【金融国際派の独り言】長門正貢・元日本郵政社長「モルスタ争奪戦―不思議の負けなし」

メガ3行間の業績格差が鮮明だ。三菱UFJのトップの座は盤石。リーマンショック時、2008年に9000億円を投じ筆頭株主になったモルガン・スタンレーの貢献が主因だ。実は、モルスタが最初に支援を求めたのはみずほだった。リーマン事件直前の一つの折衝案件も、最初にみずほに要請が来た一つの理由だろう。

 みずほ米州担当役員として私の最大の課題が、投資銀行業務の強化だった。邦銀は貸出は得手でも投資銀行業務は弱かった。

 最強を狙う策として下記戦略を考えた:「投資銀行最大手と独占的提携関係を結び、そこで発生する銀行業務を独占する。仮にモルスタと組むとモルスタ案件は独占できるが他社案件はゼロになる。が、国際市場で大シェアを持つ大手投資銀行案件を独占するだけで十分な規模感になる。従来より親しいモルスタに的を絞る」

 実はモルスタ側にも銀行と提携するニーズがあった。強い貸出能力を武器にJP Morgan等大手商業銀行が投資銀行業務に攻勢をかけていた。貸出機能が弱い専業投資銀行は大手商銀の侵食に悩んでいたのだ。

 Win-Win関係が見え、早速、モルスタCEO・John Mackと本部長Vikram Punditに意図を申し入れ、何回も検討会を重ねた。しばらくしてモルスタより、ある業務での独占的提携話を提案された。

 この案件を東京本社経営会議で提案した。残念な会議だった。投資銀行業務担当役員まで理解しない。本社役員陣の国際投資銀行業務への理解度が低く、また『トップ行になるぞ』という気迫も希薄に見えた。

 リーマン事件の2年前のことだ。リーマン事件時は既に私はみずほ退任後だったので、モルスタ要請時のみずほでの議論を知らない。ただ、あの残念な会議を思い返すと、みずほが乗れなかった事情は容易に想像できる。

 3日待ったが、みずほからは回答なく、Johnは4日目、三菱に接触する。アッと言う間に三菱は決断した! なぜ即決できたのか? 実は三菱も投資銀行業務強化の為、モルスタ等との提携が必須だと考えていた由だ。

 当初は種々意見があった様だが、本社担当役員が外部コンサルも使い、この戦略を丁寧に何回も説明、最終的に経営陣の総意を得た由だ。三菱は既に準備万端、口を開けて待っていたのだ。100年に一度の機会を三菱はガッチリ掴み取った。

 プロ野球の野村克也監督の名言、「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし」。その通りですね。みずほ現経営陣の問題意識は当時よりも圧倒的に強化された、と聞く。100年に一度の次の機会でこそ、必然の勝ちを目指して欲しい。