ゆでてもガリガリ、ゴリゴリとした硬い食感になってしまうサトイモを2つの波長の近赤外光で検出する方法を、愛媛大学の研究グループが開発した。検出全体の正確さは7割程度で、人の目と手作業が担っていた検査の手間を機械化によって減らす可能性がある。
サトイモはゆでると軟らかくなるが、親芋から子芋、孫芋へと栄養が移る過程で、一部の芋はでんぷんが少なく、水っぽく透明化して「水晶症」という生理障害が生じる。食べても問題はないが、ゆでても硬いままで、ガリガリ、ゴリゴリ、ジャリジャリなどと表現される食味不良が起きる。
愛媛大学社会共創学部・農学研究科の小長谷圭志講師によると、サトイモは愛媛県の主要作物の一つで、時短料理の広がりなどから、加工品工場でゆでたサトイモをパック詰めした商品が出回る。シーズンや産地によって数十%の芋に水晶症がみられることもあるが、外観は画像処理での判定は困難なほど正常なものと酷似している。
工場では製造ラインに流れている芋を作業台に取り出し、熟練の作業者が10人ほどで水晶症が疑われる芋を見つけて硬ければ取り除くという作業を行っている。この作業を機械化するための非破壊検出技術が開発できないかと小長谷講師に相談があり、2024年から水晶症のサトイモの検出に取り組み始めた。
小長谷講師は、酸素や炭素、窒素のつながり(‐OH、‐CH、‐NH)といった生物由来の極性の高い結合を見つけやすく、食品検査で用いられる近赤外光に着目。工場で温度100度で40分間ゆでた正常なサトイモ25個と水晶症のサトイモ25個を用意し、波長が700ナノメートル(ナノは10億分の1)から1300ナノメートルの近赤外光を当てると、波長980ナノ付近と1200ナノ付近で光の吸収量が特徴的なピークを見せた。水分量に関係しているとみられる。
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正常なサトイモ(赤線)と水晶症で異常とされるサトイモ(青線)それぞれに波長700~1300ナノの近赤外光を当てて、光がどれだけ吸収されるか(反射しているか)調べたグラフ(愛媛大学の小長谷圭志講師提供)
一つの波長の近赤外光では検出精度を上げるのが難しいため、統計学的な相関が小さく、異常なサトイモの検出に役立ちそうな2つの波長の組み合わせを探すと、700ナノメートルと980ナノメートルの2波長が最適だった。980ナノは水分量に応じて光の吸収量が変化するのに対し、700ナノは水分量に最も反応せず、芋の繊維質やでんぷん粒といった細かい物理構造に応じて吸収量が変化するとみられる。それぞれの波長を正常なサトイモと水晶症のサトイモに当てて光の吸収量を確認し、グラフにプロットすると、水晶症を区別できそうなことが分かった。
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波長980ナノと700ナノそれぞれをサトイモ(赤:正常、青:水晶症で異常)に当てて、光の吸収量を測って平面にプロットすると、輪で囲んだ部分あたりが正常な芋の範囲らしいと分かった(愛媛大学の小長谷圭志講師提供)
検出の正確さについては、水晶症のない正常な芋の検出だと92%と高い一方、水晶症で異常な芋だと52%にとどまり、全体としての正確さは72%となっている。小長谷講師は「もっと多くの芋で機械学習させたり、今後はピンポイントではなく上や下など多面的に近赤外光を当てた画像を用いたりすることで精度向上が見込める」と話し、今後工場での実用化も視野に開発が進むとみられるという。
研究は、9月30日付で農業食料工学会誌「エンジニアリング・イン・アグリカルチャー・エンバイロンメント・アンド・フード」に掲載された。
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