これまで5回にわたり、新幹線やクルマなどに活用されている身近な航空関連技術についてお伝えしてきた。第6回となる今回のお題は、グラスコックピット化。ただしこれは、「航空関連技術」というよりも「航空機における手法の拡散」という方が正しそうではある。→連載「航空機の技術とメカニズムの裏側」のこれまでの回はこちらを参照。
航空機におけるグラスコックピット化と、その利点
航空機のコックピットがグラスコックピット化するようになって、もう久しい。量産される旅客機だとボーイング767、戦闘機だとF/A-18A/Bホーネットあたりが、グラスコックピット化した機体を大々的に量産した初期の事例といえるのではないだろうか。
当初は主要計器のCRT化ぐらいだったが、対象がどんどん広がり、画面のサイズが大きくなり、そこに表示する情報の種類も増えた。入れ替わりに、機械式計器の数がどんどん減った。スタンバイ計器だけ機械式計器を残す形を経て、最近ではスタンバイ計器までグラスコックピット化(メインとは別に小さなディスプレイを設ける)する事例が増えている。
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機械式のアナログ計器を主体とする計器盤の例、米空軍のHH-60Gペイブホーク救難ヘリ。ただしこの機体の場合、暗視ゴーグル(NVG : Night Vision Goggle)を使用する関係で機械式計器のほうが具合が良い、という事情がある 写真:井上孝司
デバイスの面では、奥行きが大きい上に電力消費が多く、発熱もしやすいCRTから、アクティブマトリックス液晶ディスプレイに切り替わった。それだけならパソコンのディスプレイも同じだが、航空機用で独特であるのは、バックライトの光量可変範囲が極めて広いこと。夜間飛行での使用を想定した結果である。