今回は、最近になって喫緊の課題にのし上がったドローン対策、すなわちC-UAS(Counter Unmanned Aircraft System)に関連する話題をひとつ、取り上げてみたい。そもそも目標を見つけ出さなければ始まらない、という話である。→連載「航空機の技術とメカニズムの裏側」のこれまでの回はこちらを参照

  • 米中央軍は2025年12月、スコーピオン攻撃任務部隊(Task Force Scorpion Strike、TFSS)」の編成と「低コスト無人戦闘攻撃システム(Low-cost Unmanned Combat Attack Systems、LUCAS=ルーカス)」配備を発表した 写真:U.S. Central Command

    米中央軍は2025年12月、スコーピオン攻撃任務部隊(Task Force Scorpion Strike、TFSS)」の編成と「低コスト無人戦闘攻撃システム(Low-cost Unmanned Combat Attack Systems、LUCAS=ルーカス)」配備を発表した 写真:U.S. Central Command

高価な脅威と安価な脅威

イラクがスカッド・ミサイルをイスラエルやサウジアラビアに向けて撃ち込んだ1991年の湾岸戦争、あるいはその後の弾道ミサイル開発に際して、「安いミサイルを迎え撃つのに高価な迎撃システムを整備しなければならない」という、非対称性の問題が提示された。

実は、最近の経空脅威への対処に際しても、同じような問題がある。戦闘機や爆撃機といった「高価で高機能で高性能な脅威」だけでなく、ロシアがウクライナに向けて大量に放っているイラン製自爆無人機みたいな「安価で性能は大したことないが、とにかく数が多い脅威」が現出しているためだ。

安いイラン製の自爆無人機を迎え撃つために、いちいち値の張るパトリオットを撃っていたら不経済極まりない。迎え撃つ側も、できるだけ安価なエフェクター(交戦手段)を用意しないと、武力で押し負けるより先に、おカネの面で押し負けてしまう。

安価なエフェクターというと、具体的には空中炸裂弾を撃つ機関砲やレーザー兵器といったものが考えられる。電力で動作するレーザーなら、1回の“射撃”に要する経費は知れているし、機関砲弾はそれより高価だがミサイルよりは安い。

ただ、そういったエフェクターを用意するだけの話では終わらない。空域全体の状況を一元的に俯瞰して、捕捉追尾しているさまざまな飛行物体について、それぞれが何者なのかを把握しなければならない。それができなければ、適切な武器割当は成立しない。

その手段として、飛行プロファイル、つまり「飛び方」の違いが手掛かりにならないだろうか。という考えから、この話を筆者の別連載「軍事とIT」ではなく「航空機の技術」で取り上げることにした。

脅威の種類ごとに飛行プロファイルが異なる

空中を飛んでいる物体を探知・捕捉・追尾する手段といえば、まずはレーダーが挙げられる。しかし、レーダーは探知目標を「電波を反射する点」として捉えることしかできないから、基本的には位置、針路、高度、速力しか分からない。

それから、C-UASの分野では電子光学/赤外線(EO/IR : Electro-Optical/Infrared)センサー。こちらは対象物を「映像」として捉えられるので、対象が何者なのかを識別する役に立つ。

さらに、電波を逆探知するESM(Electronic Support Measures)を併用することもある。無人機を飛ばすための遠隔制御、あるいは無人機が搭載するセンサーから情報を送るには、無線通信が不可欠だ。それなら、その電波を逆探知できるのではないかという話である。

では、脅威の側はどうか。もちろん、目の前に並べて外見を比較すれば区別はつくが、それでは実戦の役に立たない。センサーが探知して、そこで得られる情報だけを頼りにして、対象が何者なのかを知りたい。

戦闘機は飛行速度が速いが、安い無人機はたいして速くない。また、パイロットが操る戦闘機は自らの身を護るために、針路・高度・速力を頻繁に変えることもある。妨害電波を出したりチャフを撒いたりすることもあるし、それはレーダーに影響する。

ところが、片道切符の安い自爆無人機は速度が遅い。そしておそらく、それほど手の込んだ制御システムは持っていないだろうから、発射の際に指定された目標に向けて真っすぐ飛んでいく可能性が高い。といっても、途中に変針点を設定するぐらいのことはあろうが。

また、安さが身上だから、電子戦装置とかチャフとかいった仕掛けは持っていないだろう。

弾道ミサイルや地対地ロケットの類は弾道飛行を行うだけだから、いわゆる航空機とは飛行プロファイルが大きく異なる。これはわかりやすいが、C-UASとは領域が違うので措いておく。

問題はヘリコプターで、速度が比較的遅いところは無人機と似ていなくもない。ただ、まっすぐ飛ぶか、針路を頻繁に変えるか、ぐらいの違いはあり得よう。また、ヘリコプターは一般的に飛行する高度が低いから、そのことが手掛かりのひとつになるかもしれない。

飛行プロファイルの違いで対象の正体を判別できないか

するとどうなるか。

レーダーで探知した個々の目標について、連続的に追尾して飛行プロファイルを調べることで、それが戦闘機なのか、自爆無人機なのか、といった区別をつけることはできないか。

距離が近くなればEO/IRセンサーを援用できるかもしれないし、探知目標が電波を出していればESMの情報を重畳する手も考えられよう。複数のセンサーで得た情報を別々に表示したのでは使い物にならないから、重畳表示したい。

そして、戦闘機には高性能の地対空ミサイルを、安い自爆無人機にはそれなりに安い別の迎撃手段を割り当てることができれば、C-UASにおける「経済性と脅威の排除の両立」につながる可能性が出てくる。

すると、平素からさまざまなトラフィックを監視・学習して飛行パターンを学び取った人工知能(AI : Artificial Intelligence)を識別に活用する、とかいう話につながるやもしれない。

著者プロフィール

井上孝司


鉄道・航空といった各種交通機関や軍事分野で、技術分野を中心とする著述活動を展開中のテクニカルライター。
マイクロソフト株式会社を経て1999年春に独立。『戦うコンピュータ(V)3』(潮書房光人社)のように情報通信技術を切口にする展開に加えて、さまざまな分野の記事を手掛ける。マイナビニュースに加えて『軍事研究』『丸』『Jwings』『航空ファン』『世界の艦船』『新幹線EX』などにも寄稿している。このほど、姉妹連載「軍事とIT」の単行本第3弾『無人兵器』が刊行された。