これで、原型の自体はほぼ完成

まずは、前回残されたCATMANの尻尾を作りました。

次に、複製のための下準備として、完成した原型に手を入れます。原型を複製するためには、シリコンで型を作る必要があります。その型を作るためには、粘土と原型で「複製型作りのための土台」を作らなくてはなりません……。少々複雑ですが、その手順を順に説明していきたいと思います。

まずは完成したフィギュアの原型です。型取りのシリコンが食い込んでしまいそうな部分をある程度埋めます。また、原型の素材であるスカルピーは表面がボソボソしてシリコンに食いついてしまう事があるので、目止めの意味で塗料を吹き付けます。通常は「サーフェイサー」を吹いて仕上げ作業と同時に行うものです。

細部を調整する

表面処理もここで行う

いよいよ型取り作業のための、型制作の準備です。型取りを含めた複製作業を大の苦手としている私としては、失敗をお見せするには忍びなく、僕の制作チームで最も型取りの上手な中島健一さんに作業と撮影のお手伝いをお願いしました。それでは、写真と共に複製のための型作りの手順を説明していきましょう。

型作りの設計図を作成します。最初にしっかりとした設計図があると、作業がスムースに進みます。この時、原型にある芯のアルミ線などの飛び出している部分を切断しておきましょう

粘土に埋め込むラインを引きます。分かりやすくマジックで書いていますが、複製品にマジックが転写しやすいので、鉛筆の方がよいです。続いて、作業ベースを図面に従って切り出します。透明プラバンだと透けるので作業しやすいです

「ほいく粘土」で作業ベースサイズの土台を作ります。「ほいく粘土」は安価で原型にくっつき難く、数回繰り返して使えます。最初は粘土が硬いので練って均一な厚さに伸ばし、図面に従って切り出します

原型を置いて埋めるためのアタリをつけ、土台の粘土を削ります。全体に盛り削りをして、形を整えます

原型に書いた、埋め込みラインに沿って粘土を盛り整形します。毛のモールドに複製時にバリや気泡が入らないように、頭部は特に慎重に整形します

尻尾の部分も含めて。ほぼ埋め込みが終了しました

ランナー(複製の原料となるキャストを流し込む時の通り道)を作るために、バルサを粘土に配置します

この上に、シリコンを流して複製の型を作るのですが、このままではこぼれてしまいます。そこで、粘土の周囲に枠を作って、シリコンが流れ出さないようにします。枠に使うのは、模型用のブロックです。市販の玩具のブロックの方が概精度があるようですが、専用の方が結果的に安価なので、お薦めです。この時も、最初の図面が役立ちます

ブロックの枠をくみ上げて粘土を枠に密着させます

型がずれないようにするためダボ穴を作ります。下に引く板(バルサ)を切り出します

しっぽの型の方に、シリコンを流す目安を書きます。これで、複製のための型を作る準備(片面分)が終了です

これで、複製の型を作るための土台作りの前半が終了(片面分です)。次回はこの土台とシリコンを使い、複製のための型を制作していきます。

安藤賢司
バンダイ『S.I.C』シリーズなど、多数のハイエンドな玩具の原型を担当。「原型師がマスプロダクツ製品のパッケージに名前を刻まれる」という偉業を成し遂げ、「玩具原型」の認識を「作品」のレベルまで高めた。現在は『S.I.C』シリーズ最新作の原型を製作中。某ゲームのキャラクターデザインもやってます

次回、複製型制作佳境! 安藤賢司の神造形量産化計画進行中