まず、第517回の記事に関する訂正。実はMQ-28Aゴースト・バットよりも先に、米海軍のUCLASS(Unmanned Carrier-launched Airborne Surveillance and Strike)計画において「有人戦闘機に随伴する無人戦闘用機」という構想が出ていたので、MQ-28が初出というわけではなかった、と訂正したい。

ただしUCLASS計画は議論百出・百家争鳴・喧々囂々のスッタモンダを経て流産したので、実機が出てきたのはMQ-28が最初である。さて。→連載「航空機の技術とメカニズムの裏側」のこれまでの回はこちらを参照

  • MQ-28ゴースト・バット。ステルス設計ではあるが、有人のステルス戦闘機とは違う割り切りも垣間見える Photo : Royal Australian Air Force

    MQ-28ゴースト・バット。ステルス設計ではあるが、有人のステルス戦闘機とは違う割り切りも垣間見える Photo : Royal Australian Air Force

簡素化できるところは簡素に

この、有人戦闘機に随伴して危険な任務を引き受ける、いわゆる “忠実な僚機”についていろいろ書いてきた。その続きとして、「航空機のメカニズム」という観点から、無人機に求められる大事な性能をいかにして実現するか、について書いてみようというのが今回のお題である。

“忠実な僚機”は、有人戦闘機に随伴して危険な任務を引き受ける機体。となると当然のことながら、敵が対空ミサイルや対空砲火を用意して待ち構えているところに突っ込んで行くはずである。

そんな危険な任務を引き受けさせれば、撃ち落とされる可能性も高くなる。撃ち落とされても人命の損耗がない利点があるからこそ無人化を追求するのだが、「墜とされずに済ませたいけど、墜とされても諦めがつく」ぐらいが落としどころとなろう。

すると、必要な性能・機能・能力を持たせつつ、いかにして安価に作るかが最大の課題になる。ステルス設計や武装化など、機体のお値段を吊り上げる要素に事欠かない中で、コスト低減も追求しなければならない。

ウェポン・システムの業界では、最初は割り切りよくシンプルなものを生み出すことができても、使っているうちにいろいろと欲が出てきて、肥大化したり重くなったり値段が高くなったりする。そのループに、どこかで歯止めを設けなければならない。

生残性を高めようとすれば、敵の状況認識を妨げるためにステルス設計にするとか、自衛用電子戦システムを載せるとかいう話も出てくる。ところがいずれも、コストを押し上げる要素であるし、秘匿性が高い分野でもある。「墜とされるのが前提」「墜とされても諦めがつく機体」という前提とは相性が良くない。

また、ステルス性の確保を考えると機内兵器倉は不可欠。ここはおそらく譲れない要素となろう。機体を大きくする原因になるが、他の方法で身を護るのが難しければ、せめて隠密性は高めてやりたい。

と考えてみると、おカネと手間をかけるところとそうでないところのメリハリ・割り切りが、有人機以上に求められる分野といえるのではないか。極端なことをいえば、見た目の格好良さなど、どうでもよろしい。

ステルス性を持たせつつもシンプルに

そこで、例えばBATS改めMQ-28ゴースト・バットの写真を見ると、降着装置収納部の扉に、簡素化の例を見ることができる。有人のステルス戦闘機やステルス爆撃機では、こうした開口部は縁をギザギザにしてレーダー電波の反射低減を図るのが通例だが、MQ-28はシンプルな直線で済ませている。

  • F-22ラプター。機内兵器倉の前縁部をギザギザにするなど、複雑なパネル割りが目につく。当然ながら設計も製造も手間がかかる 撮影:井上孝司

    F-22ラプター。機内兵器倉の前縁部をギザギザにするなど、複雑なパネル割りが目につく。当然ながら設計も製造も手間がかかる 撮影:井上孝司

機体のラインも全体的に直線基調で、F-35みたいに複雑な曲線は避けられている。搭載するエンジンや各種機器、もしかすると降着装置など、使えるところはできるだけ既製品を活用するよう求められる可能性も高い。

なぜ既製品を使うかといえば、すでに実績がある既製品なら開発・試験にかかる手間が少なくなると期待できる上に、部品の品番を増やさずにすむからだ。既存の機体と同じパーツやコンポーネントを使えるのであれば、予備品の在庫も共通化できる。

これはなにも無人戦闘用機の分野に限らず、有人機でも行われている手法である。ことに一品モノの実証機では、既存の機体のパーツを流用する方が安く上がる。安く済ませる方がありがたいのは“忠実な僚機”も同じことだ。

そうなると、形状をシンプルにするとか、高価な素材・加工に手間と費用がかかる素材の使用を避けるとかいう話も出てくる。さらに深度化すると、左右で同じ部材を使うことを検討するとかいう話も出てこよう。主翼を左右で同じにするのは難しいかも知れないが、尾翼ならまだ可能性がある。

飛行性能の面でも、“忠実な僚機”は、たいてい亜音速機で済ませているようだ。再燃焼装置を使用すれば、エンジンの価格は上がり、燃料消費は急増して航続距離が短くなってしまう。それを避けようとして燃料をたくさん積むと、機体が大きく、重くなり、それがまた強力なエンジンを求める原因を作る。

そもそも有人機の分野でも、(超音速旅客機のコンコルドは別として)超音速で巡航する機体はごくごく限られている。この辺も、他の分野と同様に “忠実な僚機” において割り切りが求められる部分であろう。

交換可能な設計

また、“忠実な僚機”に限らず無人機全般にいえることだが、モジュール化した設計、個々の構成要素を個別に交換しやすくする設計も不可欠なものとなる。これは、任務様態に合わせてセンサーや兵装を使い分ける可能性があるからだ。

これは、有人の戦闘機ではあまり聞かない種類の話。非ステルスの有人機なら、兵装やセンサーをポッド化して交換可能にすれば済むが、ステルス設計の無人機では違う発想が求められる。

なんだったら、機器単位で交換するのではなく、中味が異なる機首を何種類か用意しておいて、任務様態に合わせてまるごと取り替えるぐらいの方が良いかも知れない。実際、以前に書いたように、MQ-28ではそういう発想を取り入れている。

それに、こうした「交換可能な設計」は、損傷しながらも帰ってきた機体を修理して再び飛ばせるようにする場面、あるいは新しいセンサーや兵装を組み込んで能力向上を図る場面でも効いてくる。

すると、ミサイルで一般的に行われているように、部位ごとに機能分担を明確化して、取り替えが効きやすいように設計する必要があろう。トマホーク巡航ミサイルを見ると、先頭から順に「誘導」「弾頭」「主翼と燃料タンク」「エンジンと操縦」とモジュール化されているが、そういう考え方である。

著者プロフィール

井上孝司


鉄道・航空といった各種交通機関や軍事分野で、技術分野を中心とする著述活動を展開中のテクニカルライター。
マイクロソフト株式会社を経て1999年春に独立。『戦うコンピュータ(V)3』(潮書房光人社)のように情報通信技術を切口にする展開に加えて、さまざまな分野の記事を手掛ける。マイナ4ビニュースに加えて『軍事研究』『丸』『Jwings』『航空ファン』『世界の艦船』『新幹線EX』などにも寄稿している。このほど、姉妹連載「軍事とIT」の単行本第6弾『軍用通信 (わかりやすい防衛テクノロジー)』が刊行された。