【 高市政権の経済・財政政策の行方 】BNPパリバ証券チーフエコノミスト・河野龍太郎「財政規律の弛緩に懸念。消費税減税ではなく『給付付き税額控除』の導入を進めるべき」

総選挙は事前予想を上回る自民党の勝利だった。高市早苗首相が悲願とする「食品消費税ゼロ」を実行するかが注目される。

 2025年10月の自民党総裁選では拡張財政をトーンダウンさせていた。今回の選挙で大勝したため、党内の財政規律派を抑えることができるようになり消費税減税を進めるだろう。

 選挙中に高市首相は外為特会について「運用が今ホクホク状態だ」と言及したが、おそらく消費税減税の財源とすることが念頭にあったのだと思われる。

 低所得の方々は食品消費税が減額されれば助かると思うが、より恩恵を受けるのはゆとりのある高所得層の人々。物価高対策としてはいい政策ではない。

 日本経済はほぼ完全雇用にあり、拡張財政、減税で需要が刺激され名目GDP(国内総生産)が増えても実質GDPはさほど増えず、物価が上がるばかりになる。物価高対策は的を絞ってやらなければならず、規模の大きな減税はマクロ政策としても上手い政策とは言い難い。

 足元で「減税ポピュリズム」が広がっている。インフレが高くても現金給付や減税を求める反緊縮などの左派ポピュリズムは社会保障の整っていない中南米などで見られるが、日本は低所得の世帯に冷たいということがあるのだろう。一見、社会保障制度が整っているように見えるが、OECDの国々に比べると低所得世帯に対して相当厳しい。

 消費増税時などに「給付付き税額控除」の形で負担軽減が必要だったが、行われてこなかった。これが、減税ポピュリズムが広がる土壌となっている。

 26年度中に食品消費税ゼロが行われたとして、その間に給付付き税額控除の準備が進めばいいが、28年7月には参議院選挙があけ、2年間の期限が守れるかどうかが問われる。

 高市政権発足時から「財政規律は大丈夫か?」という疑念はあるが、25年度補正予算、26年度予算ともに大きくなった。しかも高市首相は解散総選挙を表明した記者会見で「これまでの財政運営は緊縮的だった」としており、26年度補正予算、27年度予算も再び膨らむ可能性がある。消費税減税もあり、財政規律の弛緩が懸念される。

 高市首相就任時の10年物国債の金利は1.6%だったが、総選挙直後は2.3%近い水準。さらに30年物金利は3.5%を超える。財政が心配だから、高い金利を受けとらないと保有できないという投資家が増えているということだ。

 長期金利が直ちに上がっても、政府の利払い費の増加には6年ほどのタイムラグがある。今、混乱するわけではないが、数年後に大変なことになる恐れがあることは認識する必要がある。

 財政を拡張して政策金利が低いままでは、実質金利が下がって円安インフレがさらに進み、家計の実質購買力が抑制される。日銀に対し一定程度、利上げを認めると思うが、問題解決というわけではない。

 家計が直面するリスクが変われば、社会保障制度をアップグレードしなければならないが、日本は怠ってきた。今は、その1つである給付付き税額控除を速やかに進めるべき時だ。