H3ロケット3号機は6月30日、20時30分より機体移動を開始、射点に姿を現した。移動発射台「ML5」に乗った同ロケットは、VAB(大型ロケット組立棟)から第2射点(LP2)まで、約400mを30分ほどかけて移動。予定通り作業を完了した。同ロケットは、先進レーダー衛星「だいち4号」(ALOS-4)を搭載し、7月1日12時6分42秒に打ち上げられる予定。
天候の悪化により1日延期された同ロケットの打ち上げであるが、種子島の天候は回復傾向。長く続いていた雨もようやく上がり、30日は強風が残っていたものの、晴れ間ものぞいて暑い1日となった。現在の気象情報によると、打ち上げ当日以降、5日ほどは好天に恵まれる見込みだ。
ところでH3ロケットの打ち上げでは、今回が初の夜間の機体移動となった。初号機も2号機も打ち上げは午前中で、機体移動が実施されたのは前日の夕方。じつは3号機も、当初、プレスに案内されていた時刻は17時30分だったのだが、その後、3時間ほど後ろ倒しの時間に変更されていた。
機体移動と打ち上げの間隔は、初号機と2号機が約18時間だったのに対し、今回の3号機は約15時間。この違いについて、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の有田誠H3プロジェクトマネージャは、28日のプレス向けブリーフィングにて、従来長めに確保していた余裕時間を今回短くしたことを明らかにしていた。
射場での打ち上げ準備作業中に、何か小さなトラブルで時間がかかっても、打ち上げを延期しなくて済むよう、設けられているのが余裕時間だ。しかし、2号機の打ち上げや、5月末に実施した極低温点検(F-0)での作業が順調だったことから、運用機である3号機からは、H-IIAと同様の時間に戻した、ということだ。
余裕時間が短くなれば、作業者の労働時間が短くなり、負担を減らすことができる。また、規制時間が短くなるなど、地元への負担も軽くすることができる。今後、より高頻度に打ち上げていくためには、こうした配慮も重要と言えるだろう。
3号機の機体構成はこれまでの2機と同じ「H3-22S」形態であるため、外観上の違いはフェアリングの塗装くらいしかないのだが、最後に、機体移動で撮影した画像を添付しておこう。2号機の打ち上げレポートで詳細に紹介したML5の「機体把持装置」の最新の様子などもあるので、ご覧いただきたい。