無人戦闘用機といえどもレッキとした飛行機であるから、何かしらの動力源は必要である。航続性能、あるいは扱いやすさを重視する偵察用の無人機では、ターボプロップ・エンジンやガソリン・エンジンでプロペラを回す機体が多く、小型機になるとバッテリで電動機を駆動する機体が増える。しかし戦闘用となると、それでは速度が遅すぎて仕事にならない。→連載「航空機の技術とメカニズムの裏側」のこれまでの回はこちらを参照
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米空軍が計画を進めている無人戦闘用機(CCA : Collaborative Combat Aircraft)、手前がGA-ASI製のYFQ-42、奥がアンドゥリル製のYFQ-44 引用 : USAF
ジェットエンジンが欲しいが、条件がある
よって、無人戦闘用機ではジェット・エンジンが必要になるが、そこではいろいろと条件がついて回る。もちろん、必要な飛行性能を発揮できるだけの推力があることは当然だが、それだけではない。
筆者がいつも繰り返しているように、無人機は「墜とされても諦めがつく」ものでなければならない。それだからこそ、危険な現場に躊躇なく、惜しげもなく投入できる。高価で貴重な機体になったら、そうは行かない。
すると、機体を安価にまとめるためには、構成部品のひとつであるエンジンも、できるだけ安価に済ませたい。そこでエンジンを新規開発すれば、経費とリスクが増大する可能性がある。よって、すでに実績がある、既製品のエンジンを使えれば、それに越したことはない。
その既製品は、すでに軍民で多用されているようなエンジンが望ましい。それは最初の調達だけでなく、その後の整備・維持管理に関わるコストにもプラスの影響をもたらす。インストールベースが多いエンジンは、スペアパーツの入手性も良いと期待できる。
次に、信頼性。有人機と違って無人機には人が乗っていないのだから、飛び立った後で何らかの不具合が起きると困ったことになる。有人機なら搭乗員が何らかの対処を行う余地があるが、無人機ではどうか。信頼性という観点からすると、すでに実績があり、熟成されている既製品のエンジンを使うことのメリットは大きい。
ハネウェル、F124エンジンを日本に提案
さて。ハネウェル・インターナショナルが2025年5月28日に、日本向けにF124エンジンを提案することを明らかにした。用途は2種類で、ひとつは航空自衛隊の次期練習機(機種未定)、もうひとつは無人戦闘用機である。
F124というとなじみが薄いかもしれないが、アエロ・ボドホディのL-159高等練習機/軽攻撃機、レオナルドM-346マスター高等練習機、台湾のT-5雄鷹練習機で使われているターボファン・エンジンだ。無人機の分野でも、かつてボーイングが製作した無人戦闘用機のデモンストレーター、X-45AでF124-GA-100エンジンを使用したことがある。
また、再燃焼装置を追加したF125というモデルもあり、台湾のIDF(Indigenous Defense Fighter)こと経国が搭載している。さらに、インド空軍に対してジャギュアのエンジン換装用に提案したこともある。
軍用だけでもこのように採用実績がいろいろあるが、実はこのエンジン、民間のビジネスジェット機向けとしてTFE731という名称で販売されているエンジンがベースになっている。そちらの搭載機は、ゲーツ・リアジェット31やセスナ・サイテーションIIIなどがある。
構造は2スプール(低圧と高圧で構成)の低バイパス比ターボファン・エンジンだが、面白いのは高圧圧縮機に遠心圧縮機と軸流圧縮機を組み合わせていること。普通、この手のエンジンは軸流式で揃えるものである。
ともあれ、すでに多くの採用実績とインストールベースがあるエンジンだから、先に挙げた要件を満たしたエンジンであるといって差し支えないだろう。
では、他の無人戦闘用機はどうしているか?
といっていたら、無人標的機に加えて、無人戦闘用機の研究開発プログラムにも関わっているクラトス・ディフェンス&セキュリティ・ソリューションズが、GEエアロスペースと合同チームを編成することになった、との発表が2025年6月3日にあった。
具体的なエンジンの機種・内容については「両社でGEK800エンジンを開発する」としており、実績あるエンジンを活用するハネウェルとは真逆のアプローチになった。搭載対象として「CCAタイプの機体」つまり、いわゆる “忠実な僚機” に分類される無人戦闘用機を挙げている。
新規開発すると、RDT&E(Research, Development, Test and Evaluation。研究開発・試験・評価)の経費、さらに生産ラインを立ち上げるための経費が、みんなエンジンの価格に上積みされてコストを押し上げてしまう。それに、予備品プールも改めて構築しなければならない。
しかし、新規開発するエンジンを受容可能なコストでまとめることができた場合には、用途に最適化したエンジンを生み出せる可能性があるともいえる。そのためには、できるだけ簡素な設計、特別な素材を使わない設計を追求したいところだろう。
また、プラット&ホイットニーも2025年9月22日に、CCAなどでの利用を想定した、推力500~1,800ポンド級のエンジンを開発していることを明らかにしている。
では、米空軍のCCA計画で候補になっている2機種はどうしているか。
アンドゥリルのフューリーことYFQ-44は、ウィリアムズFJ44-M(推力4,000lb)を使用しており、これはビーチクラフトのプレミア、セスナのサイテーション、バイパーのバイパージェット、サーブ105などの機体で導入実績がある製品。
ゼネラル・アトミックス・エアロノーティカル・システムズ(GA-ASI)のYFQ-42については、エンジンの機種は明らかになっていないようだ。その辺の事情は、ボーイング・ディフェンス・オーストラリアのMQ-28ゴースト・バットも同じ。
とはいえ、情報が明らかになっている事例をいくつか見ただけでも、「実績があって安価にできそうな既存エンジン」と「用途に最適なエンジンの新規開発」という2種類のアプローチがあるわけで、どちらが良い結果につながるか、興味深いところではある。
著者プロフィール
井上孝司
鉄道・航空といった各種交通機関や軍事分野で、技術分野を中心とする著述活動を展開中のテクニカルライター。
マイクロソフト株式会社を経て1999年春に独立。『戦うコンピュータ(V)3』(潮書房光人社)のように情報通信技術を切口にする展開に加えて、さまざまな分野の記事を手掛ける。マイナ4ビニュースに加えて『軍事研究』『丸』『Jwings』『航空ファン』『世界の艦船』『新幹線EX』などにも寄稿している。このほど、姉妹連載「軍事とIT」の単行本第6弾『軍用通信 (わかりやすい防衛テクノロジー)』が刊行された。

