ネットアップは10月21日、メディア向け説明会を開催し、米ラスベガスで開催した年次イベント「NetApp INSIGHT 2026」で発表した新製品・新機能について説明した。AIエージェントやAIファクトリーの普及によってデータ基盤の要件が大きく変化しているとの見方を示した。国内外でAI活用が本格化する一方、不正アクセスやランサムウェア被害も拡大している。
AIエージェント時代に求められる新たなデータ基盤
NetApp INSIGHT 2026は9月29日から10月1日までラスベガスで開催され、「Intelligent Data Infrastructure for the AI Era and Beyond(AI時代、そして、その先を支えるインテリジェントデータインフラストラクチャ)」をテーマに掲げ、約20の新製品・新機能を発表した。
今回のイベントでは「AI-Ready Enterprise」「Unified Storage」「Autonomous Control Plane」「Data Resilience and Protection」の4つを重点領域に据えている。その背景について、ネットアップ チーフ テクノロジー エヴァンジェリストの神原豊彦氏は「AIエージェントは人間を前提として設計されたガバナンスでは追い付けないほどのスピードで企業データを読み取り、移動し、アクションを実行する」と語った。
また、同氏は「AI時代の競争力を決めるのはGPUやAIモデルだけではなく、データの管理と活用にある。AIによる意思決定は、すべてデータに基づく意思決定になる。データの正確性や可用性、ガバナンスは、もはや周辺要素ではなく、AIを本番環境で動かすためのクリティカルパスそのもの」と説明した。
NetApp AI Data Engineで「AIが利用できるデータ」を整備
AIエージェントの普及はインフラにも大きな変化をもたらしており、同社では「Bring AI to Your Data」を提唱している。同氏は「データをAIに持っていくのではなく、AIをデータに持っていく。AIのために人間がデータを移動させるのではなく、AIが必要なデータを参照できる環境を整備することが重要になる」と強調した。
そのアプローチを実現する製品として発表したのが「NetApp AI Data Engine」だ。NetApp AI Data Engineは、一昨年の「NetApp INSIGHT 2024」で発表し、晴れて一般提供が開始された。
同エンジンはNetAppのストレージに加え、他社製ファイルストレージも対象にデータの検出や分類、カタログ化、ガバナンス適用を行い、既存データを移動させることなくAIが利用可能な状態へ変換し、AIエージェントやチャットボット、分析ツールなどから活用できるようにしている。
神原氏は「誰がどこでどのようなデータを扱っているか把握できている企業は多くない。まずはデータを可視化し、AIが利用できる状態に整備することが重要だ」と話す。
また、同社はDataPelagoの買収による機能強化も打ち出した。AIの活用には非構造化データだけでなく、構造化データの活用も欠かせないが、従来は分析やAI利用のためにデータを別環境にコピーするケースが少なくなかった。
DataPelagoは、AI Data Engineが非構造化データを対象とするのに対し、構造化データ基盤を担う位置付けだ。データを移動させずに処理を行うインプレース処理を特徴とし、CPUやGPUなどを活用してデータ処理を最適化する。同社によると、AIワークロードで最大10倍の高速化と最大80%のコスト削減が見込めるという。
Oracle CloudやAzure、Nutanixとの連携を強化
マルチクラウド環境への対応も強化する。同社はOracle Cloud Infrastructure向けの「OCI Storage with NetApp」を発表したほか、Microsoftとの連携ではAzure NetApp Filesの機能強化を打ち出した。新機能「Large Volumes Breakthrough Mode」により、PB(ペタバイト)規模のデータセットに対応し、1ボリューム当たり最大80GiB/秒のスループットを実現するとしている。
一方で、オンプレミス環境の選択肢拡充にも取り組む。同社はNutanixとの提携強化を発表し、ONTAPをNutanix環境の外部ストレージとして利用可能にする。背景にはBroadcomによるVMware買収後の市場環境の変化がある。
神原氏は「成功の鍵はデータの分離。コンピューティングとデータを分離し、あらゆる選択肢に備えることが重要になる。また、Broadcom VMwareのライセンス問題は2027年問題として捉えられており、多くのお客さまが移行先を検討している」と述べた。
AIファクトリー向け新ストレージ「NetApp Novus」
今回の発表で最大の目玉と位置付けられるのが、AIファクトリー向けストレージの「NetApp Novus」だ。神原氏によると、AIデータセンターではGPUを数万基単位で利用するケースが増えており、従来のストレージ技術では対応が難しくなっているという。
同氏は「現在は1万基、2万基、多い場合は5万基、10万基規模のGPUクラスターを前提とした案件も出てきています」と話す。こうしたAIファクトリーの大規模化を見据えて投入したのがNovusだ。
Novusは、超大規模AI基盤向けに開発されたストレージ製品で、5万基のGPU環境に対して100TB/秒のスループットを実現するとしている。また、オープンスタンダードであるpNFS技術を採用し、多様なAIソフトウェア環境で利用できる点も特徴とする。
同社はあわせて、関連技術を手掛けるPEAK:AIOの買収も発表している。神原氏は「われわれはNovusを『The Fastest Storage on the Planet(地球上最速のストレージ)』と位置付けている」と自信を見せた。
「The NetApp Platform」でAI時代のデータ活用を支援
これらの新製品やパートナー戦略を包括する形で、同社は新たなポートフォリオとして「The NetApp Platform」を打ち出した。AI Data EngineやDataPelago、Oracle Cloud Infrastructureとの連携、Nutanixとの協業、NetApp Novusなどを組み合わせ、AI時代に必要なデータ基盤を提供する考えだ。
神原氏は説明会の最後に「AI時代の競争力を決めるのはモデルやGPUだけではない。データを必要な場所で、必要な人に対して、意味とガバナンスを保ったまま利用できることが重要になる」と強調した。
AIエージェントとAIファクトリーの普及が進む中、NetAppはデータ管理そのものを競争力の源泉と位置付け、クラウドからオンプレミスまでを横断するデータ基盤の構築を進めていく。






