2026年2月24日~3月8日に発表されたAI関連の注目すべきトピックを紹介する。GitHubは「GitHub Copilot CLI」を正式リリースした。Perplexityは新しいワークフロー自動化ツール「Perplexity Computer」を発表。Googleは軽量な生成AIモデル「Gemini 3.1 Flash-Lite」を公開した。OpenAIは応答速度重視の軽量AI「GPT-5.3 Instant」および推論能力や正確性を高めた「GPT-5.4」をリリースした。米国防総省がAnthropicを「国家安全保障に対するサプライチェーンリスク」に指定し、Anthropicはそれを受けて声明を発表した。

それぞれ詳しく見ていこう。→連載「AIトレンド最前線」のこれまでの回はこちらを参照

OpenAI、推論能力や応答の正確性を高めた「GPT-5.4」をリリース

3月5日、OpenAIはAIモデル「GPT」シリーズの最新版となる「GPT-5.4」をリリースした。GPT-5系モデルをベースに、推論能力や応答の正確性をさらに高めたアップデートであり、より複雑なタスクへの対応力と安定性が向上している。

GPT-5系モデルは、コーディング支援やツール連携、長文コンテキスト処理など、日常業務の幅広いタスクで高い性能を持つ点が大きな強みとなっている。GPTー5.4では、GPTー5.3ーCodexで培った最新技術を取り入れることで高いコーディング能力を実現したとのこと。さらに、スプレッドシートやプレゼンテーション、ドキュメントなど、各種ツールを扱う業務タスクでの性能も改善している。

GPT-5.4は、OpenAIが提供するChatGPT、Codex、またはAPIを通じて利用できる。ChatGPTとAPIでは、「GPTー5.4 Thinking」と「GPTー5.4 Pro」の2つのバリエーションが提供される。ThinkingはPlus/Team/Proプランのユーザー向け、ProはPro/Enterpriseプランのユーザー向けを想定したモデルとなる。

また、OpenAIは3月3日にGPT-5.3シリーズの一種である「GPTー5.3 Instant」もリリースしている。Instantは、リアルタイム性が求められるアプリケーション向けに、低コストと高速な応答を重視してチューニングしたモデル。前バージョンのGPT-5.2 Instantは少し説教くさい印象の回答をする傾向にあったが、5.4ではその問題が改善され、より自然な会話が可能になっている。

  • GPT-5.4とGPT-5.2のプレゼンテーション作成能力の比較 出典:OpenAI

    GPT-5.4とGPT-5.2のプレゼンテーション作成能力の比較 出典:OpenAI

Google、費用対効果に優れた軽量AIモデル「Gemini 3.1 Flash-Lite」を公開

3月3日、Googleは軽量な生成AIモデル「Gemini 3.1 Flash-Lite」を公開した。これはGemini 3 Proをベースにコストと応答速度に重点を置いてチューニングしたもの。Geminiシリーズの中でもとくにコストパフォーマンスに優れており、リアルタイム処理や大規模アプリケーションへの組み込みを想定したモデルとなっている。

ベンチマークでは、長文テキストの扱いや多言語Q&Aなどのタスクで顕著に高い処理効率を示しており、チャットボットや自動応答、データ処理など、応答速度が求められる用途での活用が期待できる。開発者はGemini APIおよびGoogle AI Studioを通じてGemini 3.1 Flash-Liteを利用できる。また、企業ユーザーはVertex AIでも利用可能となっている。

  • Gemini 3.1 Flash-Liteと他の類似モデルの比較 出典:Google

    Gemini 3.1 Flash-Liteと他の類似モデルの比較 出典:Google

米国防総省がAnthropicを「サプライチェーンリスク」に指定

3月5日、Anthropicは米国防総省から「国家安全保障に対するサプライチェーンリスク」として指定するという通知を正式に受け取ったと発表した。米政府による「サプライチェーンリスク」への指定とは、特定の企業や技術が国家安全保障に影響を与える可能性がある場合に行われるもの。指定された企業が特別な制裁を受けるわけではないが、政府による調達に制限が課される可能性がある。端的に言えば、米政府機関がAnthropicの製品やサービスを採用の対象から外すということだ。

背景には、AnthropicのAIサービス「Claude」の軍事利用を巡る対立がある。同社は、米軍や情報機関向けのAIサービスの提供を進めてきたが、国内監視や完全自律型兵器への利用に対しては一貫して制限を設ける方針を取っていた。一方、米国防総省は国内のAI企業に対して、軍事用途を含めて幅広くAIを利用できるように求めている。その結果、Anthropicと国防総省の交渉は決裂し、今回のサプライチェーンリスクへの指定につながった。

こうした状況を受け、Anthropicは声明の中で、国家安全保障コミュニティへの技術提供を一定期間継続し、円滑な移行を支援する姿勢を示している。AIの軍事利用を巡る倫理と安全保障のバランスは、生成AI時代の重要な課題であり、今回の対立はAI企業と政府の関係を巡る象徴的な事例として注目されている。

  • 米国防総省によるサプライチェーンリスクへの指定を受けてのAnthropicの声明

    米国防総省によるサプライチェーンリスクへの指定を受けてのAnthropicの声明

ターミナル向けコーディングエージェント「GitHub Copilot CLI」が正式リリースへ

2月25日、GitHubはターミナルで動作するAIコーディングエージェントの「GitHub Copilot CLI」を正式にリリースした。2025年9月よりパブリックプレビューとして公開していたもので、今回の正式リリースにより、有料プラン(Pro・Pro+・Business・Enterprise)に加入するGitHub Copilotユーザーが利用可能となる。

Copilot CLIは単なるコード補完ツールではなく、コマンドライン環境を離れることなく計画立案、コーディング、レビュー、テストといった複雑な開発タスクをこなす自律型エージェントだ。 実装計画を事前に提示してユーザーの確認を待つ「Planモード」と、一連の作業を自動でこなす「Autopilotモード」の2つの動作形式を備えており、どの程度の自律性を持たせるかを開発者自身が選択できる設計となっている。

利用するAIモデルの選択肢が豊富な点も大きな強みで、Anthropic、OpenAI、Googleの最新モデルもサポートする。セッションの途中でもモデルの切り替えが可能なため、タスクに応じて最適なモデルを選ぶことができる。また、GitHubのMCPサーバーやカスタムサーバーを通じて独自ツールやワークフローへの拡張にも対応している。

  • GitHubが「GitHub Copilot CLI」を正式リリース

    GitHubが「GitHub Copilot CLI」を正式リリース

ワークフロー自動化ツール「Perplexity Computer」リリース

2月25日、PerplexityはAIエージェントによる新しいワークフロー自動化ツール「Perplexity Computer」を発表した。これは、ユーザーの指示に応じて複数のAIモデルを連携させ、情報の検索や情報整理などといった作業を自動で実行できるというもの。

最大の特徴は、用途に応じて最大19種類のAIモデルを組み合わせて処理を行う点にある。ユーザーの指示をもとにタスクを分解し、調査、要約、データ整理などの工程を段階的に実行することで、複雑なワークフローの自動化にも対応できる。これにより、単発の質問応答にとどまらない高度な作業支援が可能になる。

Perplexityは、Perplexity Computerを通じて、従来の検索型AIを発展させ、より複雑なタスクを実行する新しいAI体験を提供することを目指しているという。Perplexity Computerは現在、Perplexity Maxに加入しているユーザーが利用できる。まもなく、Enterprise Maxユーザーへの提供も開始する予定とのことだ。