「Vtuber」という存在を知っているだろうか。Vtuberとは、「Virtual Youtuber(バーチャル ユーチューバー)」の略で、仮想のキャラクターを利用して、人間の動きをモーションキャプチャで反映させた動画や配信映像をYouTubeに投稿している人のことを指す。
近年、盛り上がりを見せるVtuber業界だが、そこに企業の名前を背負い参入する「企業公式Vtuber」が登場している。
本連載では、会社の顔としてVtuberを導入している企業の担当者に話を伺い、その誕生秘話や担当者の想いに迫る。 第1回となる今回取り上げるのは、キャラクタービジネスのリードカンパニーであるサンリオの公式Vtuber「なつめれんげ」。担当者であるN氏に話を聞いた。
「なつめれんげ」はどんなVtuber?
なつめれんげは、サンリオの事業戦略本部に所属する若手社員として、サンリオの新しい商品情報や社員・デザイナー・キャラクターなどとの対談を行うなど、「サンリオ社員とサンリオファンがつながる場所」として活動している。2021年10月11日に誕生しており、公開日である本日にちょうど1周年を迎えた。
このなつめれんげの最大の特徴は「サンリオの本当の社員が中の人を担当している」だろう。「中の人」とは、Vtuber業界の言葉で「キャラクターを演じている人」のことを指す。つまり、なつめれんげは本当に日々サンリオで働いている社員なのだ。
「なつめれんげは『サンリオ社員の生の声を届ける』ことに重きを置いた存在です。実際の社員が動画投稿や配信を行うことによって、リアルで説得力のある存在になれているのではないかと思います」(N氏)
実際に社員の声で発信していることもあって、信ぴょう性も高く、ファンが楽しんで聴けるコンテンツになっているようだ。
ファンが嬉しい「サンリオらしさ」全開のコンテンツ
上記でも紹介したが、なつめれんげは主な活動内容として「サンリオの情報発信」を設定しており、サンリオの新しい商品情報や社員・デザイナー・キャラクターなどとの対談を行っている。
具体的には、サンリオの人気キャラクターであるシナモロールの担当デザイナーとの対談動画や喫茶サンリオ(レトロな雰囲気の喫茶店をモチーフにしたマスコットホルダーなどを展開しているシリーズ)の担当プランナーである社員との対談、サンリオの最新情報の徹底解説など、サンリオのキャラクターやコンテンツを最大限に生かした内容となっている。
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「視聴者層は、男女関係なくサンリオのコアなファンの方が多い印象です。そのため、サンリオを深く愛してくださる方が楽しんでいただけるようにキャラクターや商品、イベントの最新情報や秘話を多く発信しています」(N氏)
しかし、その一方で、Vtuber業界では定番となっている「歌ってみた動画」や「ゲーム配信」といったコンテンツも今後強化していきたいという。
この考えの根底には、なつめれんげの誕生のきっかけにもなった、サンリオの「サンリオ社員こそエンターテイメントであれ」という社風が関わっているという。
「サンリオファンではない場合、キャラクターの名前も知らないという人も多いかもしれません。そのような方々にサンリオのファンになっていただくためには、まず、『Vtuber なつめれんげ』を好きになってもらうことがスタートだと思っています」(N氏)
またその活躍は配信活動だけにとどまらず、サンリオが実施したイベントキャラクター大賞のMCとして登場するなど、社内外で幅広い活動を見せているようだ。
信念は「社員が愛を持って発信する」こと
バーチャルユーチューバーという名の通り、基本の活動がYouTubeに集中するVtuber。しかし、なつめれんげはその他のSNSでの活動も盛んに行っている。
Twitterでは、「なつめれんげ@株式会社サンリオ社員」という名前で、サンリオの情報や日常で感じたことを発信している。またTwitterを効果測定の場としても利用しているそうで、視聴者の率直な感想や意見を発信してもらい、今後もサンリオの可能性をVtuberとして広げていくためにその言葉と向き合っているという。
最後に、今後社内でVtuberを導入するか検討している企業の担当者に向けて、企業系Vtuberの先輩としてアドバイスをいただいた。
「僕は社員がVtuberをやっていることに意義があると思います。実際に日々感じていることや、本当におすすめしたいと思った商品を社員目線で紹介することで、ファンの方にも納得していただけると思います。『愛を持って会社の情報を発信できること』こそがVtuberを企業の顔として活用する最大のメリットであり、魅力だと思っています」(N氏)