムニチャネル対応
3.コンテンツ活用プロセスのスピードアップ

1.「データの断絶」の解消

セールスフォース・ドットコムが先ごろ発表した「State of Marketing」レポートによると、マーケターが使用する重要なデータソースの数は、2019年の8から2021年には12へと50%増加している。しかし、そうしたデータソースのほとんどが関連付けられていない。

例えば、顧客がスマートフォンからタブレットやコンピュータに切り替えた時に顧客を追跡するタスクを取り上げてみよう。購入の67%が複数のデバイスを使用した結果によるものであるにもかかわらず、マーケターの3分の2は顧客がデバイスを切り替えたことを把握できていない。企業はこうした「データの断絶」という課題を抱えている。

「データの断絶」を解消するには、複数のことを行う必要がある。

まず、各チャネルとタッチポイントからデータを収集できなければならない。次に、そのデータを統合する必要がある。そして、データを活用できるようにするには、データを理解しなければならない。

その1つ目のステップが、顧客プロファイルをまとめることだ。顧客のWebでの行動、CRM情報、サービスチケット、モバイルアプリでの行動などを参照できる、一元管理されたものが必要だ。2つ目は、顧客のセグメンテーションを行うことだ。セグメントは1つにすることが大原則だ。

これらはCDPを導入している企業であれば、「Step1 データ収集と結合」で既にできているはずだ。

2.オムニチャネル対応

消費者は、オンラインショッピングをしたり、購入に至るまでにもオンラインチャネルを利用するなど、ますますオンラインに依存するようになっている。レコメンデーションやオファーなど、消費者のリアルタイムの興味や意向に沿って、コンテンツを動的に表示することが必要だ。まずはWebサイトから始め、それからすべてのデジタルチャネルに取り掛かろう。

オムニチャネルの重要性は、どれだけ強調しても足りない。消費者は今や平均で6つのタッチポイントを利用している。また、Webサイト、アプリ、メール、ソーシャルチャネルのどこでエンゲージするかにかかわらず、顧客や見込み客は、一貫性のあるコンテンツ、メッセージ、体験を求めている。カスタマイズされたコンテンツを使用して企業とのやり取りを支援することができる。企業はそれぞれのやり取りが顧客のインサイトの収集につながり、さらに有益なデータをもたらすというように、オムニチャネルを適切に活用することで好循環が生み出される。

上記のようなオムニチャネルでのデータの管理は最も重要な取り組みの一つになった。トレジャーデータ/MarTech Allianceによると、マーケターが今後1年での改善を求めている分野のトップ3は以下のとおりだ。

1.物理的体験とデジタルエクスペリエンスをつなぐ(50%)
2.オムニチャネルの統合マーケティングキャンペーンを展開する(37%)
3.リアルタイムで体験を提供する(35%)

  • オムニチャネルの行動とパーソナライゼーション

配信先はWebだけでなく、アプリ、メール、ソーシャルチャネルに対応できるCDPが必要だ。導入の際はAPIによって柔軟に設定できることと、自社のリソースと接続可能かの確認が必要だろう。

3.コンテンツ活用プロセスのスピードアップ

データの連携、オムニチャネルの対応ができたとしても肝心の配信するコンテンツが無ければどうしようもない。「顧客生涯価値を高める戦略的な鍵はコンテンツである」と75%以上のエグゼクティブが回答している

では、「どのようにして十分なコンテンツを作成するのか」という問いの回答の一つではないが、コンテンツのリユース、リミックス、リパーパスが極めて重要と考える。

例えば、マーケティング部門が、複数のツール、連携していないシステム、複雑なプロセスを使用していると、コラボレーションと可視性を妨げ、生産性を高めることができない。コラボレーションと可視性は緊密に関連しています。効率的なコラボレーションには、コミュニケーションやワークフローと同様に可視性が重要だ。マーケティン部門のメンバーは、現在進んでいるキャンペーンのことだけでなく、そこから導かれる成果を把握している必要がある。

この部分はCDP単体でカバーする範囲ではなく、Step1にてCDP導入プロジェクトは単なるツールとしての導入ではなく、業務フローやプロセスの見直しなど包括的な取り組みが必要と申し上げた通りだ。

まとめ

パーソナライズは単純にCDPのツールの機能の一つではなく、ビジョンをもって取り組むべき企業活動の一つだと筆者は考える。Sitecoreではカスタマーエクスペリエンスのパーソナライズ成熟度モデルを定義しており、競争力のあるパーソナライゼーション機能には8つのコア特性があると考えている。

  • 競争力のあるパーソナライゼーション機能の8つのコア特性

これら一つ一つを企業の成熟度に合わせて段階的に導入することが必要だ。

  • 顧客体験パーソナライゼーション成熟度モデル

今回ご紹介したCDP活用の3Stepではこの成熟度モデルのすべてをご紹介できてはいないが、そのエッセンスはご紹介させていただいた。少しでも皆様のお役に立てば幸いだ。

著者:山本 誠樹 サイトコア セールスグループパートナーテクニカルイネーブルメントマネージャー

通信系システムや会員管理サービスの設計・開発から保守まで、システムエンジニアとして様々なプロジェクトに約20年従事。近年はクラウドにフォーカスしたコンサルティングを小売・流通・電力系など業種を問わず行う。
2013年から2021年まで8年間、Microsoft MVP for Microsoft Azureを受賞。2021年7月より現職。