創設10年目にして、ニューイヤー駅伝(全日本実業団対抗駅伝競走大会)2026で4時間44分0秒という大会新記録を達成し、初優勝を果たしたGMOインターネットグループの陸上部。そんな国内トップレベル選手の走りをロボット開発に応用しようというプロジェクトが始まった。
AIやロボティクスの社会実装を進めるGMO AI&ロボティクス商事(以下、GMO AIR)は4月2日、陸上選手の走行データを活用して、完全自律走行により人間の走行動作を再現するヒューマノイドロボットの実証実験プロジェクト「GMOインターネットグループ陸上部 - GMOロボッツ(以下、GMOロボッツ)」を開始することを発表し、「Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsu」(神奈川県 川崎市)で記者説明会を開いた。
ヒューマノイドロボットが走る動作は、他の作業や労働を支える基盤となる重要な要素だ。物の運搬や階段の移動、障害物を避けた移動など複雑な動作にも対応できるようになるため、ロボット活用の幅が広がると期待できる。
駅伝日本一の走りをAIで再現、ヒューマノイド開発の中身とは
GMOロボッツは陸上部選手の走行モーションデータを取得し、強化学習などのAI技術を用いて、トップアスリートのように走るヒューマノイドロボット開発を目指すプロジェクト。
駅伝選手は洗練された走行フォームを安定して維持できるため、ロボットの参照データとして適しているという。そのため、国内トップレベルの駅伝チームを有するGMOインターネットグループならではの質の高いデータを取得でき、ヒューマノイドロボットの開発に生かせる。
さらには、ロボットの開発過程で得られた知見を選手にフィードバックし、フォームの改善やケガの防止に役立てることで、選手のパフォーマンス向上も期待できるとのことだ。ロボット開発とスポーツ科学が相互に価値を還元し合う、双方向型の開発モデル構築も見込める。
なぜ“走るロボット”が重要なのか、ヒューマノイドが担う役割とは
GMOインターネットグループはAIとロボットの進化による産業構造の変化を「インターネット革命の後半戦」と捉えており、2026年を「ヒューマノイド元年」と位置付けている。
GMO AIRの代表取締役 内田朋宏氏はヒューマノイドロボットの優勢として「1体で複数の作業を行える汎用性、既存の設備や動線をそのまま活用できる環境適合性、そして、直感的に動きを理解し協働しやすい親和性にある」と紹介した。
しかし、ヒューマノイド開発領域では、米国、中国、欧州などと比較して、日本は産業化に向けた取り組みに遅れを取っている。2025年に中国で開催されたヒューマノイド競技大会では、中国からの出場が262チーム、中国以外の18チームの中でも日本からは1チームだけの出場にとどまった。
こうした危機感から、GMOインターネットグループではヒューマノイドロボットの開発を進める。その具体的な取り組みの一つとして、8月に開催されるヒューマノイド競技大会に出場し優勝を目指すとのことだ。
駅伝選手の走行フォームからヒューマノイドが動きを学習することは、ロボットの歩行を高いレベルで制御することにもつながる。また、ロボットに搭載したセンサーとAIで動きを制御する技術は、自立歩行・走行の高度化にもつながる。
こうした理由から、速く走れるヒューマノイドの開発が最終的なゴールなのではなく、あくまで同社は人間社会に実装できる協働ロボットの開発につなげることを狙っている。
選手のフォーム改善にも活用、ロボットと人間が相互進化へ
GMO AIRのヒューマノイド開発手法によると、汎用的な作業は大規模シミュレーション上で開発し、走行のような特定の動作は教師データを用いた学習で精度を高める。そのためには質の高いデータが必要となるため、トップレベルな駅伝選手が所属する陸上部を抱える同社と相性が良い。
記者説明会には、ニューイヤー駅伝で優勝に輝いたGMO陸上部のメンバーも登場。モーションキャプチャを使用してデータを取得したという今江勇人選手は「普段はスマートフォンなどで自身のフォームを撮影し確認することはあるが、モーションキャプチャは初めて。ヒューマノイド開発に役立つことはもちろん、そのデータを活用すれば選手のフォーム改善や技術向上にもつながるだろう」とコメントした。
同じくプロジェクトに参加した嶋津雄大選手は「大掛かりなセンサーを装着するのではなく、シンプルなスーツを着るだけで詳細なデータを取れることに驚いた。普段の競技中に着て走ってみたいと思った」と話していた。
データの取得はこれからだという吉田祐也選手は、「すごく革新的なプロジェクトだと感じる。陸上部はニューイヤー駅伝の2連覇を狙っているし、ヒューマノイドは8月のヒューマノイド競技大会で優勝を狙っている。両チームが相乗効果を発揮しながら頑張っていきたい」とコメント。
今年度GMOインターネットグループに入社したばかりの黒田朝日選手は「モーションキャプチャは普段できない経験なので興味がある。これまであまり自身のフォームを客観的に見てこなかったので、そのような新しい経験ができることを楽しみにしている」と述べていた。
GMOロボッツ 陸上部とヒューマノイドの並走(屋内)
GMOロボッツ 陸上部とヒューマノイドの並走(屋外)




