この半導体ニュースのまとめ
・川崎市と三菱地所、東急不動産、プライム ライフ テクノロジーズがQBICを整備
・量子・AI・半導体の研究開発からPoC、事業化、社会実装までを支援
・延床面積約5万m2、ラボ賃貸面積約3万m2で2030年の開業を予定
川崎市と三菱地所、東急不動産、プライム ライフ テクノロジーズは、「新川崎・創造のもり イノベーション拠点整備事業」に関する事業契約を2026年10月30日に締結した。
同事業では、神奈川県川崎市幸区の「新川崎・創造のもり」にあるK2タウンキャンパスの敷地に、量子・AI・半導体など先端コンピューティング分野の研究開発から概念実証(PoC)、事業化、社会実装までを支える施設「(仮称)QBIC(Quantum Business Incubation Center)」を整備する。
QBICは、研究者や企業、スタートアップ、大学などが分野を越えて集まり、新たな技術の検討や共同PoC、事業創出に取り組む共創拠点として位置付けられる。川崎市が進める「量子イノベーションパーク構想」の中核拠点として、事業者3社が施設の整備と運営を担う。
延床面積約5万m2の研究開発拠点
QBICの建設予定地は、神奈川県川崎市幸区新川崎7番1号。JR横須賀線の新川崎駅から徒歩約10分、JR南武線の鹿島田駅から徒歩約15分の場所に位置する。
敷地面積は約1万6400m2、延床面積は約5万m2で、鉄骨造の地上9階建てとする計画。ラボ賃貸面積は約3万m2を見込み、レンタルラボやオフィス、コワーキングスペース、交流・展示施設、店舗などを整備する。
2027年の着工と2030年の竣工・開業を予定している。完成すれば、日本国内でも最大級の規模となる民間運営の研究開発施設になるという。
施設内には、研究開発や実証に使用できるラボ機能に加え、企業や研究機関、スタートアップ間の交流を促すコワーキングスペースや展示機能を設ける。
カフェラウンジなどのアメニティ機能も整備し、研究者同士の交流だけでなく、先端技術と市民、地域社会をつなぐ開かれた施設を目指す。
量子・AI・半導体の研究成果を社会実装へ
QBICでは、量子技術を中核に、AIや半導体を含む先端コンピューティング分野の研究成果を、実証や事業化、社会実装へとつなぐ環境を整備する。
量子コンピューティングは、材料開発や創薬、金融、物流、AIなど、複雑な計算を必要とする分野での活用が期待されている。一方、研究成果を産業へ展開するには、実際の課題を想定したPoCを行い、技術の有効性や事業性を検証できる環境が必要となる。
QBICでは、研究機関や企業、スタートアップ、大学などが同じ施設に集まり、分野を越えて共同研究や技術検証を進められる環境を構築する。
量子コンピュータのハードウェアやソフトウェアだけでなく、量子技術を活用した新たなサービス、AIとの連携、半導体や周辺装置の開発など、先端コンピューティングを構成する幅広い分野での共創を想定する。
事業者3社は、量子分野に関連する企業や人材を国内外から誘致し、研究機関や企業との連携を促進することで、広域かつ国際的な量子イノベーションのエコシステム形成を目指すとしている。
IBMの量子コンピュータが稼働する新川崎
QBICが建設される「新川崎・創造のもり」では、産学官連携による研究開発拠点の整備が段階的に進められてきた。
2000年には、慶應義塾大学と川崎市の連携・協力によってK2タウンキャンパスを開設。2003年以降は、かわさき新産業創造センターとして、KBIC本館、NANOBIC、AIRBICの3棟を順次整備してきた。
現在は計100室、ラボ面積約8100m2のインキュベーション施設に成長している。周辺には民間事業者による企業向けレンタルラボ約1万1000m2も設けられ、大手企業のオープンイノベーション型ラボなどが立地する。
2021年には、東京大学が占有使用権を持つIBMのゲート型商用量子コンピューティングシステム「IBM Quantum System One」が設置され、稼働を開始した。
同システムは「Kawasaki」と呼ばれ、大学や企業による量子コンピューティング技術の研究開発、人材育成、利用技術の開発などに活用されている。
また、持続可能な社会の実現に向けて量子技術とAIの研究を進める「SQAI(サスティナブル量子AI研究拠点)」の新川崎サテライト拠点では、企業などによる量子コンピューティングの活用を支援している。
QBICを整備することで、こうした既存の量子コンピュータや研究機関、企業との連携を広げ、研究開発の成果を具体的な製品やサービス、事業へ展開する機能を強化する。
市民や子どもが先端技術に触れられる場も整備
QBICは、研究者や企業だけが利用する閉じた研究施設ではなく、先端技術と地域社会をつなぐ施設として整備される。
エントランスやカフェラウンジ、コワーキングスペースなどを活用し、研究成果の展示や情報発信、教育、学びの機会を提供する。市民や子どもが量子、AI、半導体などの技術に触れられる場を設け、次世代人材の育成にもつなげる。
施設は隣接する公園との連続性を持たせ、公園を訪れた人が気軽に立ち寄れる空間とする計画。研究者や施設利用者にとっても、交流や休息の場として活用できる環境を整える。
研究開発、実証、共創、情報発信、人材育成の機能を一体化することで、新川崎から量子・AI・半導体分野の新たな事業や技術を生み出すことを目指す。
川崎市と事業者3社は、QBICを量子イノベーションパーク構想の中核に位置付け、市内外の企業や研究機関、大学、スタートアップとの連携を広げるとしている。

