「Vtuber」という存在を知っているだろうか。Vtuberとは、「Virtual Youtuber(バーチャル ユーチューバー)」の略で、仮想のキャラクターを利用して、人間の動きをモーションキャプチャで反映させた動画や配信映像をYouTubeに投稿している人のことを指す。

近年、盛り上がりを見せるVtuber業界だが、そこに企業の名前を背負い参入する「企業公式Vtuber」が登場している。

本連載では、会社の顔としてVtuberを導入している企業の担当者に話を伺い、その誕生秘話や担当者の想いに迫る。

第3回となる今回取り上げるのは、日本の目薬シェアのトップランナーであるロート製薬の公式Vtuber「根羽清ココロ」。担当者でもあり同僚でもあるさとちぃ氏に話を聞いた。

  • 根羽清ココロ

「根羽清ココロ」はどんなVtuber?

2018年6月10日「健康宣言日」である「ロートの日」に誕生した根羽清ココロは、ロート製薬のスキンケア製品開発部兼広報・CSV推進部の社員として、ロート製薬の魅力を広く伝えるために活動しているロート製薬の公式Vtuberだ。

名前には、CI(コーポレート・アイデンティティ)である「NEVER SAY NEVER」というロート製薬に流れるDNAを表す言葉が起用されており、まさに会社の顔ともいえる存在だ。

「根羽清ココロは、スキンケア製品開発部と広報・CSV推進部を掛け持ちしていますが、実際にロート製薬では社員の部署の兼務が許可されています。また、副業という扱いでYouTuberをしていますが、これもロート製薬の副業が可能というルールに則ったものです。このような自由な働き方ができるという魅力も根羽清ココロは示しています」(さとちぃ氏)

  • 今回話を聞いたさとちぃ氏のイメージ

実際に根羽清ココロが社員であるという証に名刺も作られており、話を伺ったさとちぃ氏やほかの社員の方と同じデザインの名刺に「スキンケア製品開発部 兼 広報・CSV推進部」との肩書きが記載されている。

  • 根羽清ココロの名刺。本物の社員の名刺と同じデザインになっている

また、YouTubeチャンネルには、根羽清ココロの弟である「根羽清オト」が度々登場したり、「ねばっしー」というロート製薬本社にあった池で生まれたキャラクターが登場したりと、さまざまなキャラクターが登場してチャンネルを盛り上げている。

魅力は「親近感」と「カリスマ性」

根羽清ココロの主な投稿内容としてはゲーム配信や歌ってみた動画、クイズ企画など一般的なVtuberと近しい活動を行っている。

加えて、ロート製薬の社員だからこそできる企画も数多く行っており、「製薬会社あるある」や「スキンケアお悩み相談」、「ドライアイチェック」など、製薬会社だからこそ発信できる内容も魅力的だ。

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このような投稿を行っている根羽清ココロだが、ファンに愛される理由は「親近感」だという。

「根羽清ココロは、ファンの方たちに親近感を持って接してもらえる存在だと思っています。動画の中でも時々、関西弁を使って話していたり、少しポンコツな失敗をしたり、ロート製薬の会長になりたいという野望を語ったり……と、企業公式Vtuberでありながら親しみを感じる性格に、多くの方が魅力を感じてくださっているのだと思います」(さとちぃ氏)

  • 普段の活動の様子。左側に座っているのが弟である根羽清オト

しかし、その一方で筆者は取材しながら根羽清ココロの「カリスマ性」を感じていた。その最たるものが、2022年3月19日に開催された「企業系V人狼2022」だろう。

「企業系V人狼2022」は、根羽清ココロが主催した、企業公式Vtuberだけが参加する人狼ゲーム(市民側と人狼側に分かれて、市民側に扮して人間を滅ぼそうとする人狼を会話の中で推理し処刑することで平和を守るゲーム)の大会だ。

参加者には、本連載の第1回に登場したサンリオの「なつめれんげ」をはじめ、さまざまな企業の公式Vtuberである7名が参加した。それを取りまとめていたのが根羽清ココロなのだ。

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このように、根羽清ココロはファンが応援したくなる「親近感」と企業系Vtuberとして企業を背負って立つ「カリスマ性」を持ち合わせている不思議な魅力を持つ存在だ。

「Vtuber」という言葉が存在しない時期に誕生した根羽清ココロ

根羽清ココロは、前述した通り、2018年にデビューしたVtuberだ。その時を振り返って、さとちぃ氏は以下のように語った。

「根羽清ココロが誕生した時、世の中にはまだ『Vtuber』という言葉はありませんでした。その中で、企業としてVtuberに広報活動を担ってもらうことには不安もありました。しかし、『新しいことはやってみよう』という会社の方針の下、デビューするに至りました」(さとちぃ氏)

このような状態でデビューした根羽清ココロだが、今では社員のほぼ全員が根羽清ココロの存在を認知しており、新卒で入社した社員から「根羽清ココロのYouTube見ていました」と声を掛けられることもあるという。

最後に、今後社内でVtuberを導入するか検討している企業の担当者に向けて、企業系Vtuberの先輩としてアドバイスをいただいた。

「ぜひ、企業系Vtuberの業界を一緒に盛り上げていただけたらと思います。Vtuberを元々楽しんでいる方たちの中に企業の名前を背負って参入していくのは難しい部分も多くあります。Vtuberらしさを取るべきなのか、企業の広報をするべきなのか、と迷うこともあるでしょう。それでも会社とキャラクターの良さを信じて、自社らしい素敵なVtuberを誕生させてください。そのあかつきには、企業公式Vtuberの仲間として活動をご一緒できたら嬉しいです」(さとちぃ氏)