宇宙航空研究開発機構(JAXA)は4月10日、山川宏理事長による定例記者会見を都内で開催。報道関係者からの質問に応えるかたちで、NASAの月探査計画「アルテミス」の動向について感想や見解を述べたほか、H3ロケットの打ち上げ再開に関する一部報道についても言及した。

  • 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の山川宏理事長

    宇宙航空研究開発機構(JAXA)の山川宏理事長

NASA月探査計画の今後に質問集中

報道関係者との質疑応答では、アルテミス計画をはじめとする月探査計画について質問が集中した。

アルテミスIIミッションは現在、オライオン(オリオン)宇宙船が月フライバイに成功し、地球への帰途についたところだ。

山川理事長はこのミッションについて「将来の有人月面着陸に向けた非常に大きなステップだと考えている。システム全体の検証を進めていく非常にいい機会だったのではないか。これから宇宙船が大気圏に再突入し、(4人の宇宙飛行士が)地球に帰還するという非常に重要なフェーズに向かっているので、我々としても注視している」とコメント。

一方、NASAはアルテミス計画の今後について、月周回ステーション「ゲートウェイ」の開発を一時停止し、その技術を月面基地に転用する方針を示している。オリオンを打ち上げた「SLS」(スペース・ローンチ・システム)ロケットは更新を中断して“レガシー”(旧技術)という位置づけに移し、アルテミスIV以降に向けて次世代商用システムの取り組みに着手する方針も打ち出した。同計画に関する日本の取り組み方針について、山川理事長は次のように語った。

「もともと(米国では)トランプ大統領の任期中に、米国人宇宙飛行士を月面に着陸させるという非常に大きな目標があるので、それを最優先で進めるだろうということは世界中で予想されていて、それに沿った(方針に変更した)プランが出てきたのだと思う。日本としては、JAXAとインドの宇宙機関の協力プロジェクトである『LUPEX』で日本のローバーが月面に行くことになっており、(今後月面に送り込む)宇宙飛行士が搭乗する有人与圧ローバーも非常に大きな貢献をしていくと考える。現状このふたつの大きなプロジェクトが進んでおり、引き続き注力していく」(山川理事長)

「『H3ロケット6月打ち上げ再開』を決めた事実はない」

打ち上げに失敗したH3ロケットを巡っては、朝日新聞が「6月にも試験機を打ち上げる方針を固め、8月以降には人工衛星を載せて本格運用再開をめざす」と4月10日に報じており、日本経済新聞も同日に、固体ロケットブースター(SRB-3)を使わない“30形態”をその試験機として使うと報じている。

こうした報道内容を山川理事長は否定し、以下のように述べている。

「H3ロケットを6月に打ち上げることを決めたという事実はない。我々としては、(H3ロケット8号機の打ち上げ失敗について)とにかく早急な原因究明と対策の検討を進め、早期の打ち上げ再開をめざしていることは事実だ」(山川理事長)

「30形態の地上燃焼試験は良好な結果を出しており、そのフライトに向けた検証はおおむね完了している。ただし、昨年12月の事案に関する原因究明やその対策の状況を踏まえて(H3ロケットの打ち上げ再開を)考えていく。まだ具体的にどの形態でいつ打ち上げる、ということは決まっていない。(4月13日に開催予定の)文部科学省の調査安全小委員会で、原因究明に関する議論が行われると思う」(同)

今回の定例記者会見では、間近に迫った「革新的衛星技術実証4号機」のキューブサット8機の打ち上げや、新型宇宙ステーション補給機1号機(HTV-X1)のISS離脱後の運用状況、そしてJAXAと欧州宇宙機関(ESA)が共同で取り組む、気候変動対応に関する第1回合同ワーキンググループ会合に関する報告が行われた。

詳細は追って更新する。

  • 革新的衛星技術実証4号機キューブサット8機の打ち上げ

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  • 新型宇宙ステーション補給機1号機(HTV-X1)のISS離脱後の運用状況

    新型宇宙ステーション補給機1号機(HTV-X1)のISS離脱後の運用状況

  • JAXA-ESA気候変動対応に関する戦略パートナーシップに基づく第1回JAXA-ESA合同ワーキンググループ会合の開催

    JAXA-ESA気候変動対応に関する戦略パートナーシップに基づく第1回JAXA-ESA合同ワーキンググループ会合の開催