「プラス要因のデータ」と「マイナス要因のデータ」を同時にグラフ化したい場合もあるだろう。このような場合は、「上方向に伸びる棒グラフ」と「下方向に伸びる棒グラフ」を組み合わせるのも一つの手だ。ということで、今回は「上下に伸びる棒グラフ」の作成方法を紹介していこう。

「プラス要因」と「マイナス要因」が混在するデータ

今回は、「プラス要因」と「マイナス要因」を同時にグラフ化する方法について考えていこう。といっても少し分かりにくいかもしれないので、具体的な例を使って手順を紹介していこう。

以下に示した表は、A市に「転入してきた人の数」と「転出していった人の数」について、直近10年分のデータをまとめたものである。人口の増加を街の成長と捉えるならば、転入は「プラス要因」、転出は「マイナス要因」になると考えられる。

  • 「転入数」と「転出数」をまとめた表

この状況をグラフで示すために「集合縦棒」のグラフを作成すると、以下の図のような結果になる。

  • 「集合縦棒」のグラフを作成

「転入」(青色のグラフ)が右肩上がりで増加している一方で、「転出」(オレンジ色のグラフ)は減少している、という傾向を読み取れない訳ではないが、「一目で状況を把握できる」とは言い難いグラフが出来上がる。

このように「プラス要因」と「マイナス要因」を同時にグラフ化したいときは、0(ゼロ)を基点に「上下に伸びる棒グラフ」を作成するのも一つの手だ。たとえば、先ほどのグラフは以下の図のようにカスタマイズすることが可能である。

  • カスタマイズしたグラフ

このようにグラフをカスマイズすると、「転入」は増えている、「転出」は減っている、ということを端的に伝えられるようになる。あまり見かけない形状のグラフであるが、その作成手順を覚えておいても損はないだろう。

「上下に伸びる棒グラフ」の作成手順

それでは、「上下に伸びる棒グラフ」の作成手順を詳しく解説していこう。まずは、「マイナス要因」となるデータを「負の数」に変換する。今回の例の場合、「転出」のデータを「負の数」に変換すればよい。

この作業を一つずつ手作業で行っても構わないが、よりスムーズに、ミスなく進めるには、数式(セル参照)を利用したほうが快適だ。数値を「負の数」に変換するときは、先頭にマイナスを付けてセル参照を行う。たとえば、C6セルの値を「負の数」に変換するときは、「=-C6」と数式を記述する。

  • データをマイナス値に変換する数式

あとは、この数式をオートフィルでコピーするだけ。これでグラフ作成用の表を用意できる。

  • 数式のオートフィル

  • グラフ作成用の表

この表をもとに「集合縦棒」のグラフを作成すると、以下の図のような結果になる。

  • 「集合縦棒」のグラフを作成

現時点では「変換前の転出」と「変換後の転出」が両方ともグラフ化されているので、不要な「変換前の転出」をグラフから除外しておこう。「グラフ フィルター」のアイコンをクリックし、「変換前の転出」をOFFにして「適用」ボタンをクリックする。

  • グラフフィルターの設定

ここまでの作業が済むと、グラフの見た目は以下の図のように変化する。

  • 「変換前の転出」を除外したグラフ

横軸のラベルの位置調整

続いては、グラフのレイアウトを改善していこう。

0(ゼロ)を基点に「上下に伸びる棒グラフ」を作成すると、「横軸」のラベルがグラフに重なって表示される。このままでは文字を読み取りにくいので、「横軸」のラベルの位置を調整する。「横軸」を右クリックし、「軸の書式設定」を選択する。

  • 「横軸」の「軸の書式設定」の呼び出し

今回は「横軸」の交点を0(ゼロ)のまま、ラベルの位置だけを変更したいので、「横軸との交点」ではなく、「ラベルの位置」で設定を変更する。具体的には、「ラベル」の項目を展開し、「ラベルの位置」を「下端/左端」に変更すればよい。

  • 「ラベルの位置」の指定

これで「グラフの下端」に「横軸のラベル」を配置することが可能となる。

  • 横軸のラベルを「下端」に配置したグラフ

「系列の重なり」と「要素の間隔」

続いては、「転入」と「転出」の系列を一直線に揃えて配置する方法を紹介していこう。いずれかの「棒グラフ」を右クリックし、「データ系列の書式設定」を選択する。

  • 「データ系列の書式設定」の呼び出し

「データ系列の書式設定」が表示されたら「系列の重なり」を100%に変更する。すると、それぞれの系列が重なり、一直線上に配置されるようになる。

  • 「系列の重なり」の設定変更

  • 「系列の重なり」を100%に変更したグラフ

ついでに「要素の間隔」も調整しておこう。この設定項目は「棒グラフの太さ」を指定するものだ。ただし、「棒グラフの太さ」を直接指定する仕様にはなっていない。「棒と棒の間隔」を変更することで、結果として「棒グラフの太さ」を変更する、という仕組みになっている。

  • 「要素の間隔」の設定変更

今回の例では、「要素の間隔」を90%に変更し、間隔を小さくしてみた。その結果、棒グラフは以前より太くなる。

  • 「要素の間隔」を90%に変更したグラフ

以上が「上下に伸びる棒グラフ」の基本的な作成手順となる。続いては、グラフを見やすくするためのカスタマイズについて簡単に紹介しておこう。

グラフの見た目のカスタマイズ

以降の操作は、各自の好みに応じて「グラフの見た目」をカスマイズしていく作業となる。本筋のカスタマイズ手順ではないので、参考程度に読み進めていけば十分だ。

まずは、データの変化量をなるべく大きく見せられるように「縦軸」の数値の範囲を調整する。今回は、縦軸の「最小値」を-3,000に変更した。

  • 「縦軸」の範囲の調整

続いて、グラフの色を整える。この作業は「棒グラフ」(データ系列)を右クリックし、「塗りつぶし」コマンドを操作すると実行できる。

  • 「系列」の色の変更

次は、「横軸」が目立つように線の書式をカスタマイズしておこう。この作業は「横軸」を右クリックし、「枠線」コマンドで指定する。今回は、線の色を「濃い灰色」に変更し、線を太くするカスタマイズを施した。

  • 「横軸」の書式の変更

さらに、棒グラフに影を追加するカスマイズも施してみた。こちらは「棒グラフ」(データ系列)をクリックして選択し、「図形の効果」→「影」で影の種類を指定すればよい。

  • 「図形の効果」→「影」の追加

最後に「グラフ タイトル」に文字を入力して、各要素の文字の書式を整えると、以下の図のようなグラフに仕上げることができる。

  • 文字の書式を調整したグラフ

このように書式を指定することで、一般的な「棒グラフ」とは少し趣の異なるグラフを作成できる。もっと研究してみたい方は、「系列の重なり」と「要素の間隔」について色々と試してみるとよいだろう。新しいグラフの表現方法を発見できるかもしれない。

なお、今回紹介したグラフを別の手順で作成する方法もある。これについては、次回の連載で詳しく紹介していこう。