安藤・間(以下、安藤ハザマ)、NTT、富士通グループでネットワーク事業を担う1FINITYは10月19日、安藤ハザマが施工中の山岳トンネルの建設現場において実施した、IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)技術を活用した山岳トンネルでの大容量高速データ通信の実証実験の結果について報告した。
今回の実証実験は、建設現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進に向けたトンネル工事現場の革新に向けたユースケース」の取り組みを進めたものだ。
発破や坑内湧水など、通信機器にとってオフィスや局舎とは異なる条件となるトンネルの坑内環境に合わせた運用が可能な光通信ネットワークを構築し、通信実効性および運用上の課題を明確にした。
これにより、従来は難しかった坑内の8K映像や点群などの大容量データを、遠方のオフィスやデータセンターに適時に伝送できるようになるという。
遠隔管理に必要なネットワークが求められる
山岳トンネル施工は人手不足や熟練者の高齢化、災害リスクが高い切羽近傍での作業などが課題となり、遠隔管理が求められている。
その一方で、従来の現場ネットワークでは、遠隔管理における現場技術者の施工判断に必要となる高精細の映像や、レーザースキャナなどを用いて取得した大量の3次元計測データの安定的な伝送が課題となっていた。
トンネル最奥部や危険箇所の異常検知に必要な高精細画像・映像データやセンサーデータ、作業継続判断に必要な3次元計測データ、さらには重機作業やロボット運搬作業時の周辺状況把握に必要なデータなどをリアルタイムに伝送することは、遠隔施工管理の高度化だけでなく、AIによる解析、自動化施工、ロボット活用などにも貢献する。
実証の概要:大容量低遅延インフラの実用性を確認
実証実験は2026年3月9日から13日、東海北陸自動車道(4車線化)椿原トンネル工事で実施。トンネル坑内に光ファイバケーブルを1100メートル敷設し、切羽から100メートル間隔で6台の光伝送装置を設置した。
ネットワークは工事の進捗に合わせて柔軟に延伸できる構成、複数ユースケースを同時利用可能な大容量通信環境を再現した。また、坑内の任意地点で利用できるよう、無線接続を組み合わせたネットワーク構成としている。
さらに、山岳トンネル特有の発破による振動や粉塵、湧水などによる過酷な坑内環境にも耐えられるよう設計を実施した。機器は防塵・防滴性能を備えた収容箱に格納し、床置きを避けて壁面ワイヤへ吊架する方式を採用した。
通信品質と長時間安定性
実証の結果、光通信ネットワーク区間においてパケットロスの検出は無く、遅延やジッタ(通信遅延のばらつき)は想定ユースケースを実現する上で問題ない値であることが確認された。また、24時間以上の連続稼働でも安定性が確認された。
今回の検証により、通信断や遅延による作業の中断リスクを低減しながら、安定した遠隔施工管理の実現について効果が期待できるという。
また、圧縮8Kカメラ15台に相当する映像監視データの通信を継続しながら、レーザースキャナで取得した約20ギガバイトの3次元計測データを、トンネル坑内から現場事務所まで約1分間で伝送することに成功した。
加えて、WiGigを用いて、無線区間で4ミリ秒ほどの遅延で伝送可能であることを確認。約1000キロメートル離れた距離からの遠隔検査を想定し、コミュニケーションを取りながら、基準である幅0.2ミリメートルのひび割れを発見可能なことを確認している。
遠隔検査の支援を目的としたトライアルでは、遠隔検査と同じ環境で撮影された壁面のひび割れについて学習を実施。1メートルの距離から撮影された幅75センチメートルの画像において、適合率100%、再現率85%で検知が可能なことを確認した。
今後は複数の現場や遠隔オフィスとの接続も想定
3社は今後、山岳トンネル施工管理のユースケースの実現に向けて、IOWN APN(All-Photonics Network)の実環境を活用した運用トライアルを実施する。複数のトンネル現場における遠隔監視、遠隔検査、AIによる遠隔解析および施工現場へのリアルタイムフィードバック、光ファイバー設備を活用したリモートモニタリングについて検証する予定。
こうした検証を通じて、複数現場の一元管理による施工管理業務の効率化や、専門技術者による遠隔からの技術支援を通じた現場人員の最適化の実現を目指す。
また、これらの運用トライアルで得られた知見を「IOWN Global Forum」をはじめとする業界団体や、建設業界に展開することで、次世代通信インフラの標準化に貢献する。
3社はIOWN技術をはじめとした光通信ネットワークやAIを活用した施工管理の高度化を推進するとともに、トンネル工事現場の革新に向けたユースケースの検討を進め、建設現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)を促す。






