この宇宙・航空ニュースのまとめ

  • 宇宙航空研究開発機構(JAXA)と将来宙輸送システム(ISC)、再使用型ロケットの技術開発で共創開始
  • 再使用型ロケット開発に向け、両者が有する試験データとモデル化技術を持ち寄り、双方の課題解決を図る
  • 高頻度・低コストな宇宙輸送サービス事業の実現と、日本の宇宙輸送能力の向上への寄与をめざす

宇宙航空研究開発機構(JAXA)と将来宙輸送システム(ISC)が、「再使用型ロケットによる宇宙輸送サービス事業」に関する共創活動を開始したことを10月14日に発表。再使用型ロケットの実用化に必要な技術開発で協力し、高頻度・低コストな宇宙輸送サービス事業の実現と、日本の宇宙輸送能力の向上に寄与することをめざす。

将来宇宙輸送システム(ISC:Innovative Space Carrier)は、宇宙往還を可能にする次世代輸送システムの実現をめざすスタートアップ企業。同社では、独自に開発を進める再使用型ロケット「ASCA 1」をはじめ、国産の有人宇宙輸送サービス「ASCA 2」や、商業宇宙旅行をめざす「ASCA 3」の実現など、宇宙輸送の高頻度化と低コスト化をめざしている。

今回のISCとJAXAの共創活動は、新たな発想の宇宙関連事業の創出をめざすJAXA宇宙イノベーションパートナーシップ(J-SPARC)の下で行われる取り組みで、9月にスタート。再使用型ロケット開発に向け、両者が有する試験データとモデル化技術を持ち寄り、双方の課題解決を図る。

具体的には、ISCからJAXAに対して、ASCAシリーズの機体の概要や設計モデルをリファレンスとして提供。特に「着陸機構」および「エンジン」に関する試験を実施し、得られた「変形や歪み」や「配管の流量・圧力」などのデータも提供していく。

JAXAは、ISCから提供された試験データを活用し、解析モデルの精度向上に取り組み、特定の機体に依存しない汎用的なモデル化技術を構築。さらに、構築したモデルをISCの開発に活用できるよう、モデルの適用方法や解析手法に関する技術支援を実施する。

両者はこの共創活動を通じて、試験データに基づく高精度・汎用的なモデル化技術を確立し、再使用型ロケットの開発を加速。早期に高頻度・低コストな宇宙輸送サービスを実現することや、再使用型宇宙輸送システムの実用化を支える技術基盤の構築によって日本の宇宙輸送能力を引き上げることに寄与していく。

JAXAと将来宙輸送システムによる共創活動の背景

こうした共創活動の背景にあるのが、各国における宇宙輸送システム開発競争の激化だ。

宇宙輸送の高頻度化・低コスト化を強力に推し進める米SpaceXをはじめ、現在は中国や韓国、欧州などでも再使用型ロケットの開発・実用化をめざす動きが加速している。日本国内では再使用型ロケットによる宇宙輸送サービスは実現できておらず、国際的な競争が進む中、技術実証や事業化の加速が求められている。

迅速な再使用型ロケットの開発には多くの試験が必要だが、実機と同じような挙動を計算機上で再現し、設計を検討することも重要とされる。その基盤としてJAXAとISCが重視するのが、ロケットの動きや機体の状態を現実に近い形で計算機内で再現する「モデル化技術」だ。

ISCは、再使用型ロケットの実現に向けて機体システムの開発を進めているが、着陸機構やエンジンの試験結果を適切に再現・予測できるモデル化技術の構築が課題となっていた。

JAXAは、ロケット第1段の再使用化をめざした研究として、これまでに小型実験機「RV-X」による再使用ロケット実験の飛行試験を実施したほか、独仏の機関と連携して進めている「1段再使用飛行実験」(CALLISTO)プロジェクトを通じて、着陸の設計や機体点検時の異常検知に役立てるモデル化技術の知見を蓄積。試験データとの比較・検証によるモデル精度の向上や、特定の機体に限定されない汎用的なモデルへの発展が課題だった。