NECは、2026年3月17日から19日にかけて東京ビッグサイトで開催された「WIND EXPO国際風力発電展」に出展し、水中領域の監視や通信に関するソリューションを紹介した。
洋上風力発電の普及に伴い、海中インフラの安全確保や保守の重要性は高まっている。また、水中ロボットなどの水中航走体の利用が広がる中、船舶との接触など事故発生のリスクが課題となっている。
こうしたニーズや課題を背景に、NECはこれまで培ってきた水中音響技術を軸に、水中の可視化と遠隔運用の実現に向けた取り組みを進めている。
本稿では、展示の中核となっていた「可搬型水中監視センサー」と「水中音響通信を活用した洋上風力設備点検」の2つのソリューションを中心に紹介する。
水中の“見えない領域”を可視化する監視センサー
NECが開発した「可搬型水中監視センサー」は、水中に接近するダイバーや水中ドローンなどを検知する装置だ。音波を発信し、その反射を解析する仕組みを用いて、水中の物体の位置や動きを把握する。
水中は従来、監視の盲点とされてきた。水上であればカメラやレーダーによる監視が可能だが、水中ではそれらの手法が使えず、十分な監視が難しい領域だったという。
同センサーは、こうした課題を補うものとして、港湾設備や洋上風力発電施設、さらには船舶周辺の安全確保などへの活用が想定されている。
特徴の一つが小型化だ。これまでNECは海底設置型の水中監視センサーを提供してきたが、海底での大規模な設置工事に伴う導入のハードルの高さや、設置スペースの確保といった課題があった。
この水中センサーは、従来のものに比べ体積比がおよそ10分の1と、大幅にコンパクトになっており、可搬性を実現。船上から吊り下げて利用することや、養殖施設に導入するなど、柔軟な運用が可能となっている。
一般的に、水中での音波探知は、航路や沿岸部など周囲の雑音が多い環境では困難とされているが、NECが長年にわたりソーナー開発で培った信号処理技術を用いることで、高い検出能力を実現している。
2026年2月に行われた実証では、長崎県の港湾においてダイバーや水中航走体の検知に成功しており、現在は製品化に向けた開発段階にある。
今後は検知精度の向上や、解析装置のさらなる小型化を進めていく予定だ。NECは同製品のさらなる品質向上などの開発を進め、2027年度中の提供開始を目指す。
ケーブル不要へ 音響通信でROVの水中点検を無線化
もう一つの柱が、水中音響通信を活用した設備点検ソリューションだ。従来ダイバーが直接点検したり、ROV(ケーブル接続された無人潜水機)によって行われていたりした点検作業を無線化し、遠隔から操作・監視できるようにするものだ。
従来、ROVはケーブルで船と接続されており、移動範囲や取り回しに制約があった。これに対しNECは、音波を用いた通信技術により、水中での無線通信を実現。
「水中音響通信装置」といわれる通信ブイを中心としたエリア内で、映像やセンサーデータ、制御データをやり取りできる仕組みを構築している。
ケーブルに依存しないことで、航行・点検の自由度が向上するとともに、メンテナンス効率化や省人化によるコスト圧縮にもつながる。
NECの水中音響通信の特徴の一つが、横方向での通信に対応している点だ。水中では音波が海面や海底で反射し、複数の経路で重なって届くため、正確な受信が難しい。
さらに、移動体との通信ではドップラー効果による周波数のずれも発生するが、信号処理技術によりこれらを補正し、実用的な通信を実現する。
現時点では、1基の通信ブイを中心に半径約200メートルの範囲で、約100kbpsの通信が可能とされており、複数のブイを用いることで通信エリアの拡張にも対応する。
現在は実証や改良を重ねながら、製品化に向けた開発が進められている。
海を掘らずに敷設 洋上風力を支えるHDD工法
会場では、NECグループのNECネッツエスアイによるインフラ整備に関する技術も紹介された。
同社は、洋上風力発電における海底送電ケーブルの敷設に関連し、地上から洋上に向けて地中を掘削し管路を設置する「弧状推進工法(HDD工法)」を展開している。
この工法は、地上から施工が可能で海上作業を最小限に抑えられるほか、海底面を開削しないため、海中の地形や生態系への影響を抑えられる点が特徴だ。さらに、多様な地層にも対応できる点も特徴の一つだという。
実際に、2023年に富山県入善町沖で実施された洋上風力発電事業においても同工法が採用されており、海底通信ケーブルの敷設などで培ってきた施工ノウハウが活用されている。
NECの展示では、水中の侵入を検知するセンサーと、水中ドローンの遠隔運用を可能にする音響通信という2つの技術を通じて、水中領域の可視化と効率的な運用の実現に向けた方向性が示された。
これらの技術は、洋上風力発電における安全確保や保守の高度化に寄与することが期待される。NECは今後、実用化に向けた開発・検証を進めていく。





