今回はオンプレミスの管理ツール「Windows Admin Center」について紹介します。同ツールは、マイクロソフトが2018年4月から無料ダウンロード提供している、HTML5ベースのWindows Server管理アプリです。
Windows Serverが標準で備える「サーバーマネージャー」や各種管理ツール、タスクマネージャー、ファイルエクスプローラー、レジストリエディター、Windows Updateの管理などの機能を備える他、PowerShell Remotingやリモートデスクトップ接続によるシェルまたはコンソールへのリモート接続を可能にします。
Windows Admin Centerとは
Windows Admin Centerは、Windows 10(バージョン1709以降)またはWindows Server 2016以降にインストールすることができ、Windows 10の場合はローカルのWebブラウザから、Windows Server 2016以降の場合はゲートウェイモードでインストールされリモートのWebブラウザから接続してローカルまたはリモートのWindows Server 2012以降(Windows Server 2008/2008 R2も限定的にサポート)およびWindows 10を管理することができます。
対応するWebブラウザは、Microsoft Edge、Google Chrome、Mozila Firefox(Firefoxはテストされていませんが使用できます)であり、Webブラウザ以外のアプリには依存しません。
Windows Admin CenterとAzureの統合
Azureには、データ保護、セキュリティ管理、システム管理といった、オンプレミスのインフラストラクチャと連携可能なさまざまなサービスがあります。例えば、オンプレミスのファイルサーバのデータをAzure Backupサービスを利用してクラウドにスケジュールバックアップしたり、Azure File Syncサービスを利用してAzureストレージと双方向に同期したりできます。
オンプレミスのHyper-V仮想マシンは、Azure Site Recoveryでクラウドにレプリケーションして保護し、オンプレミス側が利用できなくなった場合にAzure仮想マシンとして早期に復旧させることができます。
Azure Update Management(更新プログラムの管理」を利用すると、オンプレミスのWindows Serverと、Azure上のWindowsおよびLinux仮想マシンの更新プログラムを一元的に管理することができます。これらのサービスについては、この連載でも紹介してきました。
Windows Admin Centerは、Azureのサービスとの連携したオンプレミスのサーバのハイブリッド管理に対応しています。それには、Windows Admin CenterのゲートウェイをAzureに登録して、Windows Admin CenterとAzureを統合します。
これにより、Azureのサービスを標準的な手順でセットアップするよりも簡単に、ハイブリッド管理環境をセットアップできるようになります。
Azureハイブリッドサービス
Windows Admin Centerは半期に1度、新バージョンが提供され、常に最新バージョンの使用がサポートされます(新バージョンがリリースされると、旧バージョンの使用は30日後にサポートされなくなります)。
特に、Azureとの連携機能は新バージョンが提供されるごとに強化されてきました。現在、サポートされるバージョンは2019年4月リリースのバージョン1904.xです。バージョン1904.xでは、Azureの以下のサービスと統合することができます。
- Azure Backup: ファイルとフォルダー、ボリューム、システム状態のクラウドへのスケジュールバックアップ
- Azure File Sync: オンプレミスの共有フォルダーとAzureファイル共有(Fileサービス)との双方向の同期
- Azure Site Recovery: Hyper-V仮想マシンのクラウドへのレプリケーション保護
- Azureネットワークアダプター: Azureネットワークとのポイント対サイトVPN接続
- Azure Monitor: サーバーの正常性の監視と通知
- Azure Update Management: Azure AutomationによるオンプレミスのWindows ServerとAzure仮想マシンの更新管理
- Azure Security Center(近日公開予定): セキュリティの監視
またバージョン1904.xでは、新たに「Azureハイブリッドサービス」というツールが追加されています。このツールでは、利用可能な上記のサービスのセットアップを開始できるほか、セットアップ済みで利用中のサービスに対応したツールに素早くアクセスするためのエントリポイントとしても機能します。
例えば、Azure BackupやAzure Site Recoveryは、Azureポータルにアクセスすることなく、Windows Admin Centerの中だけでセットアップを完結でき、サービスの機能の一部をWindows Admin Centerの「バックアップ」や「仮想マシン」ツールから利用することができます。
Windows Admin Centerの「更新プログラム」ツールは標準で、Windows Updateの設定と、更新プログラムの検索、インストールの開始、再起動のスケジュールをサーバーごとに管理できますが、Azure Update Managementに切り替えると複数のサーバーを対象に、更新プログラムのインストールをスケジュール実行できます。
著者プロフィール
山市良
Web媒体、IT系雑誌、書籍を中心に執筆活動を行っているテクニカルフリーライター。主にマイクロソフトの製品やサービスの情報、新しいテクノロジを分かりやすく、正確に読者に伝えるとともに、利用現場で役立つ管理テクニックやトラブルシューティングを得意とする。2008年10月よりMicrosoft MVP - Cloud and Datacenter Management(旧カテゴリ: Hyper-V)を連続受賞。ブログはこちら。
主な著書・訳書
「インサイドWindows 第7版 上」(訳書、日経BP社、2018年)、「Windows Sysinternals徹底解説 改定新版」(訳書、日経BP社、2017年)、「Windows Server 2016テクノロジ入門 完全版」(日経BP社、2016年)、「Windows Server 2012 R2テクノロジ入門」(日経BP社、2014年)などがある。