パソコンで何らかの作業を行うときに必ず求められるのが「日本語の入力」だ。文書やメールの作成はもちろん、Webを検索するときも、AIに質問するときも、日本語入力は欠かせない作業となる。この入力作業を高速化できれば、それだけスムーズに仕事を進められるようになり、ストレスを大幅に軽減できるだろう。

ということで、本連載では「日本語入力の高速化」に役立つノウハウや設定変更などを紹介していこう。

  • 日本語入力の基本はタッチタイピング

日本語入力は高速化できる!

誰でも一度は「頭で考えるのと同じ速度で日本語を入力できたら……」と想像したことがあるだろう。これを実現できれば、以前よりもテキパキと仕事をこなせるようになるはずだ。日本語入力が遅いがために「貴重な時間を無駄にしている」というのはある意味、疑う余地のない事実といえる。

とはいえ、「日本語入力の高速化」に本気で取り組んでいる方は少ないのではないだろうか? これまでに(適当に)積み上げてきたタイピングスキルで業務をこなしている、そんな方が多いと思われる。

確かに、日本語入力の高速化は一朝一夕に実現できるものではないが、多少の工夫で入力環境を大幅に改善できるケースもある。多くの方は、Windowsに標準装備されているIME(※1)を「初期設定」のまま使用しているだろう。しかし、これが必ずしも最適な設定であるとは限らない。

(※1)Input Method Editorの略。日本語の入力(漢字変換など)を実現してくれるソフトウェア(アプリ)を指す。

たとえば、各キーの役割を設定変更して、自分にとって使い勝手のよい操作体系にカスタマイズすることも可能である。

  • Microsoft IMEの設定画面

日本語を入力するには「漢字変換」という手間が必要になるため、単純にキーをタイプしていくだけの欧文に比べると、IMEの使いやすさ(設定)が入力速度に与える影響は大きいと考えられる。つまり、タイピングスキルが同じであっても、設定を変更するだけで高速化を実現できる可能性を秘めていることになる。

そのほか、よく使う単語・フレーズを辞書に登録して「短縮よみ」で入力するなど、高速化を実現するための工夫は色々と考えられる。

  • Microsoft IMEのユーザー辞書ツール

そういった工夫やノウハウを紹介していくのが本連載となる。日本語入力を少しでも高速化して、パソコン作業を快適にするための一助として参考にして頂ければ幸いだ。

IMEに「Google 日本語入力」や「ATOK」を使用する

本連載の概要について、もう少し補足しておこう。連載の初期段階では、日本語版のWindowsに標準装備されている「Microsoft IME」のカスタマイズ方法などを紹介していく。その後、もっと抜本的な対処法として、IMEそのものを変更してしまう方法を紹介する予定だ。

たとえば、「Google 日本語入力」というIMEを使って日本語を入力する方法がある。こちらは2010年12月に正式版が公開されたIMEで、誰でも無料で使えるツールとして提供されている。正式版のリリースから15年弱という、まだまだ歴史の浅いIMEといえるが、固有名詞や流行語に強く、よく使うフレーズを学習してくれる、などの特長を備えたIMEとして進化を続けているようだ。

  • 「Google 日本語入力」の紹介ページ

また、日本語入力システムとして長い歴史を持つ、ジャストシステムの「ATOK」を使う方法もある。こちらは月単位または年単位でサブスク契約する有料(※2)のIMEになるが、最新技術を駆使した環境で日本語を入力することが可能となる。2025年2月には新エンジン「ATOKハイパーハイブリッドエンジン2」が搭載され、使い込むほどパーソナライズされていく「学習機能」が強化されている。

(※2)2025年7月時点の料金は、プレミアムプランが月額660円または年額7,920円7、ベーシックプランが月額330円に設定されている。

  • 新変換エンジン「ATOKハイパーハイブリッドエンジン2」の紹介ページ

もちろん、どのIMEにもメリット・デメリットがあり一概には比較できないが、自分にとって最適なIMEを見つける手掛かりとして、参考になりそうな情報を紹介していく予定だ。

日本語入力が遅くなってしまう原因

続いては、日本語入力が遅くなってしまう原因について探っていこう。この原因は大きく分けて3つある。

  • (1)キー入力(タイピング)が遅い
  • (2)キーの押し間違え(タイプミス)が多い
  • (3)漢字変換などの操作に手間取る

本連載では、主に(3)の原因を解消するためのノウハウを紹介していく。とはいえ、(1)や(2)の原因を無視してよいわけではない。キー配列を覚えていないため、「目的のキーを探しながらタイピングしている」というような状態は論外だ。これでは、どんなに環境を改善しても高速な日本語入力など望めない。

また、(2)も高速化を妨げる大きな要因となる。タイピングが速くてもタイプミスを頻発しているようでは、最終的な入力速度は遅くなってしまう。削除・修正を何回も繰り返すくらいなら、少しくらい遅くても確実にタイピングできるほうがマシだ。

なお、最近はIMEの性能が向上しているため、多少のタイプミスは「オートコレクト」や「予測変換」により自動補正してもらえる場合もある。以下の図は、小さい「っ」を入力する際に間違って「P」を3回押してしまった例だ。このような場合でも正しく漢字変換することが可能である。

  • 入力ミスの自動補正(1)

もうひとつ例を紹介しておこう。以下の図は、「スマートフォン」のローマ字入力を間違えて「suma-tofpn」と入力してしまった例だ。本来なら「suma-tofon」と入力すべきところを、タイプミスにより「O」の隣にある「P」を押してしまった例となる。このような場合も問題なく「スマートフォン」に変換することが可能である。

  • 入力ミスの自動補正(2)

このようにIMEも進化を遂げているが、必ずしもタイプミスを自動補正してくれるとは限らない。むしろ、タイプミスがそのまま漢字変換されてしまうケースのほうが圧倒的に多いといえる。よって、タイプミスを頻発しているようでは、日本語入力は絶対に速くならない。

タッチタイピングを練習できるWebサイト

先ほど紹介した、(1)タイピングが遅い、(2)タイプミスが多い、といった問題を手軽に解決してくれる方法は、残念ながら存在しない。音声入力が唯一の解決法になるかもしれないが、かなり特殊な入力方法と言わざるを得ないだろう。

よって、地道に練習を重ねて、自身のタイピングスキルを向上させることが日本語入力 高速化の第一歩となる。そのうえで、(3)漢字変換などの操作に手間取る、という問題を改善していくのが基本だ。

タイピングを速くするには、キーボードを見ないで各キーを押す「タッチタイピング」が必須のスキルとなる。「F」と「J」に人差し指を置く(ホームポジション)、各キーを決まった指で押す、といったタイピングの基礎を学んだ経験がある方は沢山いるだろう。もちろん、タイピングが速くて、ミスを犯さないのであれば、自己流のタッチタイピングでも構わない。要は、速く、ミスなく、キーを押せればよいだけの話である。

ということで、無料でタッチタイピングを練習できるツールをいくつか紹介していこう。以下に紹介する練習ツールはWebとして一般公開されているため、ブラウザだけで利用することが可能だ。数分ほどのスキマ時間に、気晴らしを兼ねて、少しずつ練習を積み重ねていくとよいだろう。

「マナビジョン」のタイピング練習ツール

最初に紹介するのは、ベネッセコーポレーションの「マナビジョン」で提供されている「タイピング練習(ホームポジション基本編)」だ。「ホームポジション」と「各指が担当するキー」を意識しながら、それぞれのキーを確実に押す練習に向いている。

  • マナビジョン - タイピング練習(ホームポジション基本編)

さらに、文章の入力を練習できる「タイピング練習ツール(日本語編)」も提供されている。各キーのタイピングに慣れたら、こちらでキーの連続入力を練習していくとよいだろう。

  • マナビジョン - タイピング練習(日本語編)

問題文のカテゴリーを選択できる「e-typing」

イータイピングが提供する「e-typing」もシンプルで使いやすい練習ツールといえる。自身のタイピングレベルを判定できる「腕試しレベルチェック」をはじめ、問題文をカテゴリー別に分類した練習ツールが用意されている。

  • インターネットでタイピング練習 e-typing

たとえば、「ビジネス」のカテゴリーを選択すると、「プレゼンの基本」や「尊敬語」、「時事用語」など、ビジネスでよく使うフレーズを問題文にしてタッチタイピングを練習できるようになっている。

  • 「ビジネス」カテゴリーに用意されている練習問題

  • タイピング練習の様子

RPG風のタイピング練習ゲーム「勇者タイピング」

「地道な練習は苦手」という方は、ゲームで遊びながらタイピングを練習してもよい。たとえば、RPGのような感じでタイピングを練習できる「勇者タイピング」というWebサイトがある。こちらは個人ゲームクリエイターが作成したタイピング練習ゲームだ。

  • 「勇者タイピング」のフィールド画面

  • 「勇者タイピング」のバトル画面

ほかにも、「タイピング練習」や「タイピングゲーム」などのキーワードでWeb検索すると、数えきれないほどのタイピング練習ツールを発見できる。「いまさらタイピングの練習なんて……」と思うかもしれないが、日本語入力が速くなれば、それだけ短時間で仕事を終えることも可能となるはずだ。

今後、この連載で紹介していくノウハウも参考にしながら、少しずつタイピングスキルを向上させていくとよいだろう。地味ではあるが、きっと仕事の役に立つはずだ。