ここまで電子回路にかかわる基本的な話をしてきました。では、いよいよ実際に作りたい回路を考え、製作し、実験してみましょう。

買ってくればやりたいことはできちゃうんだが…

電子機器ガジェット(おもちゃ)が有り余るほど出回る現在では、買ってくれば何でもやりたいことは実現できるといえます。しかし「作る歓び」と「動いたときの歓び」、そして感動は得ることができません。

この連載をお読みの読者の方は、電子回路の初心者の方が多いかと思いますが、上級レベルのプロの技術者であっても、「作る歓び」と「動いたときの歓び」を味わうために日々の大変な技術開発業務をこなし、その歓びを感じることで次の開発へ取り掛かる気持ちの原動力としている……、そんなところがあるのです。「そんなアマチュアのような……」と思われるかもしれませんが、そんな心を持つビジネスマンが本当のプロの技術者なのかもしれません。

それでは「動いたときの歓び」を得るために、一緒に一歩踏み出してみましょう。

何をつくろうか?

ということで、いろいろな電子回路を考えることはできますが、「初めての電子回路製作」という点から、図3-1-1のようなシステムを作ってみることにしました。自分の声をヘッドフォンで音として聞けるようにしてみるものです。単体では何というものでもありませんが、連載の後半でより高度な付加価値(メータを振らせてみる)をつけていきたいと思います。

図3-1-1 「初めての電子回路製作」のためのシステム図。これを作ってみましょう

製作と実験に壁をつくらない

実際に実験をしようとしても、ここまで筆者が用いてきたような安定化電源やオシロスコープなどを用意することは大変だろうと思います。そこでこの製作では、電源は乾電池(単3電池2本)を用い、オシロスコープは使用せず、テスターだけで実験を進めます。

またマイクは高価なものも多く、わざわざ実験のためにマイクを購入することも無いと思います。そこで安価なマイクモジュール(部品)を実験に用いることとします。 このように簡単に製作と実験に取り組めるようにしてみましたので、ぜひ製作してみてください。

著者:石井聡
アナログ・デバイセズ
セントラル・アプリケーションズ
アプリケーション・エンジニア
工学博士 技術士(電気電子部門)