私たちの足元には、再生可能エネルギーをつくり出す可能性を秘めた存在が隠れています。それは土や泥の中に暮らしている「発電菌」です。発電菌は有機物を食べて、電子を出す暮らしをしています。その電子を電極で受け取れば、電気として使えますが、実用化には発電能力がかなり強い発電菌が必要なんです。

そのような発電能力が強い発電菌を「スーパー発電菌」と名付けて、5年前から東京薬科大学の渡邉一哉先生のラボと未来館が共同で「スーパー発電菌をみんなで探そうプロジェクト」を実施しています。全国の中高生がどのようなところにスーパー発電菌が存在するかの仮説を立てたうえで家や学校の近くなどで土や泥を採取して、共通の研究キットを使って「泥電池」(微生物燃料電池)をつくり、発電量を比較して仮説の検証を行います。泥電池は適量の水と土・泥を混ぜて、電極を入れて、電線と抵抗でつなぐことでつくることができます。

泥の中に埋めたマイナス極(アノード)で、発電菌が出す電子(e-)を拾うことができます。その電子を電気として半分水につかっているプラス極(カソード)に送って、空気中の酸素に反応させます。そうするとマイナス極とプラス極間で電位差が発生し、マイナス極からプラス極に電流が流れることで電池のように機能します。

「スーパー発電菌をみんなで探そうプロジェクト」の第1回から今回の第5回まで、120のチームがのべ475の泥電池をつくり、306の泥電池の発電能力を調べました。発電能力(最大出力)が高い泥電池の場合はスーパー発電菌が入っている可能性が高いため、毎年プロジェクトが終わった後、渡邉先生の研究者・学生チームが詳しく調べます。

ところで、泥電池からどのようにスーパー発電菌を見つけ出すのでしょうか? そして発電菌はどのような場面で生かして、実用化できるのでしょうか? 泥電池からスーパー発電菌を見つけようとしている渡邉先生のラボの学生の萩原さんに聞いてみました。

東京薬科大学生命科学部生命エネルギー工学研究室修士2年、2024年度の泥電池からスーパー発電菌を見つけ出そうと研究を進めている萩原真奈美さん。

スーパー発電菌を見つけるために、何をしていますか?

萩原さん:まず、プロジェクトの参加者が送ってくれた泥電池の発電性能を正確に測定するためにデータロガーという測定装置につなぎます。参加者は一日一回電圧、そして週に一回最大出力を測定しますが、ラボではデータロガーで電圧を常時モニタリングし、自動で最大出力の解析ができる装置を使います。

ラボでは泥電池を計測装置につなげることで、発電能力を調べるための精密なデータがたくさん取れます。この装置は、20台の泥電池の電圧を同時に測定することができます!

次に、泥電池からよく発電する菌を見つけだすため、「直接法」と「電気化学セル法」という方法で発電菌の単離(発電菌だけを泥から取りだすこと)をします。また、菌叢解析(きんそうかいせき:DNA分析でどのような菌がいるかを調べる)もします。

直接法

萩原さん:直接法の発電菌単離では、発電菌がたくさんくっついている泥電池のマイナス極を細かく切ります。その破片が混ぜた液体を培地に広げて菌を増やします。培地とは菌の食べものが入っているゼリーのようなものです。よく発電することで知られているジオバクター属という発電菌を増やすための培地を使っています。時間がたつと、目に見えるくらいの大きさの細菌の塊(コロニー)が形成されます。最初は複数の細菌が混ざっているコロニーが形成されることも多いので、ジオバクターが入っていると考えられる濃い赤のコロニーだけを取って、新しい培地に薄く塗って、もう一回コロニーが出るまで待ちます。そしてまた濃い赤のコロニーを取って、新しい培地に塗って……と、一種類の細菌のみが残るように、同じことを繰り返します。このようにして残った細菌が発電菌として、単離されたことになります。

電気化学セル法

萩原さん:電気化学セル法による単離では、泥電池のマイナス極をすぐに培地に移すのではなく、まず「電気化学セル」という装置を使って発電菌を増やし、発電菌ではない菌とある程度分けられます。電気化学セルは複数の電極とジオバクター属の発電菌に適した培養液(菌の食べものが入っている溶液)が入っている容器です。電気化学セル法ではまず泥電池のマイナス極の一部を切り出し、電気化学セルのマイナス極として使います。さらに、そのマイナス極に電位をかけることで発電菌が付着しやすくなります。そうするとジオバクターが周りの培養液から栄養をとって、マイナス極で増えます。

ジオバクターが十分増えたら、電気化学セルのマイナス極を取り出し、細かい破片に切ります。その後は直接法と同じ方法で、電気化学セルのマイナス極の破片から発電菌を単離します。直接法だと最初はたまたま泥電池のマイナス極についていた発電菌ではない菌が混ざっていますが、電気化学セル法では特に発電菌が多くついたマイナス極がつくれるのが特長です。

菌叢解析

萩原さん:ここでお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、直接法でも電気化学セル法でもジオバクター用の培地や培養液が使われています。ジオバクター以外の発電菌はその培養液に含まれる栄養(食べ物)をあまり食べない可能性が十分あります。つまり、ジオバクター以外の発電菌はこの方法で単離しにくくて、見逃される可能性が高いです。

ジオバクターよりも発電能力の強い発電菌がいるとしたら、そちらも見逃したくないです! そのため、菌叢解析という分析も行っています。菌叢解析では泥電池のマイナス極についている菌のDNAを分析して、どのような菌なのかを調べます。たまたまマイナス極に付着した菌と発電菌だから電極で増えてきた菌を区別するため、泥の中にいる菌のDNAも調べます。泥の中の割合より明らかに多い割合でマイナス極に付着している菌を見つけたら、発電に関わっている可能性があります。将来的にはそういう菌の培養方法を調べて、単離や培養を試みたいです。

では、実際にスーパー発電菌は見つかりましたか?

萩原さん:はい、今までよく知られているジオバクターの基準株と比べて、さらに高い発電能力をもつ株(近縁株)が見つかりましたよ! 実は、同じ細菌の種類でも遺伝的に異なるグループいます。それを「株」と言います。2024年の「スーパー発電菌をみんなで探そうプロジェクト」では参加していた西武学園(私立西武学園文理高等学校)のチームが那須町にある川で採取した泥から、基準株と比べて電流(発電能力)が約3倍も強い近縁株が見つかりました!

この近縁株を培養してみたところ、培養液の中に菌の塊ができました。培養液は水ベースの溶液なのでこの菌は水との親和性が低く、疎水性の高い菌なのではないかと思いました。疎水性の高い菌は電極によく付着することで知られています。電極によく付着すると電子が電極に渡されやすくなるから、たくさん発電できます。

発電菌の応用は……?

萩原さん:発電菌は排水処理にも役立つと思います。研究では実際の排水ではなく食品廃棄物から出る液体や人工的につくられた排水が使われていますが、そういった液体に発電菌を追加すると汚染物質(有機物)の量が減るという結果があります。発電菌が有機物を食べることで排水をより綺麗にしてくれたわけです。

え?! せっかくスーパー発電菌を探したのに、発電させるのではなく排水の浄化をさせるんですか??

萩原さん:発電もさせますよ。実は、現在の排水処理では、有機物の分解に酸素を必要とする菌が使われていて、水中に酸素を供給するのにたくさんのエネルギーが必要です。一方、発電菌は有機物の分解に酸素が要らない、むしろ酸素があると死ぬものが多いです。つまり、現在排水処理に使われている菌の代わりに発電菌を使うと、酸素を供給するための電力が節約でき、加えて発電もできるのです。そうすると排水処理にかかる費用をかなり節約できるようになると思います。

今は有機物の分解に酸素が必要な菌を使って排水をきれいにしているので、排水に酸素を供給するのにたくさんの電気が必要です。発電菌を使った排水処理ができれば、酸素を送り込む電気が節約できて、発電もできます。

ちなみに、個人的な一推しは、まだあまり研究されていない発電菌による水素の生産です。実は、発電菌が有機物を食べて電子を出すときに水素イオンも出します。その水素イオンから水素をつくろうとしている研究があります。水素は二酸化炭素を出さないサステナブルな燃料として注目されているので、今後は「スーパー発電菌をみんなで探そうプロジェクト」によって見つかった発電菌で水素がつくれるか試してみたいと思っています!

終わりに

あっという間に5回目を迎えた「スーパー発電菌をみんなで探そうプロジェクト」ですが、参加者がリアルな研究に参加できるだけではなく、みんなの力でスーパー発電菌を見つけるという目的も実際に達成できていることを知って、感動しました。微生物発電所のようなところはまだまだ先の話ですが、発電菌の特長を生かした排水処理や水素生産によって、よりサステナブルな社会がつくれるかもしれないと思うとワクワクします!

関連リンク

  • 【イベントページ】スーパー発電菌をみんなで探そうプロジェクト2025年について https://www.miraikan.jst.go.jp/events/202506213980.html
  • 【ブログ】スーパー発電菌をみんなで探してみた! https://blog.miraikan.jst.go.jp/articles/20250107super-hatsuden-2024.html
  • 【ブログ】泥と発電菌と過ごした1年 ~前編:清明から処暑まで~ https://blog.miraikan.jst.go.jp/articles/202204181-4.html
  • 【ブログ】泥と発電菌と過ごした1年 ~後編:白露から啓蟄、そして春分~ https://blog.miraikan.jst.go.jp/articles/202204181-5.html


Author
執筆: Serah Hoeks(日本科学未来館 科学コミュニケーター)
【担当業務・Daily activities at work】
アクティビティの企画全般に携わり、サステナブルなミュージアムの実現を目指し、未来館のサステナビリティ対策や情報発信に取り組む。
I plan and organize museum activities, aim to make Miraikan a more sustainable museum, and communicate about Miraikan’s sustainability measures.

【プロフィル・Profile】
環境教育センターの教育担当としてゴミや物質循環について教えていたきっかけでより持続可能な世界をつくるべきだと思い、未来館でその実現を目指している。
When I taught about waste and circular economy as an educator at an environmental education center, I realized we need to build a more sustainable world, and that is exactly what I strive to do at Miraikan.

【分野、キーワード・Areas of interest / keywords】
持続可能性、物質循環、ライフサイクルシンキング
Sustainability, circular economy, life cycle thinking